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「沈黙博物館」/静謐な

 2005-07-11-09:43
小川洋子「沈黙博物館」

ある村に雇われてやって来た博物館専門技師の「僕」。現実の村のようでもあるけれど、その村はどこか儚い美しさを持つ不思議なところ。美しい卵細工の特産品、シロイワバイソンの毛皮を身に纏った沈黙の伝道師。

雇い主は大きな館に住む、気難しく独自の暦に従って生活する老婆。「僕」は老婆の養女である少女とともに、博物館を作ることになる。

博物館専門技師の仕事を「僕」はこう考える。
「僕の仕事は世界の縁から滑り落ちた物たちをいかに多くすくい上げるか、そしてその物たちが醸し出す不調和に対し、いかに意義深い価値を見出すことができるかに係っているんです。」

そして、老婆が望む博物館は普通のものではない。彼女が幼い頃から集めた、村人の形見の展示を望むのだ。
「いいな、私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ。それがなければ、せっかくの生きた歳月の積み重ねが根底から崩れてしまうような、死の完結を永遠に阻止してしまうような何かなのだ。思い出などというおセンチな感情とは無関係。もちろん金銭的価値など論外じゃ」
こう語る老婆が集めた形見は勿論普通のものではない。大抵の場合、それは高価でもなく、美しくもない。殆どが死の混乱に乗じて盗んできたもの。

老婆が語る形見の物語を記録し、村人が二度死ぬことがないように、丁寧に保存していく。村人の新たな死に当たっては、技師である「僕」が形見を収集することになる。物語は多分こう進むのだろうなぁ、と思う方に進んで行くのだけれど、最後、ことりと嵌まる場面は何とも物悲しい。


印象深かったのは、顕微鏡の中の世界、少女の頬の星型の傷、沈黙の伝道師など。生き生きとした野球観戦の様、少女の若さには明るさを感じるけれど、全編を覆っているのは静謐な空気。沈黙のカーテンを下ろしてはいるけれど、決して人を拒絶しているわけではない、「沈黙の伝道師」も魅力的。
小さな沈黙の世界は彼女を迎え入れ、秘密の言葉を毛皮の奥へ封じ込めているのだった。

「博士の愛した数式」 もそうだったけれど、「愛」を描きつつも、「恋愛」的要素は注意深く取り除かれているように感じる。小川洋子さんの「恋愛小説」があるのならば、読んでみたいと思いました。
 ←私が読んだのはこちら
小川 洋子
沈黙博物館
 ←すでに文庫化されているようです

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら御連絡下さい。

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