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「シェエラザード」/豪華客船、弥勒丸

 2005-11-09-08:02
浅田次郎「シェエラザード」

美しき豪華客船、弥勒丸。彼女はなぜ沈められたのか?

弥勒丸は昭和十六年の九月に三菱重工長崎造船所で完成した、帝国郵船の最大級の豪華客船。横浜-サンフランシスコ航路に就航するはずだった彼女は、その完成と同時に戦争に駆り出された。

病院船として働いていた彼女は、ある特殊な任務に付く。協定により攻撃されないはずの航路の最中、弥勒丸は潜水艦の雷撃を受けて沈没する。

企業舎弟の町金業者、軽部と日比野は、ある日、台湾の要人、「宋英明」に呼び出される。宋老人は金貸しである彼らに、百億円の融資を請う。その百億とは、弥勒丸のサルベージのためのもの。弥勒丸は五十年もの間、台湾海峡の底深くに沈められたままであった。

宋老人は、日本人の手で弥勒丸が引き上げられる事を強く望み、彼らのオーナーである、共道会の会長、山岸とその義兄弟である全国船舶連合会のドン、小笠原を動かす事を望む。更にこの弥勒丸の引き揚げについては、政界、財界の二つのルートから、話が進められているという。政界ルート、財界ルート、更に彼らのヤクザのルートの三つに打診したということは、宋老人が本気でこのプロジェクトを成功させようとしていることを示す。

裏を取る必要から、軽部は過去手ひどい別れ方をした元恋人で、新聞社に勤める律子を頼る。軽部、日比野、律子の三人は、否応なしに弥勒丸の引き揚げプロジェクトに巻き込まれることになる。

物語は彼らによる調査と、弥勒丸の過去の時間を縦横に行き来する。

弥勒丸の船員は、帝国郵船勤務から全員丸ごと軍属となった。軍属となっても、豪華客船の乗員であるという、誇りと矜持を忘れない弥勒丸の船上では、海軍中尉の正木や、陸軍船舶課の参謀、堀少佐が乗船しているにも関わらず、どこかのどかで美しく凛とした空気が漂う。

弥勒丸のついた特殊な任務とは、連合軍の物資を捕虜へ送り届けるというもの。日本国内の物資も窮乏している折、なぜ虎の子の弥勒丸をこの任務に差し出したのか。この任務にあたる船には、連合国側の安全航行権が保障された。弥勒丸は攻撃も臨検もされないはずだった。臨検がないことから、シンガポール(昭南)で弥勒丸に積載されたものは何か?また、弥勒丸はそれをどこに届ける予定だったのか?そして、弥勒丸の安全な航海のための、「お守り」とされたものとは?

タイトルになっている「シェエラザード」。これは本の中で流れる、リムスキー・コルサコフの交響組曲、「シェエラザード」からとられたもの。千夜一夜物語の美しく賢い娘、シェエラザードは、シャリアール王にむごい誓いを捨てさせた。

弥勒丸はアラビアン・ナイトのシェエラザードのように、美しく、気高く、聡明な女性でした。
彼女は世界中の船乗りの夢。沈めようなどと考えたのは、あるいは沈めてもいいと考えたのは、みな船を知らぬ人間ばかりでしょう。

しかし、美しき弥勒丸は、むごい運命から逃れることが出来なかった。


惜しむらくは、弥勒丸に関わった過去の人々に比べ、現在の調査にあたる三人(というか、二人の男性)の魅力が薄いこと「久光律子ほど明晰で行動力に富む人間を知らない」と軽部に言わしめる、律子の頭のキレと行動力は分かるし、時に美しい弥勒丸に喩えられる律子は魅力的な存在でもある。その魅力的な律子がかつて愛し、今も拘る軽部という男の、存在感の無さには物足りなさを感じる。軽部、日比野ともにそれ相応の過去が描かれてはいるのだけれど、戦時中の人々に比べて、その存在感は如何にも弱い。

最後の「夜の涯に」の章も少し余計かな。ちょっと、「泣かせ」が入ります。

文句も言ったけれど、このスケールの大きな話を纏め上げる手腕は流石。魅力的な人物も沢山出てきます。それぞれの職務に誇りを持ち、己の信ずる所をいく人を書くのが、浅田さんはやはり上手いと思う。たとえそれが悲劇に雪崩込んでいくものだとしても。


読了後、検索した所、この「弥勒丸」の悲劇は、実在の「阿波丸事件」をモデルとしたものだそうです。

サイト「メコンプラザ」 さんの、「第26回 メコン圏を舞台とする書籍(小説・文学)」のこちらの頁 に詳細が載せられています。リンクフリーとありましたので、ここに紹介させていただきました。

 ← 私が読んだのはこちらの単行本
浅田 次郎
シェエラザード〈上〉
シェエラザード〈下〉

← 既に文庫化されているようです

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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