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「うそうそ」/若だんな、箱根で湯治・・・・のはずが?
- 畠中 恵
- 「うそうそ 」
「しゃばけ」シリーズ、第五弾。此度、わたくし、図書館で本を借りる悲哀というか、予約システムの悲哀を思い知りましたよ。「しゃばけ 」、「ぬしさまへ 」と、シリーズのはじめの二冊は読んでいたものの、間が抜けたまま、この「うそうそ」が私の手元に来ちゃったのです。間を買おうか迷ったのですが、そのまま、えいやで読んじまいました。
そのせいかどうか、今回はちょっと楽しめなかった・・・。表紙絵は相変わらずの可愛らしさなんですが・・・。珍しくも、少々辛口で行きます。
ある夜、若だんなは揺れとと共に不思議な声を聴く。その声は複数であり、若だんなが邪魔であることを告げる怪しい声、若だんなが死んでしまうと心配する声、若だんなが持っているはずの物を狙う声、そしてお終いには悲しそうな女の子の泣き声・・・。これらの声は一体何を意味しているのか?
さて、江戸ではその後も地震が頻発し、一太郎は籠がぶつかって、軽いとはいえ怪我をする。若だんなの身を心配した母は、稲荷神のご神託もあって、一太郎の湯治を発案する。庭の稲荷神様が言う事には、ゆっくり湯に浸かって養生したら、若だんなも人並みに丈夫になれるかもしれないというのだ。
ところが、この旅は最初から波乱含み。店の横の堀から船に乗って、薬種問屋・長崎屋所蔵の常盤丸に乗り換え、小田原までは海路を行き、後は箱根まで駕籠で行く。たったこれだけのはずだったのに、若だんなの傍を離れた事のない二人の兄やたち、仁吉、佐助が逃げる場所もない海の上、常盤丸の中から忽然と姿を消す。若だんなは兄の松之助と共に、旅を続け、目的地である塔ノ沢の一の湯へと何とか辿り着くのであるが・・・・。
そこで待っていたのは、ゆったりと過ごせる湯治三昧の日々などではなく、手始めに、宿から侍達に攫われた若だんなと松之助の二人は、次には天狗の襲撃を受ける。一体なぜ? そして、突然現れた佐助は、一体何をしていたのか?
ところで、箱根の芦ノ湖には龍神が、神山には父神がいるのだという。かつて、人々は龍神の怒りをおさえるために、芦ノ湖に生け贄を捧げた。そしてある年、人々は身寄りのない、神と人の女との間に生まれた娘を生け贄にした。その行いは、当然、神の怒りに触れ、山は凄まじい勢いで噴火し、芦ノ湖の半分を埋めたのだという。
助けられた姫神の思い、姫神の御守である天狗の思い、若だんなの丈夫になりたいという願い、箱根の雲助、新龍の秘密、新龍のかつての同僚、勝之進、孫右衛門の思い・・・。それぞれが「うそうそと」入り乱れる。
沢山の登場人物がいて、みな其々の思いがあるのだけれど、それらが随分と散漫な印象を受ける。また、ずーっと引っ張る一つのメインの悩みには、どうも共感が出来ない。「しゃばけシリーズ」のいいところの一つは、のほほんと明るい雰囲気に、前向きな姿勢だと思うんだけれど、このメインの悩みのせいで、その辺りが薄れているように思う。ああ、しかし、この後も、彼女、メインのキャラになっちゃうんですかね・・・・。今後は彼女も進歩していることを願います。
ところで、塔ノ沢には実際、「一の湯」があるんですが、あそこってそんな昔からあるもんなんでしょうか・・・。