スポンサーサイト
新しい記事を書く事で広告が消せます。
「反貞女大学」/女性学、男性学
三島由紀夫「反貞女大学」ちくま文庫
三島由紀夫による講義を受けることが出来ます。私が持っているちくま文庫版には、この表題でもある女性学「反貞女大学」と、対になる男性学「第一の性」が収められている。
ちくま文庫表紙裏より
「貞女とは、多くのばあい、世間の評判であり、その世間をカサに着た女の鎧であります」さあ、鎧を脱ぎましょう、この大学では、姦通学、嫉妬学、社交学、整形学など種々の講座があります(反貞女大学)。
そのあとで男性をじっくり研究して(第一の性)幸わせとは何なのかお考え下さい。三島のユニークな男と女の研究書二篇を収録。
■「反貞女大学」ではこんな講義があります。
反貞女であればこそ、健康で、欲が深くて、不平不満が多くて、突然やさしくなったりするし、魅力的で、ピチピチしていて、扱いにくくて、まあまあ我慢できる妻でありうるのです。私はこの講義の中で、人間生きていれば絶対の誠実などというものはありえないし、それだからこそ、人間は気楽に人生を生きてゆけるのだ、という哲学を、いろんな形で展開したつもりでした。「絶対の誠実」などを信じている人たちの、盲目と動脈硬化はおそろしい。私はその肩を、多少手荒く、揉みほぐして差し上げようと思ったのです。
結構辛辣な所もありますが、意外と自由な考えなのです。「思い込みから解放して差し上げましょう」というスタンス。この時代でこんな考えを持っていたのだなぁ、というのが何だか不思議。
■「第一の性」は、<総論>と各個人について論じた<各論>からなっている。<各論>の最後には「三島由紀夫」が登場。「三島由紀夫」論はなかなか面白い。「何だ、どう見られてるのか、ちゃんと分かっているんだ」、とニヤリとする感じ。
----------------------------------------------------
三島由紀夫については、この明晰な頭脳と、最期の様子がどうにも結びつかなかったのだけれど、吉本隆明氏の「追悼私記」を読んで何となく納得。以下、引用します。
三島由紀夫「重く暗いしこり」より
三島由紀夫の死は、人間の観念の作用が、どこまでも退化しうることの恐ろしさを、あらためてまざまざと視せつけた。これはひとごとではない。この人間の観念的な可逆性はわたしを愕然とさせる。<文武両道>、<男の涙>、<天皇陛下万歳>等々。こういう言葉が、逆説でも比喩でもなく、まともに一級の知的作家の口からとびだしうることをみせつけられると、人間性の奇怪さ、文化的風土の不可解さに愕然とする。
いかに知的な作家であり、明晰な頭脳を持っていても、観念だけではどちらにも進み得るのだろうか。
----------------------------------------------------
「第一の性」の<総論>は、「男はみな英雄」から始まるのだけれど、次の一文など鋭いというか何だか笑ってしまうというか。
男は一人のこらず英雄であります
男性方、失礼。でもこれって、男性の「少年性」や、ある種の「可愛らしさ」に通じているように思うのです。
- 三島 由紀夫
- 反貞女大学
*臙脂色の文字の部分は引用を行っております。何か問題がございましたら、御連絡下さい。