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「りかさん」/慈しむ

 2005-08-16-08:54
梨木香歩「りかさん」

目次
りかさん
  養子冠の巻
  アビゲイルの巻
ミケルの庭

■りかさん
リカちゃん人形が欲しかった「ようこ」の元に、おばあちゃんから送られてきたのは、真っ黒の髪の市松人形の「りか」だった。おばあちゃんの手による「説明書」には、こう書いてある。

『ようこちゃん、りかは縁あって、ようこちゃんに貰われることになりました。りかは、元の持ち主の私が言うのもなんですが、とてもいいお人形です。それはりかの今までの持ち主たちが、りかを大事に慈しんで来たからです。ようこちゃんにも、りかを幸せにしてあげる責任があります』

「大事に慈しむ」というのは、どういうことかというと、具体的には「りか」のお世話をすること。着替え、食事(大事なことは、必ずようこちゃんもいっしょに食べること。(だってひとりのお食事って味気ないでしょう。)の世話、隣でいっしょに眠ること。一緒に食事をするようになって、七日目の夜、「りか」はようこに話しかけるようになる。ようこよりしっかりして、年上のお姉さんのような「りか」を、ようこは「りかさん」と呼ぶことにする。

「りかさん」はおばあちゃん曰く、こんな性質の人形。

「人形の本当の使命は生きている人間の、強すぎる気持ちをとんとん整理してあげることにある。木々の葉っぱが夜の空気を露に返すようにね。」
「気持ちは、あんまり激しいと、濁って行く。いいお人形は、吸い取り紙のように感情の濁りの部分だけを吸い取って行く。これは技術のいることだ。なんでも吸い取ればいいというわけではないから。いやな経験ばかりした、修練を積んでない人形は、持ち主の生気まで吸い取りすぎてしまうし、濁りの部分だけ持ち主に残して、どうしようもない根性悪にしてしまうこともあるし。だけど、このりかさんは、今までそりゃ正しく大事に扱われて来たから(人形の中には、正しくなく大事に扱われるものもある)、とても、気立てがいい」

りかと本当に馴染んでお付き合いが始まったので、ようこには他の人形の気配も分かるようになる。「養子冠」「アビゲイル」のどちらも、人形たちの思いの話。

□養子冠の巻
ようこのお雛さまは、ちぐはぐ。普通、お雛さまは、セットでやって来ることが多いから、セットで一つのぼんやりとした思いを醸し出すもの。別々につくられたお雛さまたちが一つのセットになった、ようこのお雛さまたちは、それぞれの思いが衝突して、不協和音がかしましい。この巻では、擦れ違ってしまっていたようこの父とおばあちゃんの蟠り、お雛さま達の不協和音が解消される。

「でも父さんには父さんの理屈があるんだよ。人間って長く生きてると、ああいう冠みたいなものを置き違えてそのままにしてたりすることもたくさんあるけど・・・・・・」

□アビゲイルの巻
「養子冠」から続くお話。ようこの友達、登美子ちゃんのお家は何だか大変そう。「養子冠」の巻で、ようこの部屋にやって来てしまった「背守の君」と、登美子ちゃんのお家でかしましかった人形たちの中で、ただ一人沈黙を守る「汐汲」の思いが解きほぐされる。「汐汲」はあまりに重くて沈痛な思いを引き受けているので、何も話すことが出来なかったのだ。

「汐汲」が語った悲しいアビゲイルの話。アビゲイルは日米親善使節団の任務を背負わされて、日本にやって来たママードール。美しい青灰色の瞳をした、美しい愛らしい人形であるアビゲイルは、自らの親善使節としての任務を大切に思う。故郷で最初に自分を目覚めさせた、あのまぶしい光の洪水のような愛情を、今こそ自分たちはこの日本の子どもたちに伝えるのだ。折悪しく日米は開戦し、アビゲイルは敵国の使者、「鬼畜アメリカ人のスパイ」と見なされる。哀れな姿になってしまったアビゲイル。ようこはりかさんに促され、アビゲイルの供養を行う。アビゲイルはかわいがられることが使命。とても可愛いとはいえない姿のアビゲイルを、可愛いと抱きしめてあげることが供養になる。

―かわいいという言葉を胸の中に抱いてみて。
ようこはうなずき、かわいいという気持ちを、小さな鞠のように胸の中にふうわりとおいた。
―そしたら、そのかわいいという感じがどんどん拡がって行くように力を出して。
ようこは言われたとおり、かわいい、という温かなどこかくすぐったくなるようなほんわかした気持ちがどんどん、心いっぱい拡がって行くようにした。それはだんだん、ようこの体の隅々まで、髪の先から手足の爪の先まで満ちて来た。両の手のひらを開けるとそのあいだの空間までかわいい温かさでいっぱいになるようだ。

アビゲイルのもう一つの使命は、りかさんに受け継がれ、その後のお話「からくりからくさ」、次の章「ミケルの庭」にリンクする。

「からくりからくさ」に繋がる、ようこの染織の話も出てくる。この頃から、蓉子は既に染織に興味があったのだね。植物染料の話から、おばあちゃんの話はこんな話へ。

「おまえは、ようこ、澄んだ差別をして、ものごとに区別をつけて行かなくてはならないよ」
「まず、自分の濁りを押しつけない。それからどんな『差』や違いでも、なんて、かわいい、ってまず思うのさ」
「ようこがそうやって、頭でなく言葉でなく、納得して行く感じは、そういう『悲しいもの』が『昇華に至る道筋』をつけるんだよ。」

■ミケルの庭
文庫収録にあたり、書き下ろされた短編。これ一編でも分かるけれど、「からくりからくさ」を読んだ後だと、更に良く分かる仕組み。アビゲイルから受け取った使命を、りかさんが果たす。「からくりからくさ」もとてもいい話なのですが、蔓草の様に繋がっていく「からくりからくさ」のお話。まだ上手く感想が書けないのです。
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人形の世話もペットの世話も、私は碌にしたことがありませんが、自分以外のもの(特に小さいもの、かな)の世話をし、慈しむことは自分のためでもあるのかもしれない。
梨木 香歩
りかさん
梨木 香歩
からくりからくさ

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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