「スノーグース」/動物と人との関わり
「雪のひとひら 」と同じ作者と訳者のコンビによる、やはりとてもとてもピュアで美しい物語。
目次
スノーグース(白雁)
小さな奇蹟
ルドミーラ
表紙にもなっているスノーグースは、エセックスの海岸にある大沼に住む、せむしのラヤダーと、渡の白雁、痩せっぽちのサクソン人の少女、フリスの物語。ラヤダーは醜い外見に反して、非常に優しい男。フリスは非常に美しいけれど、痩せっぽちで薄汚れ、野生を強く感じさせる少女。
ラヤダーはあらゆる野生の生き物達の友であり、また野生の生き物達も友情を持ってラヤダーに応えてくれた。彼は囲い場に自分の鳥をもち、不具の手で巧みにヨットを操り、自分の住む田園とそこに住む生き物達をスケッチした。野性の生き物達との触れ合いを除けば、孤独な生活を送るラヤダーのもとに、ある日傷ついた白雁を連れて、少女フリスがやって来る。フリスはラヤダーの外見や、噂に怯えていたが、野生の鳥たちを世話する、彼の手の確かさを信じたのだ。
ラヤダーとフリサは、その白雁を「ロスト・プリンセス」、「迷子の王女さま」と名付け、世話をする。白雁は立派に回復し、ベニアシたちとともに、渡りを繰り返す。フリスとラヤダーが共に過ごすのは、この白雁「迷子の王女さま」がこの大沼にいる時期のみ。それ以外の時期は、ラヤダーはひとり、孤独を噛み締める。
そして、幾つかの年が過ぎ、一九四〇年、第二次大戦が始まる。その年の春、白雁はなぜかベニアシと共に渡ることをせず、ラヤダーの大沼に居ることを決めたようであった。フリスがこれまでラヤダーと共に居たのは、この白雁が居たときのみ。白雁はどこへも行かないと決めたようだが、さてフリスはどうするのか・・・。フリスは既に少女ではない。ラヤダーは自分の醜い容姿を思い、思いを打ち明けることが出来ない。フリスも何ともいえない恐れを感じるのだが・・・。
ある日、フリスが大沼を訪ねると、ラヤダーは愛用のヨットで今にも出航しようとする所であった。ラヤダーは六人しか乗れないこの小さなヨットで海峡を渡り、ダンケルクの砂浜でドイツ軍の砲火に釘付けになっている、イギリス兵を救うのだという。フリスに鳥たちの世話を頼み、海峡を渡ったラヤダーの小さなヨットは、見事ドイツ軍の砲火をかいくぐり、イギリス兵たちを救い出すが・・・。ラヤダーのヨットの周りには、真っ白な「でっけえ雁のやつ」が、飛んでいたという。
疎外された者同士でもある、ラヤダーとフリスの思いがうつくしい。
小さな奇蹟は、アシジの聖フランチェスコに祈りを捧げようとする、少年ペピーノと驢馬のヴィオレッタのお話。アシジの美しい町並みが目に見えるような、これまた美しい物語。
ルドミーラは、リヒテンシュタインの貧しい農家のものである、真摯に祈る小柄な牝牛の物語。
どの作品をとっても、色彩感覚といい、思いの美しさといい、文句なし。心が洗われるようでありますよ(でも、心がやさぐれてる時に読むのは、ちょっと辛いかもしれない。笑)。



