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「ねじの回転」/歴史上のIF

 2006-07-09-18:49
オンライン書店ビーケーワン:ねじの回転
恩田 陸
ねじの回転―FEBRUARY MOMENT

価値というのは相対的なものだってことさ。周囲の状況いかんでモノの価値は変わる。たった一つの条件が変わっただけで、思いもよらぬ価値を持つものがあるっていうことだ。
え? もっと具体的に?
そうだな。じゃあ、こんな話はどうだろう。
むかしむかしあるところの、ある四日間の話だ・・・・・・

これは二・二六事件の話。とはいえ、単純なその時代の話ではない。
人類が時間遡行の技術を手に入れた時代の話。

時間遡行の技術を手に入れた人類は、史実に残る悲惨な出来事を回避しようと、歴史への介入を決定し、「聖なる暗殺」を行った。しかしながら、「歴史は自己を修復する」。一つの災いを防いでも、また新たな災いが人類を襲い、一つのホロコーストを防ぐ事が、百のホロコーストを引き起こす結果となった。それはまた、激しい老化を伴う原因不明の病、HIDS(歴史性免疫不全症候群:Historical Immune Deficiency Syndrome)が蔓延する原因ともなった。「やり直し」の未来においては、1990年代後半には既に、人類は文明を維持できるだけの人口すらも、確保出来なくなってしまったのだという。

ここへ来て、国連は時間と歴史を再生するという、世界規模のプロジェクトを始めた。介入点と定められた事象が起こった時代に行き、史実を読み込ませたコンピューター「シンデレラの靴」を使って、その事件を「確定」し直す事で、「やり直し」の未来を修復しようというのだ。二・二六事件が、第二次大戦における日本の転換点と見なされ、国連スタッフが見守る中、懐中連絡機・ピリオドを持たされた、その時代の人間達が二・二六事件をやり直す。史実と違う出来事は許されない。万一、史実と違う出来事が起こった場合は、「シンデレラの靴」が不一致を宣告し、前回の確定時点までリセットされてしまうのだ。二・二六事件は、このプロジェクトの最後の事象。「正規残存時間」なる確定までに残された時間も残り少ない中、国連スタッフやピリオドを持たされた陸軍青年将校たちの苦闘が始まる。

ハッカーによる「シンデレラの靴」の中の史実の書き換え、人の生死の齟齬、この時代の人間への猫からのHIDSの爆発的感染、ピリオドを持った栗原による国連スタッフの襲撃、起こるはずの無かった陸軍と海軍との衝突、これまで決して行われなかった「シンデレラの靴」の強制終了、どちら側の時間をも巻き込んで、事態は悪化の一途を辿る。さあ、一体どうなってしまうのか?

何が正しくて、何が間違いなのかなんて、人間には判断できない。この本を読んで、安藤、栗原、石原など、この時代の二・二六事件の登場人物たちの、迷い、意思、行動も印象深かったけれど、一番印象に残ったのは、「好奇心は人類に与えられた最強のギフトだからね」という、国連スタッフ・アルベルトの台詞と、一人、隠れん坊をする事になった同じく国連スタッフのマツモトのこと。

二・二六事件と時間旅行者を絡めた話といえば、もう一点、宮部みゆきの「蒲生邸事件」がある。こちらの話はすごく乱暴にまとめると、「まがいものの神」であった一人の時間旅行者が、普通の人間として生き抜いていくという話。宮部さんの本は、基本的に人情話であり、そこには常に善悪の判断がある。善に向かって歩む純粋な少年と、経験のある老人コンビが活躍する事が多いのも、きっとそういうこと。

一方の恩田さんは善悪を超えた話を作る。どちらがいいとか悪いとかではないけれど、「善悪の判断」という一つの価値基準が入る分だけ、宮部さんの話は囚われている部分があるように思う。恩田さんは善悪に囚われず、人間の色々な関係性をそれこそ「好奇心」でもって、描き出しているような感じがする。

前半、凄く引き込まれるのだけれど、後半少々尻すぼみな点、SF、ファンタジーの作りが甘いと指摘される点など、恩田さんと宮部さんには共通点があるように思うけど、その点はちょっと違うなぁ、と思うのであった。珍しく、こんなことを書いていますが、ペトロニウスさんの「ブレイブ・ストーリー」における宮部みゆき論を読んでいたら、つらつらこんなことを考えてしまいました・・・。

 ◆ペトロニウスさんの記事はこちら
  →『ブレイブストーリー』 宮部みゆき著(再掲) ?

ちなみに、この「ブレイブ・ストーリー」は、異世界のあまりのリアリティーのなさが、私はちょっとダメでした。わざとなのかもしれませんが、現実世界とのあまりの濃淡の差に、ちょっとついていけなかった・・・。

さて、ねじの回転」というと、私は読んだことがないのですが、ヘンリー・ジェイムズの同名タイトル(おお!南條さんの訳だ!)の幽霊譚が有名なのですね。かなりの量の読書をなさっている恩田さん。このタイトルも無関係ではないのかな。恩田さんの本って、語りが上手いので浅くも楽しめるけど、実はこういうところを追っていくと、もっと楽しめるのかもしれません。ま、本筋ではないだろうし、少々、オタク的楽しみではあると思うけど・・・。

ヘンリー・ジェイムズ, 南條 竹則, 坂本 あおい
ねじの回転 -心霊小説傑作選-

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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