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「空中庭園」/砂上の楼閣

 2006-03-03-22:58
角田 光代
空中庭園

京橋家のモットーは秘密を作らないこと。全ては「ダンチ」のリビングの、蛍光灯のもとに晒される定め。姉のマナの初潮だって勿論そう(初潮晩餐会が催される!)、弟、コウの性の目覚めもそう。

わざわざ「秘密を作らないこと」をモットーに掲げるだけに、実は京橋家には沢山の秘密が存在する。一番の秘密は、このモットーを作った母、絵里子がひた隠しにしていること。絵里子は、夫、タカシには避妊の失敗により結婚したと思わせ、またマナたち子供には、ヤンキーだったから早くに結婚したのだ、と説明していたが、実はそれは両方とも真っ赤な嘘。自らの家庭に絶望していた絵里子は、早く自分の家庭を作り、育った家庭を捨てるために、虎視眈々とその機会を狙っていたのだ。彼女のバイト先に現れた、平凡な大学生タカシは、絶好のカモだったというわけ。 これはそんな京橋家を巡る人々が語る物語。

目次
ラブリー・ホーム
チョロQ
空中庭園
キルト
鍵つきドア
光の、闇の

ラブリー・ホームは娘のマナが、チョロQは父タカシが、空中庭園は母絵里子が、キルトは絵里子の母が、鍵つきドアはタカシの浮気相手ミーナが、光の、闇のは息子コウがそれぞれ語っている。

母、絵里子には「こうあるべき」という家庭の理想の姿があった。子供たちを真っ暗な家に帰らせたくはないし、ベランダに設けた庭園には、いつも花が咲いているべき。ところが、毎年花を咲かせるはずの植物すら、この「空中庭園」には根付かない。必死に明るい花を咲かせる絵里子であるが、その背中は他の家族から見ると、鬼気迫るもの。

絵里子は自分の生涯のある部分までを、なかったことにしたいと思って生きている。母にされた事の逆をすれば、良い子育てが出来ると信じている。絵里子の歴史の曖昧さを意識するからか、娘のマナも「自分が仕込まれた場所」を聞くし(それはなんと近所のラブホテル「野猿」!)、夫タカシもいつまでもフラフラしたまま実家の仕送りを受け続け、息子コウは同じ間取りでも全く違う顔を見せる家庭や建築に異常なまでの興味を示す。ここに出てくる大人は、タカシの浮気相手ミーナを含め、人生のある時点での過ちを、なかったことにしたいと思って生きている。しかしそれは正しいことなのか?

キルトで語られる絵里子の母の話を読めば、絵里子が信じ込んでいたほど、彼女の育った家庭が酷くはないことが分かる。絵里子の母は不器用だっただけ。懸命に生きていたが、それが娘の絵里子には全く伝わっていなかった。 ラスト、絵里子の母が倒れ、母の言葉から、また絵里子の兄の言葉から、これまで絵里子が信じていた母の像が毀れる。絵里子は、京橋家はここから、空中の、砂上の楼閣ではなく、しっかりと地に付いた家庭を作ることが出来るのだろうか。ここで、読者もまた空中に放り出される。絵里子の母の苦労、気持ちが、絵里子に伝わるといいな、と思う。

さて、色々な登場人物がいるこの物語だけれど、私が一番共感を持って読んだのは、弟コウの語る部分。確かに全く同じ間取りを持つ家においても、その家庭を反映してか、そこから受けるイメージは全く異なるものであることは多い。闇が尊い場所では闇の神社が、光が尊い場所では光の教会が存在する。そう考えると、闇と光は等価なのか? コウの感性には共感する部分が多かった。
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Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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