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「喪失の響き」/喪失が織り成す様々な響き

 2008-05-21-23:29
喪失の響き(ハヤカワepiブック・プラネット) (ハヤカワepi ブック・プラネット)喪失の響き(ハヤカワepiブック・プラネット) (ハヤカワepi ブック・プラネット)
(2008/03/26)
キラン・デサイ

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amazonの内容紹介から引くと、あらすじは

少女サイは、インド人初の宇宙飛行士を目指していた父を母と共に交通事故で亡くすと、母方の祖父である偏屈な老判事に引き取られた。老判事はすでに引退し、ヒマラヤ山脈の麓の古屋敷に隠居していたが、孫娘の出現は判事と召使いの料理人、そして近所の老人たちの慰めとなるのだった。やがてサイは、家庭教師のネパール系の青年ギヤンと恋仲になる。急速に親密になっていくふたりだが、ネパール系住民の自治独立運動が高まるにつれ、その恋には暗雲がたちこめる――。

とのことなんですが、確かにそうなんだけど、そうなんだけど。これはある意味、あらすじはどうでもいい物語というか…。

混沌としたインドそのままに、時に悲劇的な、コミカルな、新しい、古い喪失が互いに響き合う。「停電の夜に」、「その名にちなんで」で、ジュンパ・ラヒリが描き出したインドとは、違う姿がここにはある。ジュンパ・ラヒリが描き出した人々は、ここでは成功者として、彼らの周囲を通り過ぎる通行人にしか過ぎない。

インドの中での持てる人々である、老判事、サイ、サイたちの隣人ノニ、ローラ姉妹、ブーティ神父、ポティおじさん。持たざる人々である料理人、サイの家庭教師ギヤン。アメリカに渡った料理人の息子ビジュ、イギリスに渡った若き日の老判事、ジェムバイ…。

愛を育むには長い時がかかるのに、喪失は瞬きする間にも起こりうる。ゴルカ民族解放戦線(GNLF)の活動は、それまでうまくいっていた人々の格差を炙り出し、それぞれを敵対させる。アメリカに渡ったビジュは、不法移民として、彼や彼の父親が夢見た成功とは遠い所にいる。イギリスに留学した、若き日の判事、ジェムバイは、その臆病さゆえに、自分の人生から愛を閉め出す。閉め出されたのは、彼の妻、ニミもまた…。

キラン・デサイの筆は奔放。サイたちの住む、ヒマラヤ山脈の麓の古い屋敷、チョーオユーは時に快適な場所として、時に湿気やシロアリにより崩れゆく場所として描かれる。壁に、引き出しの中に、本棚の本の頁に、あらゆる場所に顔を出す様々な黴の描写は美しくさえある。カンチェンジュンガ(Wikipediaにリンク)の麓の長閑な美しさも印象的。

様々な救い難い喪失が描かれるというのに、読み終えたときの感覚は何だか甘やか。料理人が語る内に真実だと思い込む、空想の中の出来事のように、悲劇的なことが描かれていても、薄皮が一枚かかっているよう。料理人の盲目的な愛は、貧しい人に特有のものであるとしても、時に救い。

ラストのシーンもね、いいのです。結局、そこには喪失はなく、最初にあったものが、そのまま戻ってきたとも言えるのかな。インドと言えば、ダウリー(持参金)問題の国でもある。当初、そこには愛があったのに、判事のねじ曲がった考えが、彼の妻を悲惨な境遇に貶める。宗主国と植民地。捻じれたプライドが悲劇を生む。混沌とした世の中で、人はあまりにも弱い存在だけれど…。それでも…。料理人父子や、サイには、同じ過ちを繰り返して欲しくはない、と思う。
コメント
最近、インドに興味ある私の目を引くご紹介記事です。
あの社会での、様々な階層の様々な人々の、様々な視点や暮らしを描写した物語なのでしょうか。
奔放な筆っていうのも、とっても気になります。
【2008/05/22 08:33】 | 有閑マダム #.UUnsg0g | [edit]
有閑マダムさん、こんばんは。
マダムさんは、ジュンパ・ラヒリは読まれてましたっけ?
あちらが割とするすると読めて自分にも理解し易いのに比べると(インドなんだけど、西欧的というか理性的な面が強いように思います)、こちらはかなり混沌としているなぁ、と思います。
この本では、アメリカで漂流するように生きる、料理人の息子、ビジュが印象的でした。
そうですねえ、何人かの視点で物語が語られるので、ぽんぽんと飛ぶあたりも、奔放という印象を受けました。
いやー、この本、よかったんですけど、すべてくみ取れたとは思えないので、実際他の方の感想もお聞きしたかったんですよ。笑
ぜひ、マダムさんの感想もお聞きしたいです! 機会があったら、よろしくお願い致します~。
【2008/05/24 01:43】 | つな@管理人 #- | [edit]
つなさん、こんにちはー。
ほんと奔放という言葉がぴったりでしたね。
同じくキラン・デサイの「グアヴァ園は大騒ぎ」も奔放なんです。
ある意味、これ以上かと…
もうあらすじとか感想が書きにくいったら、ありゃしません。
昨日一応感想をアップしたんですけど、そこで力尽きました。
感想まで奔放になってしまって、もうなかなかまとまってくれないったら。(笑)

ジュンパ・ラヒリとはまた違うインドですね。
同じ時代に同じ国に住んでる(住んでた)人たちだとは思えないぐらい。
最近、英語で作品書くアジア系作家さんたちが気になりますが
やっぱりそういう人たちは一部のエリートなんだなと
そんなことを強く感じてます…

や、キラン・デサイだってれっきとしたエリートのはずなんですけど
この方に関してはあまり感じないのが逆に不思議だったりしますね。(笑)
【2009/03/15 07:42】 | 四季 #Mo0CQuQg | [edit]
四季さん、こんばんは。
おっと、四季さんも「奔放」と感じられました?
そうなんですよねー、ほんと、感想が書きにくくって!笑
ああ、「グアヴァ園は大騒ぎ」も読まなくっちゃ。
私も昨日は、お、四季さん、更新されてる!と思ったんだけど、四季さんの方からトラバ頂いちゃいましたね。笑

やっぱり、ジュンパ・ラヒリとはまた違いますよねえ。
そうですねえ、英語で書くというのは、一部エリートなんでしょうねえ。

そして、でも、そうなんですよね。
キラン・デサイだって絶対エリートですよねえ。笑
不思議ですね。
【2009/03/15 22:33】 | つな@管理人 #- | [edit]












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【2009/03/15 07:37】
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つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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