「オーデュボンの祈り」/奇想天外だけど・・・
カカシを殺したのは誰?
「カカシを殺す」って普通はおかしなことだ。けれど、ここではおかしくない。なぜなら、この「カカシ」はただのカカシではなく、ものを言う、預言するカカシだから。そんなの、私たちが知る普通の世界では有り得ない出来事。そう、この物語の舞台は、外界から隔絶した「荻島」という島。島の住人、日比野がいうには、この島はこんなところ。
「この島は孤立している。閉じこもっているんだ。仙台なんかと行き来があるものか。俺はこの島で生まれたし、このまま外に出ることもなく、死ぬ。小さな荻島の数千人はみんなそうだ」
「変な島だろ。ここは本当の孤島だ。外界とは隔絶している」
主人公である伊藤は、百五十年ぶりにこの島にやってきた、二人目の人間。日本の開国とほぼ逆行するように、百五十年間も鎖国を続けているこの島には、『ここには大事なものが、はじめから、消えている。だから誰もがからっぽだ。島の外から来た奴が、欠けているものを置いていく』という伝説がある。
物言うカカシ・優午を殺したのは誰? 島に欠けているものは何?
島の人間たちは、みな、どこか変わっている。それは伊藤を案内してくれる日比野だってそうだし、その他にも、嘘しか言わない変人画家・園山、唯一人外の世界と行き来をしている、熊の様な男・轟、島のルールであり、武力を行使する男・桜、あまりに太りすぎてその場から動けない女・ウサギ、地面に寝転がって心臓の音を聞く少女・若葉、妻である百合ちゃんを盲目的に信仰する郵便配達員・草薙、鳥が大好きで足が不自由な男・田中などなど、どれも一癖ある人物ばかり。
更に、伊藤のいた元の世界の住人である、強迫的に仕事に没頭する元恋人・静香、伊藤とは中学時代からの因縁がある、最低の警察官・城山が加わって、物語は進行する。
伊坂さん得意の全てが繋がっていく物語。少々馬鹿馬鹿しくもある設定だけれど、美しい島の描写のせいか、どこか淋しげな日比野のせいか、はたまた優しい優午のせいか、私はこの物語がとても好きだった。
ラスト、まだ若く達観する前の、意地を張って見せたりもする優午も、微笑ましくていい。
*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
これ、伊坂さんのデビュー作なんだそうだ。
後の物語の片鱗となる部分があるようにも思う。
☆関連過去記事
廻る廻る/「アヒルと鴨のコインロッカー 」
兄弟/「重力ピエロ 」





