「ライオンハート」/惹かれあう二つの魂の行方
魂は全てを凌駕する。時はつねに我々の内側にある。
命は未来の果実であり、過去への葦舟である。
エリザベスとエドワード。二人は時空を超えて、何度も何度も巡り合う。エドワードの女神、エリザベスは繰り返し彼のもとに現れるが、その出会いは一瞬のもの。
別れはいつも彼に甘美な痛みをもたらす。
一目あったその瞬間から喜びに満たされるが、会った瞬間からすぐに別離が始まっている恋。歓喜の瞬間が短いからこそ、共に過ごす時間が短いからこそ、完璧である恋。完璧な魂の結合。
あとがきにもあるけれど、これは恩田さん版メロドラマ。恋の純度という面では、佐藤賢一「王妃の離婚」 を思い出した。
一瞬だからこそ、美しく完璧である恋。「記憶」の章では、恋が結実したように見えるのだが、それについての言及はない。そして、その後も二人はまたすれ違い、巡り合う。
それぞれの章の始めに、カラーの絵がついているという面白い作り。正直、その背景にある歴史がこなれているか、というと、最近佐藤賢一氏などを読みつけているせいか、これには若干の難があるようにも感じる。ただ、惹かれあう魂は美しいし、恩田さんの登場人物独特の、外見の美しさも好きでした(黒い髪、黒い瞳を持ち、笑顔が大理石から切り出したよう、と形容されるエドワードなど、硬質な美しさ)。
← こちら、文庫です*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
にしても、恩田さんを読むときに、イギリス史の知識が必要になるとは思いもしませんでした。むかーし、むかしに見た、映画「エリザベス」を思い出しながら、読みました。ケイト・ブランシェットが美しく、毅然として良かったんですよね。愛らしい少女のときと、全然表情が違うのです。お相手役が、「恋におちたシェイクスピア」の人とおんなじで、確かこの二作はそう時間的な差がなく公開されたので、それだけはちょっと違和感あったんですよね〜。だって、そこにシェイクスピアがいるんですもん!(あんまり演技、役柄も変わらなかったし)
第一章「エアハート嬢の到着」における、アミリア・エアハートは、「アメリア・イアハート」のことなのかな(Wikipediaにリンク )。?彼女は、女性として始めての大西洋単独横断飛行などをしたが、1937年世界一周飛行の途中で南太平洋で行方不明となった、アメリカの女性飛行士。
あと、気になったのが、ヴァージン・クイーン、エリザベス一世の紋章。
右側に一角獣、左側に若い女。これ、実際の紋章なのかな。見てみたいです。
あとがきによると、この物語は、ロバート・ネイサンの「ジェニーの肖像」への個人的なオマージュであるとのこと。また、アイザック・アシモフの「世界の年表」(丸善)もオススメされています。なんでも、宇宙の誕生から第二次世界大戦終了までの歴史が、一冊で書かれているんだそうな。さすが、博学アシモフ!
?← でも、これ、すごい値段です・・・ 


