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「空中ブランコ」/伊良部、再び!

 2005-12-19-09:52
?奥田英朗「空中ブランコ」

「イン・ザ・プール」 の続編。テイストは同じ。
ということで、物語の前提は以前書いたものを、そのまま引きます。

「伊良部総合病院」の地下一階には、「神経科」が存在する。総合病院自体は、白壁の清潔そうな建物なのだけれど、「神経科」は閑散としていて、如何にも怪しげ。そして、ここに常駐しているのが、注射フェチのトンデモ精神科医伊良部。患者は大抵、階上のまともな科から、匙を投げられ、回されてきた者たちばかり。彩を添えるのは、セクシーな看護婦マユミだけれど、彼女もまた無愛想この上ない。伊良部は病院の跡取りであるために、何とか仕事を与えられているように見える・・・。

■空中ブランコ
患者:山下公平
職業:会社員(サーカスの演技部員、空中ブランコ乗り)
症例:不眠

昨今ではサラリーマン的な団員が増えて、両親ともに団員の、生え抜きサーカス団員である公平には、居心地の悪いことばかり。最近では外様のキャッチャー、内田のキャッチミスが続き、本番でネットに落ちるという屈辱的な出来事が頻発している。

たぶん自分は、閉じているのだ。本当は人恋しいくせに、近づこうとしない。友だちが増えることに慣れていないのだ。

伊良部の空中ブランコ飛行の場面は圧巻。

■ハリネズミ
患者:猪野誠司
職業:紀尾井一家の若頭
症例:先端恐怖症

強面を貫かねばならぬ、若頭猪野は、実は箸すら使えぬほどの先端恐怖症。
このままでは、沽券に関わる!一体どうすれば?

「やくざ稼業って、いわばハリネズミみたいなものじゃない。いつも相手を威嚇してないといけないわけでさ。そういうのって誰でも疲れるから、その反動で、先の尖ったものやシャープなものを受けつけなくなるとか……」

珍しくまともに分析しているけれど、やくざが凄んだ所で、まったく動じない伊良部&マユミのコンビもすごいし、注射への執念もまたすごい。

■養父のヅラ
患者:池山達郎
職業:付属病院勤務の大学講師
症例:強迫神経症

伊良部の学生時代の同級生、池山は今では学部長・野村の娘婿となった。夫婦の間には三歳になる息子もいるのに、池山は取り繕ったようなインテリの野村家に、どうにも馴染めない。何よりも気になるのは、養父のヅラ! あのヅラを一番まずい場面で、外してみたくてたまらない。

「破壊行動は、要するに自分を壊したいってことだから、代償行為を見つければ、案外収まるんじゃないの?」

伊良部とともに行う、「破壊行動」の数々。体裁を取り繕う人生は確かに苦しそうだけれど、伊良部の行動にも胃が痛くなりそう。同窓会で同級生が語る、伊良部の学生時代の話も面白い。

■ホットコーナー
患者:坂東真一
職業:プロ野球選手(ベテラン三塁手)
症例:スローイング・イップス

球団に、イケメン・ルーキーがやって来てから、ベテラン坂東は突然コントロールを失ってしまった。坂東は恐怖、嫉妬から逃れることが出来るのか。

■女流作家
患者:牛山愛子(ペンネーム星山愛子)
職業:作家
症例:嘔吐症&強迫症

売れる小説、売れない小説。星山愛子は、「売れる」小説を書ける作家。しかしそれは、「売れる」ものしか求められていないということでもある。彼女の渾身の作は、部数を伸ばすことが出来ず、同じような「売れる」恋愛小説を量産する毎日。この男女の職業の組み合わせはどこかで書いたのでは?、不安が止まらない。

「わたし、小説読んで泣いたの、生まれて初めてだったから」
わたしは救いようのない馬鹿だ。読者を忘れていたなんて。
マユミは怒ったような顔をしていた。目も合わせない。照れているのだ。可愛い。
「そう、ありがとう」 愛子は心から言った。飛び上がりたいほどのうれしさだ。
「それだけ。またああいうの、書いてください」
「うん、書く。今日から書く」

愛子渾身の作である『あした』を、マユミが認めるこの場面が良かった。
言葉は人間の宝物でもある。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
前回の「イン・ザ・プール」では、一応治療法を書いたのだけれど、今回は「治療法」などと、とても一言で書きあらわせない(というか、前回に輪をかけて、治療なぞしていないように思える)。
伊良部は、空中ブランコでは空中ブランコに乗ってしまうし、プロ野球選手がやってくれば、草野球チームを立ち上げてしまう。さらに作家がやってくれば、編集部に小説の持込みをし、自分も本を出せると信じて疑わない。

どれもモノにはならないのかもしれないけれど、伊良部がどんどん多才になっているように思えた。ま、単に子供のように、突っ走ってるだけとも言えますが。しかし、伊良部医師には、このままどんどん突き抜けていって欲しくもある。 いけー!

奥田 英朗
空中ブランコ

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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