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「ケルトの白馬」/白い馬

 2005-11-15-10:10
ローズマリ サトクリフ, Rosemary Sutcliff, 灰島 かり
ケルトの白馬

イギリス、バークシャーの緑なす丘陵地帯には、地肌の白い土を露出させて描いた、巨大な白馬の地上絵がある(表紙写真)。これは、古代ケルト人の手による地上絵であり、時を超えて命の輝きを放ち続けている。

なぜ、どのようにして、この「アフィントンの白馬」が描かれたのか。
これは、そのあったかもしれない一つの物語。
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イケニ族は馬を飼育する『馬族』であった。彼らは野生の馬を馴らし、仔馬を育てて、馬の数を増やしていく。白亜の丘陵地帯に辿り着いた彼らの祖先は、この草原が馬の放牧に適していることを見てとった。褐色の肌の先住民たちを追い払い、強固な砦を築き、ここを自分たちの土地とした。

族長のティナガンには、妻のサバとの間に生まれた息子が三人いた。末息子の名は、ルブリン・デュ。彼は大人びたまなざしと、白い肌と明るい色の髪を持つイケニ族には稀な、褐色の肌と黒い髪を持って生まれた。

ルブリンが他の者たちと違っていたのは、その外見だけではなかった。彼はつばめが舞うように飛ぶのを見ては、空に描かれる華麗な模様をつかまえようとし、竪琴弾きのシノックの音楽と詩を聞いては、それらが心の中で織りなす模様をつかまえようとする。

春が来て、ベルタイン祭りの火が消えた翌日、その年に九歳になった一族の少年は、揃って少年組に入る。少年組の子供たちは、背の低い長い建物で一緒に暮らし、戦士となる訓練を受ける。槍での戦い方や馬の群の扱い方、獲物の追い方、刀や投げ槍や投石器の使い方。戦車の組立て方。覚えることは数多い。祭司である樫の木の賢者イシュトラからは、呪文の読み方と書き方を、竪琴弾きのシノックからは、自分たちの歴史が読み込まれている歌を習う。一族の少年が、一人前の男になるとはこういうこと。

ルブリンとダラは、その性質は違うものの、言葉ではなく互いを理解したもの同士、親友として育つ。少年組三年目のある秋の日、一族のもとに北方から商人がやって来る。この商人の何気ない言葉と古い歌の記憶が重なり、二人の少年の間に一つの夢が生れ落ちる。彼らの一族は遠い昔この土地にやって来た。海と山の間に広い草原がある国、その北の国を求めて、祖先と同じようにダラとルブリンとで若者たちの集団を率いていけたら・・・。

ルブリンの部族では、族長の跡継ぎとなるのは、息子ではなく族長の娘と結婚した男。母サバの死により、ルブリンの妹テルリは十二歳で婿選びの儀式をしなくてはならなくなった。樫の木の賢者、イシュトラが告げた婿の名は、ダラ。ルブリンとダラの立場は、もう同じではない。二人で北の地へ向かうという夢は潰えた。

平和に暮らしていた彼らのもとに、南から不穏な影が忍び寄る。そしてそれは、テルリが十四歳となり、テルリとダラの婚礼がとり行われた新月の晩に、現実のものとなった。アトレバテース族が、とうとうルブリンたちの砦を攻めてきたのだ。闘いに出た一族の戦士たちから、ルブリンははじき出され、ドロクマイルとともに、残留組となり砦に残る。敵の襲撃に立ち向かうよりも、実は残ることは一番難しい仕事であると諭され、ルブリンは父ティナガンの信頼に応えようと思う。

戦い虚しく、ルブリンたちの一族は、敵であるアトレバテース族に征服される。ルブリンは唯一人生き残った族長の息子として、一族の生き残りをまとめること、敵の族長の口となり耳となることを要求される。族長とはそういうこと、敵の指揮官クラドックにもそれが分かり、ルブリンにも勿論それが分かる。そして族長の重責は、代わってくれるものもない。

ルブリンたちは、アトレバテース族の奴隷として、彼らの砦をより強固なものにするために働いていた。冬が過ぎ、春となった。クラドックは偶然、数本のゆれる線だけで、馬の群がすさまじい勢いで走る様子を描くことが出来る、ルブリンの絵の才能を知る。ルブリンの絵に執着するクラドックと、ルブリンはある取引を行う。

緑の丘いっぱいに広がる白い馬。丘の斜面を掘って描く、巨大な馬。

それは、もしクラドックの望みどおりの馬を作ることが出来たなら、一族の生き残りを自由の身とし、どこかよその土地で馬を飼う事が出来るように、雄馬と仔を産める雌馬を分けてくれ、というもの。ただし、族長である二人の男の約束は、そこで語られたことが全てではない。言葉にはされなかった何物かがあり、それは暗闇の中で時が満ちるのを待っている。

ルブリンが子供の頃から夢に見た白馬は軽やかに丘を駆け、一族の生き残りたちも自由の身となる。しかし・・・
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全編を流れる風、彼らの女神エポナ、ルブリンのハルニレの木、彼らの慣習、全てが美しい本。最後のルブリンとダラの友情には、短い物語であるにも関わらず、涙が出た。
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