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「グラン・ヴァカンス 廃園の天使1」/永き、休暇

 2008-03-26-22:24
グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
(2006/09)
飛 浩隆

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そこは、夏の長いヴァカンスに相応しい、美しくクラシカルなリゾート地。南欧の小さな港町をイメージしてデザインされた、この<夏の区界>は、古めかしく不便な街で過ごす夏のヴァカンスを完璧に具現する。

デザインされた…。そう、この地は現実に存在するものではない。会員制の仮想空間<数値海岸(コスタ・デル・ルメロ)>に作られた<夏の区界>には、様々な肉付け、味付けをなされたAIたちが住み、現実社会からやって来るゲストたちをもてなしていた。現実社会からこの仮想空間にやって来るゲストたちは高価な対価を支払って、時に誰かの父として娘の誕生日を祝うロールを、誰かの妹のロールを、それぞれの好みに応じて選び、演じていた。

ところが、この仮想空間に大途絶(グランド・ダウン)と呼ばれる現象が起こる。ゲストたちがこの地を訪れなくなってしまったのだ。大量のリソースを使用するはずのこの<夏の区界>は、それでも何の影響も受けず、これまでと変わらず、千年もの長きにわたって、同じ日々を繰り返していたのだが…。

今日も従姉のジュリーとともに、鳴き砂の海岸で、硝視体(グラス・アイ)を探しに行こうと考えていた、少年ジュールの一日は一変する。<夏の区界>が突然の攻撃を受けたのだ。AIたちは、なすすべもなく、「飢え」を纏った蜘蛛たちに喰い尽くされていく…。

目次
第一章 不在の夏
第二章 斃す女、ふみとどまる男、東の入り江の実務家たち
第三章 鉱泉ホテル
第四章 金盞花、罠の機序、反撃
第五章 四人のランゴーニ、知的な会話、無人の廊下を歩く者
第六章 天使
第七章 手の甲、三面鏡、髪のオブジェクト
第八章 年代記、水硝子、くさび石
第九章 ふたりのお墓について
第十章 微在汀線
 ノート
 文庫版のためのノート
 解説/仲俣暁生
最近のちょっと低調だった読書を吹っ飛ばしてくれた、すっごい本です。

「ノート」より作者である飛さんの言葉を引きますと、

ただ、清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。飛にとってSFとはそのような文芸だからである。 

そう、この物語は、いっそ陶酔する程に、美しく、残酷。

読者は読み進むうちに、この<夏の区界>には、不必要なほどに性的な仄めかしがあることに気付くでしょう。これもまた、現実社会からやって来る「ゲスト」のための刺激的な味付け。彼らゲストは、この仮想空間に君臨し、AIたちに残酷な行為を強いていたのだ。

千年の長きにわたるゲストの不在や、いつしかこの区界に辿り着いた硝視体(グラス・アイ)の力によって、正しくチューニングされていたAIたちの性格は少しずつ狂いはじめていく。彼らはもう、ただの<AI>などとは呼べないほどに、実に人間らしく、いじらしい。

さて、<夏の区界>に住むジュールたちAIを攻撃してきたのは、一体誰なのか? 通常だったら、現実社会から?、と言いたいところだけれど、これはもっと複雑で、敵はそうではないのでした。こちら側の事情については、次作「ラギッド・ガール」で描かれているみたいです。

このAIたちの戦いは実にスリリングだし、その彼らAIたちの痛みを、安全なこちら側で読んでいるという、甘やかな背徳感すら感じてしまう。これ、解説が秀逸で、なんだかもう、「そうそう、そうなんだよー!」となって、自分の感想が書けなくなってしまう感じなんだけど、解説の仲俣暁生さんがおっしゃる通り、この本の中のゲストとAIたちの関係は、そのまま物語への侵入者である読者と、この物語の登場人物たちの関係だと言うことが出来るのだ。

滅びの様すら美しい、<夏の区界>。この物語を「記憶」することが出来て、良かったー!

次はこちらだ! ← 読みました(2008.4.2)。
「ラギッド・ガール 廃園の天使Ⅱ」/「グラン・ヴァカンス」前日譚など
ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
(2006/10)
飛 浩隆

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SF
コメント
こんばんは!

何か面白そうな和製SFがないかなと思い
探していたところに、運よく出会うことができた1冊です。
本当に美しくて残酷な内容でしたね~

敵の正体は現実世界のAI作成者だろうとか思って読んでいたところ
一筋縄ではいかない展開のようで、続編も楽しみです。
【2009/04/01 23:53】 | ANDRE #qx6UTKxA | [edit]
ANDREさん、こんばんは!

トラバ返しありがとうございます♪

美しくて残酷で、ほんとうっとりーな一冊でした。
良かったですよねえ。

続編はまだ文庫化されてないんですよね。
でも、こちらも良かったですよ!ぜひぜひ。

和製SFといえば、大分前に話題になってた、「マルドゥック・スクランブル」も面白かったです。
(ただし、「マルドゥック・スクランブル」だけだとそんなに凄いとは思わなくて、そのあと「マルドゥック・ヴェロシティ」を読む必要がありますが)
こちらは、色々なものを削ぎ落としたソリッドさに惹かれました。
【2009/04/02 22:07】 | つな@管理人 #- | [edit]












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  • 「グラン・ヴァカンス」 飛浩隆【Andre\'s Review】
    グラン・ヴァカンス廃園の天使? 飛浩隆 ハヤカワ文庫 2006.9.(original 2002) 久々に和製SFを何か読んでみたいなと思い手に取った1冊。 物語の舞台は、仮想リゾート内にある「夏の区界」。ここでは南欧の夏休みをテーマに、AIたちがそれぞれに与えられた役割を演じ
【2009/04/01 23:54】
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つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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