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「風流冷飯伝」/風見藩が冷飯ども

 2006-12-17-00:19
米村 圭伍
風流冷飯伝

目次
その一  桜道なぜ魚屋(ぼてふり)に 嗤われる
      冷飯の逃げ足冴える時分どき
その二  あれもうもうたまりませんと娘連
      どうもそう見られていては食えやせん
その三  のどかさや凧をあやつる怪物(おじょも)かな
  
    しびれさせ峯紫は跡白波
その四  眉に唾たいこ狐に化かされて
      藻屑蟹に勝負をいどむ一角獣(うにこうる)
その五  短さが哀れを誘うお行列
      手毬唄つまらぬ殿は雪隠に
その六  通えどもつれない素振りの小町さん
      もてあます葛篭の底の春画本
その七  解けました源内作の手毬唄
      大暴れ冷飯どもが夢の跡
その八  駒が舞う不成(ならず)の妙手剣四郎
      詰将棋はたして詰むや詰まざるや
その九  あれごらん凧のおじちゃん右回り
      晴れ舞台降るは喝采花の雨
その十  友がため振るう天賦の舌三寸
      入婿の閨を怖がる情けなさ
その十一 嫂の剃刀を研ぐ怖い顔
      締められて蛤に泣く俄か医者
その十二 へぼ将棋待った反則咲き乱れ
      剣四郎とどめの一手地獄落ち
その十三 鹿島立ち姉の手蹟を懐に
      だるまさん田沼転んで都詰め
その十四 別杯に乙な合いの手波の音
      帰りなん薫風に袖なびかせて

退屈姫君伝 」で風見藩を探りに行ったまま、行方不明となっていた、お仙の兄、一八。?
彼は一体何をやっていたのかといいますると、そう、実はこんな事をやっていたのです。
という、「退屈姫君伝」とは表裏をなすような物語。

幕府隠密の手先となって、風見藩に潜入した一八は、そこで冷飯食いの数馬と出会う。江戸の幇間に化けた一八。早速、武家である数馬にたかろうとするが、小藩である風見藩の冷飯食いであるからして、数馬には当然金などない。しかししかし、一八は一銭の金にもならないと知りながら、この「見るが極楽」でどことなくとぼけた冷飯、数馬の友となるのだった。そして、隠密の手先でありながら、随分と風見藩に肩入れして、この小藩の行く末に気をもむ事になる。この辺は、めだか姫に肩入れするお仙と一緒。流石兄妹ともいえるのかなー。

先々代の藩主が定めたという、奇妙なしきたりが数多く存在する風見藩。そして、そこでつましく暮らす冷飯ども。最初は奇妙なしきたりを律儀に守るちょっとヘンな奴ら、無為の時を過ごす冷飯どもと、この小藩に住む人々を冷笑していた一八だったけれど・・・。

風見藩は、「武家が武家たる誇りと慎みを忘れ、金が全てを支配する世の中になってみよ、それで万民が幸せになると思うか」なんていう正論をきっちり吐く男がいる藩であり、遊び心を十分に持つ心豊かな藩であった。一八でなくとも、風見藩の人々には心惹かれてしまうよな。

さて、このシリーズでちょっと面白いのは、何かと悪評ふんぷんの、第十代将軍家治が、単なる趣味人ではなく、なかなかの大人物に描かれている事。ほんのぽっちりしか登場しないのだけど、ちょっと気になる存在なんだ。あ、で、彼が重用した田沼意次は、通説どおりというか、きっちり悪い感じに描かれてるけど。笑

もう一つ付け加えるとすれば、性に関する大らかな記述もこのシリーズの特長かなぁ。「退屈姫君伝」でもそういう描写は出てきたけれど、こちらの「冷飯伝」に出てくるのは、江戸前の男を何よりの好物とする、飯盛女おふく。何も知らずに寝ている男性はご用心。おふくの餌食となってしまうのだ!(それは、ほとんど悪夢のようなもの、であるらしい) でも、実はこんな設定も後できっちり意味が出てくるんだよね。「退屈姫君伝」も「風流冷飯伝」のどちらも、女性優位だなー、とも思うけど。笑 いや、働く女性の強さなのかなー。

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