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「ラギッド・ガール 廃園の天使2」/「グラン・ヴァカンス」前日譚など

 2008-04-03-00:15
ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
(2006/10)
飛 浩隆

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会員制の仮想空間<数値海岸(コスタ・デル・ルメロ)>。「グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ」では、その中の一つの世界、<夏の区界>の滅びの様が描かれたけれど、こちら、「ラギッド・ガール」で描かれるのは、同じく仮想空間を舞台とした前日譚や、語られることがなかった、ゲストたちの世界、すなわち現実の物理世界のお話。全部で五つの短編からなっている。
目次
夏の硝視体(グラス・アイ)
 Air des Bijoux

ラギッド・ガール
 Unweaving the Humanbeing
クローゼット
 Close it.
魔術師
 Laterna Magika

蜘蛛(ちちゅう)の王
 Lord of the Spinners
ノート
通常、魅力的なその世界の裏を明かすようなお話は、ともすれば興醒めになってしまうこともあるけれど、これは大丈夫、待っているのはむしろこうなっていたのか!、という軽い興奮。

表題作の「ラギッド・ガール」。これ、「グラン・ヴァカンス」のことを知る前から、印象的なタイトルだなぁ、と気になっていたのです。「ラギッド」とは「【ragged】ぼろ(ぼろ)の, 破れた; みすぼらしい; でこぼこ[ざらざら]の, ごつごつの; 手入れの悪い; 不ぞろいな, 不調和な, 不完全な; (声が)耳ざわりな; (神経を)消耗した」のこと(goo英和辞書より)。あの<数値海岸(コスタ・デル・ルメロ)>を作った主要メンバーの一人である阿形渓(あがたけい)は、醜くざらざらの肌を持つ女であった。身体感覚が主となるからか、キーワードは「ざらざら」や「解かれる」、かな。

ただ、大切なことは、きちんと順番を守って読むこと。「ラギッド・ガール」「グラン・ヴァカンス」だとこの感動が得られないような気が致します。
■夏の硝視体
<夏の区界>のジュリー・プランタンとジョゼのお話。ジョゼの中に刻まれた傷に、ジュリーが気づいたときのお話。そして、ジュリーと金盞花(スウシー)の話、視体<コットン・テイル>との出会いの話。

■ラギッド・ガール
あの<数値海岸(コスタ・デル・ルメロ)>の開発者たちの話。世界に右クリックを掛けたかったドラホーシュ教授(なんで、自分たちの世界には右クリックで調整がかけられないんだ?)に、直感像的全身感覚の持ち主であり天才的プログラマである阿形渓(そして、「全身これ犀のけつ」のざらざらのとても醜い女でもある)、語りの手の私、カリン・安奈・カスキ…。

この場合、阿形渓が醜い事はどうでも良くて、重要なのは代謝異常の不自由な体を持つ彼女は、その不自由な体故に、ある特殊な能力を持っていたということ。彼女の中には一本の定規のような「絶対時間」があり、キャプチャされた直感像的全身感覚が、薄いプレパラート標本のようになって、彼女の中に蓄積されているのだ。これらの感覚はしっかりと記憶され、いつでもどんな風にも引き出すことが可能である。通常、人は感覚の中のいくつかを覚え、後のものは捨て去っていくものであるのに…。ドラホーシュ教授の提案する<仮想空間>の技術は、この阿形渓を迎えて格段に進歩するのだが…。

「グラン・ヴァカンス」で描かれた、読む者と読まれる者の関係が、ここではもっともっとくっきりとクリアに描かれる。そう、読まれることで本の中の登場人物たちは息を吹き込まれ、彼らの人生を生きるけれど、同時に読まれることによってその中で死を迎えることもある。読む者がなければ、彼らは死ぬ事もなかったのか? しかし、読む者の感情、リソースを使って、彼らが生きたことには意義があるはずなのだ。

情報量に圧倒されちゃうけれど、これもまた美しく残酷なお話です。強烈な自己愛のお話でもあるのだけれど、これだけ突き抜ければ、いっそ甘美。

■クローゼット
ドラホーシュ教授の研究グループの一員であった、カイル・マクローリンは謎の死を遂げていた。彼と同棲していたガウリ・ミタリはその謎に迫るのだが…。
そうして、ここでひとつ明かされるのは、<夏の区界>でジョゼたちAIの深層に植えつけられていた「恐怖」の誕生。恐ろしい~。

■魔術師
突然、ゲストたちが仮想空間を訪れることがなくなった、大途絶(グランド・ダウン)の真相とは…。
これ、AIのサビーナって、例の彼女なんだよね? 彼女はやっぱり特殊なAIだったのだ。

■蜘蛛(ちちゅう)の王
蜘蛛たちの王であり、<夏の区界>を蹂躙し、例外として他の区界を自由に行き来していたランゴーニの話。ランゴーニはいかにしてランゴーニとなったのか?
後書きに当たるであろう「ノート」によれば、≪廃園の天使≫シリーズ、長篇第二作の「空の園丁(仮)」は、「蜘蛛の王」よりももっと派手な展開になるのだとか。こちらも楽しみ!
「ラギッド・ガール」の刊行は、2006年10月。次が出るのはいつなんでしょう。
□ネットで見つけた飛さんのインタビューにリンク
(佐々木敦氏による批評ブログ「How It Is」より)
☆関連過去記事☆
「グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ」/永き、休暇
SF
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