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「樹上のゆりかご」/思春期の甘やかさと逡巡、そして純粋な思い

 2005-12-12-08:45

荻原 規子「樹上のゆりかご」理論社

思春期の頃の逡巡をそのまま表したような物語。同じ学園物であっても、姫野カオルコさんの抉る様な厳しさはないし、恩田陸さんの日常に切り込む鋭さもない。あくまで柔らかな手触りの物語。それが悪いというわけではない。男の子というよりは「男子」、女の子というよりは「女子」、思春期の波間に漂う感じに触れることが出来る。

主人公・上田ひろみが通う、辰川高校は少々変わった学校。周辺に名の知られた進学校であるのにも関わらず、外部の人間が笑って信じないほど、イベントに異常に力を入れるのだ。俗に三大イベントと呼ばれるそれは、合唱祭、演劇コンクール、体育祭の三つ。もとは男子校だった辰川高校には、未だにその時の伝統が色濃く残り、感受性の強い女子生徒には、疎外感や、「お客さん」といった思いを抱かせることもある(「男子クラス」などというものも、未だに存在する)。


芯は強いものの、おっとりしたごく平凡な生徒であるひろみは、自分から男子と積極的に話す事はまずないし、生徒会などにも縁のない生活を送るはずだった。しかし、友人の中村夢乃につられたこと、また多少なりとも自分を変えたいという思いもあり、生徒会の執行部と関わることになる。主なメンバーは、会長となる鳴海知章、そのサポート役の加藤健一、鳴海のクラスメートの剣道少年、江藤夏郎。ひろみは忙しい日々を過ごすが、生徒会に悪意を持つとしか思えない嫌がらせが、イベントの度に相次ぐ。


そんな中、彼女は一風変わった、美人で頭も切れるが一年ダブリの生徒、近衛有理と近付きになる。有理はひろみの柔らかい感受性を認め、二人は仲良くなるのだが・・・。

メインとなるのは、この近衛有理が演劇コンクールで演じ、自ら演出も手がける、「サロメ」の「七つのヴェールの踊り」の話。

有理の解釈によれば、「サロメ」を読み解く鍵は月の女神。ギリシャ神話以前の女神、エフェソのアルテミス。エフェソスのアルテミスは、処女であり妻であり母である。全部を合わせた存在だから、女性の良い部分もおぞましい部分も、やはり全部を備えている。

サロメはなぜヨカナーンを首を斬らせてまで、自分のものにしなければならなかったか。それはきっと、ヨカナーンがサロメのすべてを拒絶したから。
女性性を全否定される事は、命を枯らすことと同じ。

さて、サロメが欲しかったもの、有理が欲しかったものとは一体何か。
二人が囚われるのは、認められない、見て貰えないという苦しみ。

一連の事件を通して、みなが少しずつ大人になる。辰川高校を支える伝統、それは樹の上に載せられたゆりかごのようなものかもしれない。

ゆりかごがひっくり返っても、私たちは何とかなるのだ。現実には―たぶん。
一番よくないのは、落ちることを恐れてしがみつくこと。自分に目隠しをすること。それだけはするまいと、私は思った・・・・・・

どうでもいいこと、馬鹿みたいに実りがないことに熱中できる時代。それはとても貴重なものなのだ。そして、それはきちんと目を開けてみているべきもの。

そして、
私たちは、まだまだ移ろっていく。

私はひろみが通う辰川高校とは正反対で、イベントに「異常に」力を入れない高校に通っていたので、ひろみ達が体験するイベントを楽しんで読んだ。実際、ほんとにこんな高校に通ったら、自分がきちんと協力するか、あやしいものではあるが(だって、これ、絶対面倒くさそうなんだよ)。

あまりに純粋な思いに触れた時、それが真摯なものであればあるほど、人は恐怖を感じ、その思いから閉じてしまうのかもしれない。特に純粋な思いは、時に狂気にも通ずる。純粋な思いの対象となることは、幸せなことなのか? 愛情は欲しいという気持ちだけではなく、もう少し柔らかい感情を含むものだと思うから、やっぱりちょっと大変かなぁ。時にそれは勘違いを含むものでもあるしね。

物事に真摯に向き合う事を推奨する、爽やかな青春小説と私はこの本を読んだ。

前作にファンタジー色の強い「これは王国のかぎ」という本があるそうだけれど(途中、ちらりと出てくる場面あり)、知らずに単独で読んでも、これはこれで楽しむことが出来た。図書館で見つけたら、こちらも読んでみようかなと思う。


 
荻原 規子
樹上のゆりかご

 
荻原 規子
これは王国のかぎ 

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

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