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「食べられるシマウマの正義 食べるライオンの正義」/アフリカの動物達

竹田津 実
「食べられるシマウマの正義 食べるライオンの正義―森の獣医さんのアフリカ日記 」?
目次
アフリカ―夢の続き
カバの王国
焼魚定食
交尾の丘
オカピと森の民
――コラム――
ゾウに乗る夢
キリンの心臓
進化するサル
鳥の気持ち
―――――――
死ぬために旅するのか、ヌー
ミリオンのフラミンゴ
至福のサファリ
マサイの魂
よそ見する私
“弱肉強食”ではない!
あとがき
製鉄所の溶鉱炉つきの分析室での務めで身体を壊し、退職した著者は、「夢の続き」で獣医師になったのだそう。退職後、「何がしたいのか」を考えた時、からっぽだった心の中に、少年の時の夢であった「少年王者」が浮かんだのだ。
これは、そんな夢の続きのアフリカ通いを記した本。
とにかく写真がいい!とろりと白い霧に沈んだ夜の青いアフリカ。ミドリの地平線に、ごんごん流れる雲が、真っ青な空に映える一枚。ゾウのアップ、キバシウシツツキを乗せたバッファローのアップ。木の上で昼寝するヒョウ・・・。
このちょっと不思議なタイトル「食べられる~」の由来については、最終章の「“弱肉強食”ではない!」に詳しい。人はライオンの狩りの様子などを見ると、とかくしたり顔で、野生動物の世界は“弱肉強食”だから、などと言いがちである。でも、著者はこの言葉が嫌いで、本当にそうなのか?というお話。
保全区や保護区、またナショナルパークであっても、野生動物と人間、それに家畜との接点はいくらでもあり、家畜に流行病が発生すれば、共通の感受性を持つ野生動物であれば発病、流行してもおかしくはない。しかし、野生動物たちの中には、流行性の重篤な疾患がほとんど見られない。これはなぜなのか?
一般に伝染力の強い重篤な病気であっても、感染直後ではその固体は伝染能力を持たない。一定期間の潜伏期を経て発病し、発病する事で初めて病原菌は外に飛び出す。発病前に殺され、食べられたら病気はその固体だけで終わり、いかなる病原体であっても、流行することはない。
早く食べられるべきそんな固体たちが、美味しそうにみせたり、美味である事を主張し、先に食べられるのではないか、と著者は推測する。狩りをする者たちは、狩られる側の表現に応えているに過ぎない。野生動物の中にそんなシステムがあるのではないか、と著者は考える。
文中にもあったのだけれど、多分、そんな考えを元に、友人である、あべ弘士さんと一緒に作ったのが、下の絵本。

竹田津 実, あべ 弘士
どうぶつさいばん ライオンのしごと
ここに書かれた野生動物の世界の仕組みにふむふむと思いつつ(専門的な事は分からないけれど、とにかく重篤な伝染病が流行らないというだけでも、何らかの上手いシステムが作動している感じがする)、とにかく写真をパラパラめくるだけでも、楽しい本。