スポンサーサイト

 -----------:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
カテゴリ :スポンサー広告 トラックバック(-) コメント(-)

「ジェノサイドの丘・上」/民族という悪夢

 2008-04-01-00:04
ジェノサイドの丘〈上〉―ルワンダ虐殺の隠された真実ジェノサイドの丘〈上〉―ルワンダ虐殺の隠された真実
(2003/06)
フィリップ ゴーレイヴィッチ

商品詳細を見る

扉から引きます。

「一割間引き(デシメーション)」とは十人に一人を殺すことを意味するが、一九九四年初夏、ルワンダ共和国では大虐殺によって人口の一割が殺された。殺害はローテクなものだったが―主として山刀(マチェーテ)が使われた―驚くべきスピードだった。七百五十万人の人口のうち、少なくとも八十万人がわずか百日のあいだに殺された。ルワンダ国内では死者百万人とも言われているが、こちらの数字の方が正しいかもしれない。ルワンダの死亡率はホロコースト中のユダヤ人のほぼ三倍に達する。これは広島と長崎への原爆投下以降、もっとも効率的な大量虐殺だった。


大量虐殺とは混乱の中で行われるものではない。粗末な武器で、ひたすらに隣人を、かつての友人を殺し続ける。それには組織的な力が必要であり、殺される側がその運命を受け入れるという特殊な状況も必要となる。なぜ多くの人が殺す側に回ったのか、なぜ多くの人たちが唯々諾々と殺されていったのか。それは一九九四年に、突然始まったものではないのだ。

著者、ゴーレイヴィッチは、ルワンダの不幸をヨーロッパによる侵入、及び植民地化に見る。それまでは、自分たちの国が世界の中心であると考え、多様な人種が君主の元に団結していたルワンダの人々は、ベルギー人たちによって分断される。ベルギー人たちは、ヨーロッパ的身体特徴を持つツチ族が優性であり、アジア的特徴を持つフツ族を劣性であると、位置づけたのだ(そして、「人種」を持ち込んだベルギー自体も、人種の境界線によって分断された国家であるというこの皮肉)。ツチ族は支配者としての地位や教育を与えられ、一方のフツ族は支配される者となった。

そして、この後、ルワンダにおける政治闘争は平等を求めるものではなく、二つに分かれた民族のどちらが支配的地位につくかの争いとなる。

一九五七年 フツ族知識人グループが『フツ宣言』を出版し、「民主主義」を求める
一九六〇年 ツチ族首長をフツ族にすげかえるクーデターが演出される
一九六一年 君主制が破棄され、ルワンダが民主主義国家となる
一九六二年 ルワンダが独立国家となる

国家が動いていく間、個人には何が起こっていたのか。ルワンダのツチ族は、恐怖で年を数えるのだという。五十九年、六〇年、六一年、六三年…九四年。家が燃やされ、人々が殺される。なぜ自分が生き残ったのかもわからないながら、恐怖をどう生き抜いたのか、その記憶が彼らの人生を形作る。

逃亡したツチ族貴族たちが率いる武装集団によるルワンダ襲撃は、より悪い結果をもたらす。それは、フツ族政府がツチ族市民を攻撃する絶好の理由となるのだ。他人種への反目には、市民意識を高める効果がある。政治的に煽られた民族熱は、最悪のシステムを作り出す。人間は一人で生きるものではなく、共同体の中で生きるものであるけれど、協調性や勤勉さなどの美徳とも言える性質が、もしあらぬ方に走ってしまったとしたら? 殺人とレイプが決まり事になってしまったら?

さらに国内だけではなく、国外からも様々な資金や武器が調達されるとしたら…。ツチ族反政府派のルワンダ愛国戦線(RPF)と、フツ族政府軍、ルワンダ武装警察(FAR)の戦いは、そのままルワンダが植民地だった頃へと遡る。英国系のRPFに対抗して、フランスはFARに加担する。そうして潤沢な資金や武器がルワンダに流れ込み、またFARは、「内なる敵」である無力なツチ族市民の撲滅に執念を燃やす…。

結局のところ、ジェノサイドはコミュニティ形成の実践だった。全体主義の強力な命令は全住民をリーダーの計画に組織する。ジェノサイドはそれを実現するための、もっとも異常かつ野心的な、だが同時にきわめてわかりやすい方法だった。一九九四年のルワンダを、外の世界は崩壊国家がひきおこす混乱と無政府状態の典型だと見なしていた。事実は、ジェノサイドは秩序と独裁、数十年におよぶ現代的な政治の理論化と教化、そして歴史的にも稀なほど厳密な管理社会の産物だったのだ。   (p117)


その中で個人に何が出来たのか?
ここで描かれるのは、対照的な二人の姿。

一人は国連ルワンダ支援団(UNAMIR)の国連軍指揮官のカナダ人ロメオ・ダレール少将、もう一人はホテル、ミル・コリンのマネージャー、ポール・ルセサバギナ。

ダレール少将は、虐殺や略奪を止める手段や力を持っていたにも関わらず、それを行使する事無く、ただツチ族が殺されていくのを見守るしかなかった。彼の報告と提案が、「UNAMIRの任務を越える」として、事務局の同意を得られなかったために…。

