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「血族」/ファミリー・サーガ

 2008-01-21-23:45

山口 瞳

血族


山口瞳さんのファミリー・サーガです。この本のことは、桜庭一樹さんの読書日記で知りました(こちら )。気になって図書館から借りてきたら、ぐぐっと引き込まれ、桜庭さんも「ページをめくるのが止まらなくなったー!」と書いておられるけど、まさにそんな感じ。すっかりページに引き寄せられてしまいました。

薄皮を剥ぐように明らかになっていく、山口氏の母上がひた隠しにしていた母方の「血族」の事情。それはまるで、良く出来たミステリー小説のようでもある。

雑誌に頼まれ、田中角栄論を書いていた山口氏。田中角栄に迫るにあたり、自分の父親との対比を試みようとしていた氏は、ふとこれまで気づかなかったことに気づく。それは、父と母、それぞれの若い頃や、その後の写真はあるのに、両親の結婚式の写真が存在しないこと。自分が生まれる前の写真が、存在しないのはなぜなのか? それだけであるのなら、そう不思議なことではない。しかし、謎は続く。

兄と自分の近すぎる生年月日の謎、「瞳」という男性としては珍しい名前を氏に付けた母の謎、美男美女ばかりの親族の謎、その親族が皆、どこか頽廃的な性情を持つという謎…。山口氏自身に纏わりついた欠落感…。そして、親類の謎めいた言葉。

「いつか教えてやるよ」
と、親類の一人が言った。その人も明治の生まれである。
「いつか教えてあげるけれど、まだその時期じゃないな。お前は小説家なんだから、知っておいたほうがいいかもしれない」

そう、氏の家族には、確かに「何か」があったのだ。しかし、それは母がひた隠していた秘密でもある。父と母の秘密を暴くことを躊躇していた氏は、教えてくれる親類も全て亡くなってしまった頃になって、改めてその謎に向かい合うことになる。

自らの家族の謎を追い求めるという点で、マイケル・ギルモアの「心臓を貫かれて 」を思い出す。

時に怖れながら、時に秘密を暴く辛さに慄きながら、謎に迫って行く姿は、痛々しくもある。

正直ね、時代の違いからか、そうして浮かび上がった真実に、さほど驚きを覚えなかったりもするのだけれど、どこまでも仲間であったのに、血よりも濃い絆で結ばれていたのに、ばらばらであらねばならなかった事情が辛いなぁ。ばらばらでありながら、やっぱり強い絆で結ばれてもいたのだけれど。

「心臓を貫かれて」では、マイケル以外の家族を繋いでいたのは、彼らが体験した同じ地獄だったけれど、「血族」においても一族を繋いでいたのは、彼らが共通に背負った業であった。人を繋ぐのはプラスのものだけではなくて、時にマイナスのものが強く人々を結び付けることがある。なんだか、その繋がりが哀しいものだなぁ、と思いました。でも、過去があって現在がある。過去の欠落は、また新たな欠落を生んでしまう。たとえどんな過去であっても、共有してこそ家族なんじゃないかなぁ、とも思いました。愛する者だからこそ、知られたくないこともあるのだろうけれど…。哀しいけれど、迫力の一冊でした。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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  • 家族とはそういうもの/血族【できれば本に埋もれて眠りたい】
    血族 山口瞳 血族 (文春文庫 や 3-4)/山口 瞳 ¥610 Amazon.co.jp 自分の親の若い写真をみるとなんだか遠い空を眺めているような気がしてきます。 遠いような近いような、自分に関係があるような、ないような。 さらに祖父母との家族写真となると
【2008/09/14 02:29】
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つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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