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「ちょうちょ地雷」/戦場外科医という仕事

 2006-01-18-10:00
ジーノ ストラダ, Gino Strada, 荒瀬 ゆみこ
ちょうちょ地雷―ある戦場外科医の回想
紀伊国屋書店

「ちょうちょ地雷」とは、空からやって来る、おもちゃのように見える地雷のこと。ちょうど、この表紙に描かれたように、空の下では子供たちが歓迎しているのかもしれない(売れる金属製品と間違われる地雷もある)。両脇に二枚の羽根がついた地雷の形状は、うまく飛ぶためのものであり、これでヘリコプターから投げ出されても、垂直には落ちずに、あちこち広い範囲へと舞っていく。この地雷は、繰り返し指でいじくり、羽根を押すと作動するのだという。拾った子供が家に持ち帰り、興味津々の友達に見せ、手から手へと回して遊び、そしてそこで爆発が起こる…。おもちゃ地雷は、こどもの手足を奪うために考案されたという。手足のない、目の見えない子供が増えれば増えるほど、人は打ちのめされ、損害を被り、屈辱感にさいなまれる。

この本の著者、ジーノ・ストラダは、現在に至るまで、戦場外科医として数々の紛争の場に居合わせた人物であり、また地雷や戦争による負傷者の治療とリハビリを行う、非政府人道組織「エマージェンシー」(本部ミラノ)を立ち上げた一人でもある。戦争外科医とは耳慣れない言葉だけれど、それは戦場で医療行為を行う医者のことで、紛争の場で自らや他のスタッフの身を危うくしつつも、そこには英雄的な悲壮感はない。

これは、たんなる仕事、いや、まずやりはじめなければならず、そうして、はじめて仕事になり、職業になっていく。戦場外科医は、消防士や警察官やパン屋のようなものだ。
仕事になり、職業になり、雇用が継続してこそ、尊厳も報酬も得られ、質の高い施術が可能になって、プロフェッショナルといえるのである。
戦場での外科医療は、冒険や即興の範疇には入らない。欲求や感動や寛容では足りない、有益でなければ、ほんとうに役に立たなければ意味はない。

著者は祖国イタリアに妻と娘を残す、父でもある。この本は、時系列、場所もバラバラな、スケッチのような44の短編で綴られている。記憶を頼りに、記憶が蘇るに任せたまま、書かれたこの本には、時に家族に対する責任を果たさないまま、遠く離れた戦場で働いているのが正しいことなのか、自らの身を危険地帯におくのは、単に自己実現のためなのか、その自問自答も書かれている。その仕事、行いはあまり「普通」とはいえないかもしれないけれど、その悩みはごく普通の人間のものである。

「戦場」外科医と言っても、ここに出てくる患者の殆どは兵士ではない。その殆どが子供、または老人である。彼らは泣き叫ぶこともなく、黙って痛みを耐え忍んでいる。

時系列、場所がバラバラなせいで、何だかふわふわとした印象を受けるのだけれど、この本の中に目を背けたくなるような描写も出てこないとはいえない。しかし、著者は「みせられる写真」について、こう語る。あまりにすさまじい映像は、ほんとうに感情を害したり、興奮や衝動的な反応を招きかねず、理解の可能性を損なう恐れもある。だから、ここには見せられない酷い惨い写真は出てこない。せめて、著者がここで表現した文は読まなければ、とも思う(基本的には、抑制された文章です)。

著者らが立ち上げた、エマージェンシーの人道援助は、当初から対人地雷による犠牲者の手当てとリハビリテーションを主眼とした。これはかつて、イタリアがこの爆破装置の主要製造国であったからだという。エマージェンシーはイタリアからこの種の武器を追放するよう働きかけ、1997年、政府は対人地雷の製造及び売買を禁止する法案を承認した。しかし、かつて67カ国にまき散らされた一億一千万個の爆破装置が、今も人々を傷つけているのだという。

章によっては注釈が付けられている。注釈を、以下にあげておく。
クルド紛争、ルワンダの内戦、アフガン難民、アフタニスタン内戦、エルビル陥落(エルビル:イラク領クルド人居住地区の都市)、ハラブジャの悲劇(ハラブジャ:イラク領内スレイマニア州のクルド人村落)、エチオピア内戦、アンゴラ内戦、カンボジア内戦、ジブチ内戦、ボスニア・ヘルチェゴヴィナ内戦、ペルー農民弾圧、ゴルラ空襲(ゴルラ:イタリア、ミラノ北部の住宅地)


*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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