一方のポールは(これ、たぶん、「ホテル・ルワンダ」の人ですよね)、生き残っていた電話線に気づき、FAXを送り、電話で話し、世界中に叫び続ける。ホテル内に匿った人々に対し責任を持ち、様々なコネを駆使し、とりあえずその日、その人を殺させない、連れ去らせないことを念頭に、何とか日々をしのぎ続ける。

何がポールとその他の人々、たとえば教会に避難してきたツチ族信者たちの元へ、彼らを殺害する警官を案内した神父や、力を行使する事無く人々を見殺しにした国連軍少将とを分けたのだろう。ポールは、それを”自由意思”に求めるが…。何者として生き、何者として死ぬべきか。しかし、あまりに多くの人々が、非人道的行為を受け入れてしまっていた。

色々な人々や国の事情にズームしていくような感じなので、多角的には分かりやすいのだけれど、なかなかこれを理解出来たとは言えないです。

確か、当時もちらりと不思議に思っていたアメリカの「ジェノサイドの行為が起こったかもしれない」という、曖昧な言い回し。これは、ジェノサイド条約があったからだったのですね。ジェノサイド条約の締結国は、国家が殺人を防止し処罰するように、素晴らしき新世界の警察となることを誓ったのだが…。あまりに道徳的ユートピア過ぎるこの条約は、結果として形をなさず、アメリカがゴーサインを出し渋っている間、ルワンダでは人が殺され続けた。

加害者、被害者、権力者、反権力者が分かり辛いのも、ルワンダの問題の特徴なのか。一九九四年のジェノサイドにおいて、「ターコイズ作戦」によってフランス軍が支援したのは、ジェノサイドを行った地域リーダーたちであり、ジェノサイドの罪から逃れるために、難民となったのは彼らジェノサイドの首謀者たちであった…。

上巻を読んだだけでも、それはそれは救いがなく、ここまでで全ての不幸が描かれているようにも思ってしまうのだけれど、下巻ではさらに何が描かれるのか。

ルワンダの問題が突発的に起こったものではなく、悪夢のようなシステムが形作られてしまったために起こってしまったことが良く分かった。こんなシステムを作り上げてしまったのは、勿論人間であり、それは天災でも何でもないことも。

陰惨たる描写に途中で投げ出してしまったのだけれど、「戦争における「人殺し」の心理学」を思い出した。結局、「人間性」なんてものは、一旦どこかが掛け違われてしまえば、いくらでも酷い事が出来てしまうんだなぁ…。
Wikipediaのルワンダ紛争にリンク
戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)
(2004/05)
デーヴ グロスマン

商品詳細を見る
ホテル・ルワンダ プレミアム・エディションホテル・ルワンダ プレミアム・エディション
(2006/08/25)
ドン・チードル、ソフィー・オコネドー 他

商品詳細を見る

□下巻の感想にリンク
コメント
「ホテル・ルワンダ」を見てルワンダ紛争について調べている時、この本に言及したサイトがいくつかありました。

映画のほうではポールが必死に人々を助けようとするシーンが救いで、虐殺の描写なども何とか耐えることが出来ましたが、実際文字にされて読むと辛いものがあるでしょうね。同じ国の人々なのに、まるで人間相手ではないかのようにナタで斬り殺す。

なにより今までこの事実を知らなかったのがショックでした。

そういえば今、チベット問題が騒がれてますよね。”浄化”という大義の下にチベットの僧や一般の人々を拷問したり、殺したり…。平和の祭典とかどの口で言ってるんでしょうか、あの国は。
【2008/04/01 21:11】 | おんもらき #SFo5/nok | [edit]
こちらのブログでは、初のトラックバックです。どもども。

そうそう、おんもらきさんが「ホテル・ルワンダ」の記事を書いてらしたなぁ、と思いながら読みました。
この本はいいですよ。扇情的でもなく、感情的でもない。
淡々と事実が積み上げられてゆきます。

「ホテル・ルワンダ」のポールたちが助かったのも(もちろん、ポールの引き延ばし策があってこそ、ですが)、実際はRPFと政府軍との取引(捕虜交換)によってなのですよね。RPFの圧力がなければ、ポールによる時間稼ぎもすべて無駄になった可能性すらあった…。

全てが最悪の方向へいってしまう、ルワンダの状況に暗澹としました。
下巻も読まねば!

チベット問題もそうですよね。
私の知識は、映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」で止まったまま…。
中国はなんでチベットを手放さないのだろう、と思います。
ああ、知識不足。
【2008/04/01 23:18】 | つな@管理人 #- | [edit]












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:
http://tsuna11.blog70.fc2.com/tb.php/8-11901814
  • 【映画】ホテル・ルワンダ【みすじゃん。】
    ホテル・ルワンダ プレミアム・エディション(2006/08/25)ドン・チードル、ソフィー・オコネドー 他商品詳細を見る 愛する家族を守りたいという想...
【2008/04/01 21:03】
≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫
プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

掲示板その他リンク

ユーザータグ
最近の記事
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

RSSフィード
カウンター

月別アーカイブ
検索エンジン情報
Googleボットチェッカー Yahoo!ボットチェッカー MSNボットチェッカー

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。