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「赤目のジャック」/パンドラの箱

 2006-01-16-10:17
 
佐藤 賢一
赤目のジャック

これは、「ジャックリーの乱」を題材とした物語。この耳慣れない「ジャックリーの乱」とは一体何なのか。それは、「1358年に百年戦争中のフランスで起こった大規模な農民反乱」であり、「叛乱の名前は当時の農民の蔑称ジャック(Jacques)に由来するとされるが、当時の年代記作者によって、当初、指導者名がジャック・ボノムと誤って伝えられたことに由来するという異説もある」そうだ(wikipediaより引用)。

佐藤賢一氏による、本作「赤目のジャック」は、この「ジャックリーの乱」に『ジャック」が本当にいたとすれば、一体どんな男だったのだろう』(あとがきより引用)と想像して書かれた本。惨たらしい描写の数々がなされ、人間の暗部がこれでもか、と描かれる。蓋が外された時、そこには何が立ち現れるのか。

北フランスの寒村、ベルヌ村に住む、十八歳のフレデリは絶望していた。彼が生まれ育った村は、傭兵たちにすっかり蹂躙されていた。双子の兄は婚約者を守ろうとして共に殺され、彼の婚約者、栗毛のマリーは傭兵たちに輪姦されていた。なぜこんなことが起こったのか?村人たちのやり場のない怒りはどこへ。傭兵たちに復讐を果たそうにも、彼らは元来流れ者。後を追うこともかなわない。

フレデリが頼ったのは、村にいつからか住み着いた、乞食坊主「赤目のジャック」。ジャックの色素が薄く、時に赤く光る目は、村人たちに「魔眼」として恐れられていたが、その闇の知恵ともいうべき世渡りの術は、村人たちに一定の信頼を得ていた。ジャックは言う。この惨状は誰によってもたらされたものか? それはひとり直接手を下した傭兵たちによるものではない。村人たちは貧しい中から、領主たる貴族に年貢を納め、賦役をこなしていた。それは本来、「守って貰う」代償としてのもの。「守って」くれない貴族に存在意義はあるのか? 戦に負け、傭兵たちを招きいれたフランスの貴族、騎士たち、彼らは一体何ほどのものなのか。

ジャックの魔眼が光り、杖に付けられた、帆立の貝殻が鳴る時、善良であった村人たちの良心は凍る。ジャックは村人たちに刷り込まれた、貴族に対する畏怖の念を破壊する。農民たちの人数は膨れ上がりながら、「世直しの十字軍」を名乗り、貴族を嬲り殺し、奥方、娘を犯し、およそ人が考えうる限りの残虐行為と略奪を繰り返す。より酷いことをしたものが、より高い地位につく。温和な人徳者で知られた村長も、孫のような令嬢の尻に取り付いて離れない。

フレデリがジャックの他に、もう一人神としたのは、赤毛で痩身の貴族の女、ブリジット・ドゥ・ベラトゥール。彼女は過去ジャックとも因縁のあった、冷血の爬虫類にも似る美しい女。彼女に弄ばれたフレデリは、正しい農夫としての人生を否定されたと感じ、貴族の女に対する憎悪の念を深める。

フレデリはジャックを破壊の神と崇め、自分を壊したブリジットを、屈服させるべき偶像、女神として、突き進む。

農民による蜂起は各地に広まったけれど、勿論貴族たちがそのまま手をこまねいているはずもない。これといって策もない農民たちの乱は鎮圧される。偶然にも鎮圧を逃れたフレデリであるが、心優しい旅芸人のジェローム、犯されたのにフレデリを愛してくれた貴族の娘、金髪のマリーを捨ててまでも、「赤」目のジャックの謎、「赤」毛のブリジットの謎、二つの謎を解くために、再び渦中へと舞い戻る。

そこで彼が見た真実とは。
人を操れる筈の「赤目」を開くこともなく、ジャックは処刑台の上であっけなく首を落とされ、誇り高く傲慢なブリジットは、可愛く少々頭の足りない妹マリーにコンプレックスを覚え、可愛がられ、奪われることを望むただの女であった

プロローグとエピローグでは、二十年後のフィレンチェにおけるフレデリの姿が描かれる。「赤目」は何度でも現れ、暴徒と化した労働者の群れが、今度は花の都フィレンチェを駆け抜ける。

「赤目」はしかし、その威力を信ずる人があってのもの。一番恐ろしいのは、それを信じて疑わないフレデリではないか、と感じた。圧倒的な暴力でもって、引け目を感じずにすんだという、栗毛のマリーの気持ちが私には良く分からなかった。互いに毒を飲み込んで、倣岸に見なかったことにしながら、それでもなお互いに優しく接する生活は、果たして幸せなのであろうか。むしろエピローグがない方が、「希望」を感じたように思う。繰り返される破壊、信仰が、人間の真実なのか。

佐藤賢一氏の入門としては絶対にお勧めしない本であり、既にファンであり、氏の色々な著作を読みたい人向けの本。このテーマ、この話を読み切らせる力量は流石と思うが、他の作品で見られるような爽快感は、ここでは全く見られない。

ジャックリーの乱 (wikipediaにリンク)
チョンピの乱 (wikipediaにリンク)
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