スポンサーサイト

 -----------:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
カテゴリ :スポンサー広告 トラックバック(-) コメント(-)

「となり町戦争」/戦争のリアル、生のリアル

 2006-06-16-22:22
三崎 亜記
となり町戦争

主人公の「僕」は、町の広報誌、[広報まいさか]により、自分の住む町がとなり町と戦争を始めたことを知る。「僕」にとってこの町は、ただ寝に帰る所。特に愛着があるわけではないが、となり町を経由して通勤する都合上、この「戦争」が一体どんなものなのか、自分にどんな影響があるのか、「僕」は不安を覚える。戦争が始まっても、「僕」の目に見える範囲では、何かが起こっている気配はないのだが・・・。

目次
第1章 となり町との戦争がはじまる
第2章 偵察業務
第3章 分室での業務
第4章 査察
第5章 戦争の終わり
終章

「僕」の変わらぬ日常に変化が訪れる。となり町を経由して通勤しているため、舞阪の役場から偵察業務を命ぜられたのだ。「僕」は自分のレポートがどんな事に使われるのか、どんな影響を及ぼすのか、理解が出来ないままに、偵察業務をこなす。「偵察」業務についたとはいえ、「僕」にはやはり戦争の様子をかけらも見る事が出来ない。

しかし、戦局は進む。[広報まいさか]には戦死者の数が載せられ、「僕」は更に一歩進んだ分室での業務を命ぜられる。役場の女性、香西さんと偽装結婚をし、となり町に住む事になった「僕」。料理、掃除などの[業務分担表]を作成し、香西さんとの共同生活が始まる。

役場で戦争の事務的手続きを担う香西さんには、戦争の姿が見えているようであるが、ここに至っても「僕」にはやはり戦争の姿は見えない。それは、戦争となる地区への「地元説明会」に出席しても同じ事。「現代の戦争」は事務的に進む。事前に戦闘の実施時間や予定地区、戦時負担金の納入や建物等に損害が出た場合の補償などについて、「住民の皆さん」にきっちり説明しなくてはならないのだ。

しかし、とうとう、「僕」の近くにも戦争がやって来る。彼らの「分室」に、となり町の査察が入るとの情報が入ったのだ。「僕」は香西さんの指示で、となり町から脱出を図る。

「あなたはこの戦争の姿が見えないと言っていましたね。もちろん見えないものを見ることはできません。しかし、感じることはできます。どうぞ、戦争の音を、光を、気配を、感じ取ってください」

辛くも難を逃れた「僕」であるが、それはやはり実感を伴うものではなかった。

そして、戦争は終わる。「僕」の住む町ととなり町は、互いの栄誉を讃えあう。曰く、互いの協力により、この「戦争事業」を上手く進めることが出来た。曰く、この戦争により地域事業の振興が出来た・・・。しかしながら、この戦争には死者が出ている。それは、「僕」や香西さんの身近な人であった。

この戦争により「僕」が失ったのは、香西さんへの淡い恋。身体には触れることが出来たけれど、彼女の心の奥にまで触れることが出来たのは、最後の場面だけだったんじゃないのかなぁ。香西さんは、この戦争後、となり町の町長の息子と、正式な結婚をするのだという。そう、役場の人間の中では、戦争は決して終わっていないのだ。

「戦争」への視点は三つ。何が起こっているか分からない「僕」、起こっている事を把握している香西さん、かつて戦争が日常であった「主任」。「主任」は、「僕」の勤める会社の変り種。ある小国の内戦を経験して、大恋愛の末、作った家庭を失い、奇襲攻撃を得意とする部隊に所属したのだという・・・。

何が起こっているか分かっているけれど、何のためにこの戦争をするのか。その視点がすっぱり抜け落ちている、香西さんをはじめとする役場の人々。ある場所から見れば、殺すのも殺さないのもまったく一緒だという「主任」。彼に言わせれば、殺すということは、相手から奪うことではなく、相手に与えることなのだという。

香西さんは、この戦争後も、「次の戦争」を意識して生活していくのだろう。「主任」は痛みに麻痺し、既に「あちら側」へ渡ってしまって、平凡な日常へ戻ることは出来ないだろう。戦争のリアルからは、一番遠かった「僕」のみが、変わらぬ日常、生のリアルさを感じて、生きていくことが出来るのだろうか。

淡々と静かに進む物語。読む人それぞれで、読み取ることは違うんじゃないかなぁ、と思った。私は戦争のリアルからも、生のリアルからも遠かった、主人公の「僕」が、戦争による個人的な痛みにより、生のリアルを感じ取れるようになったと感じた(全然、違ってるかもしれないけどね)。

勿論、近い将来、地方自治、地方分権が進んだ社会で、あるかもしれない一つの形として、この「戦争」を見ることも出来る。そう考えると、かなり怖い。

何が起こっているか分からない「僕」の視点で語られるためか、読み終わった後も、何だかもやもやが残った。

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
コメント












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:
http://tsuna11.blog70.fc2.com/tb.php/491-e7164ba5
≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫
プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

掲示板その他リンク

ユーザータグ
最近の記事
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

RSSフィード
カウンター

月別アーカイブ
検索エンジン情報
Googleボットチェッカー Yahoo!ボットチェッカー MSNボットチェッカー

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。