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「火星の人類学者」/ダイナミックで複雑な脳というもの、わたしたちの世界

 2007-01-31-23:09
オリヴァー サックス, Oliver Sacks, 吉田 利子
火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者

目次
 謝辞
はじめに
色覚異常の画家
最後のヒッピー
トゥレット症候群の外科医
「見えて」いても「見えない」
夢の風景
神童たち
火星の人類学者
 訳者あとがき

ここに描き出されるのは、七人の「特殊」な世界に生きる人々。

事故により色を失ってしまった画家、脳腫瘍により1960年以降を生きる事が出来ない青年、衝動的行為という障害を持つ外科医、見えない世界から突如見える世界へと連れ出された青年、過去の記憶に傅く画家、高い芸術力を有する自閉症の少年、そして最後がいま一人の優れた自閉症の女性。

自己や世界の認識の仕方について考えさせられる。

豊穣な色の世界に生きてきた画家が、放り込まれたのは、全てが色褪せたダークグレイに見える世界。自らが生きる新しい世界に絶望した彼であったが、ある日、まるで爆弾のように太陽が昇る、力強い日の出の様を見て変わる。白と黒の絵ならば描ける。むしろ、白と黒の世界に生きる自分だからこそ、描けるものがある(色覚異常の画家)。

始終、身体を捩ったり、奇妙なふざけた動作をせずにはいられない、トゥレット症候群。安定した細かい正確な作業が必要とされる外科医などは、問題外の職業だと思われるのだが・・・。ベネット博士は、重度の患者でありながら、実に優秀な外科医であった。彼がいうには、トゥレット症候群は、誰もが抑制している、知らずに持っているような原始的な本能を『呼び覚ます』(トゥレット症候群の外科医)。

見えない世界から、見える世界へ。「見え」さえすれば、世界が変わるかと思われたが、それまで彼が作り上げてきた「見えない」世界はとても強固なものであった。「見る」ことにも経験が必要であり、「見えて」いることと、「分かる」こととは別であり、時間の流れに従って触覚で認識する、「見えない」世界からの移行は非常に困難なものであった。触覚、聴覚、嗅覚の印象の連続によって世界を作り上げる彼らには、同時的な視覚認識が難しく、大きさや距離感が分からないのだ。そして、この彼、ヴァージルにはまた数奇な運命が待っていた(「見えて」いても「見えない」)。

一人の少年の事を書きながらも、タイトルは神童「たち」。スティーヴンは、一つには彼が持っていた芸術的才能のおかげ、また一つには彼を熱心に支援する人たちのおかげで、自閉症児たちの幸運な例外となった。芸術的才能を持つというだけでは十分ではなく、認められず支援されない、同じ才能を持つ自閉症の人々も少なくはないのだ。それらの人々は、スティーヴンに与えられたような、変化や刺激もないままに、ただ埋もれていく・・・(神童たち)。

テンプル・グランディンは、自閉症にもかかわらず、動物学で博士号を取り、コロラド州立大学で教え、事業を経営している。彼女は如何にして、破壊的で暴力的だった子供時代を通り抜け、優秀な生物学者であり、技術者である今の姿を獲得したのか。人の微妙な感情やニュアンスが分からないという彼女は、何年もかけて膨大な経験のライブラリーを構築したのだという。彼女はまるで「火星の人類学者」のように、人という種について学ぶのだ。
理知的に理解出来ること以外は理解出来ない彼女は、自分が普通の意味での対人関係を獲得する事が出来ないと諦めて(というか、理解して?)いるが、そんな彼女の作った「抱っこ機」は何だか切ない。小さい頃、抱きしめて貰いたくてたまらなかったけれど、同時に、彼女にとって人との接触は自分が呑み込まれてしまうような恐怖でもあった。「抱っこ機」は幼い頃に彼女が夢見た、力強く、優しく抱きしめてくれる魔法の機械を実現したもの。家畜の気持ちを誰より理解し、家畜の痛みや不安について誰より心を砕き、抱っこ機で安らぐ彼女は、とっても魅力的なのだけれど・・・(火星の人類学者) 。

自分が当たり前に見て、みな共通だと思っている世界とて、実は曖昧であやふやのものにしか過ぎず、ほんの少し何かが損なわれるだけで、違った世界に放り込まれてしまうのかもしれない。そもそも「正常な」人間だって、みな同じように世界を構築しているとは限らない。しかしながら、違った世界に居てもなお、そこで適応していく力が、与えられている場合もある。「違った」認識だからこそ、優れた業績を残せることもあるのだ。それは幸運な例に過ぎないのかもしれないけれど・・・。

脳神経科医が記す本書。一人の患者について話しつつも、時に誰々の場合も同じだった、などというフレーズが入ったり、専門的な記述もあるけれど、基本的には一人一人に出来うる限り、寄り添ったものであると思われる。特に「火星の人類学者」におけるテンプル・グランディンには、著者自身も強い感銘を受けたのではないのかなぁ。

 ← 文庫も。

テンプル グランディン, マーガレット・M. スカリアーノ, Temple Grandin, Margaret M. Scariano, カニングハム 久子
我、自閉症に生まれて
テンプル グランディン, キャサリン ジョンソン, Temple Grandin, Catherine Johnson, 中尾 ゆかり
動物感覚―アニマル・マインドを読み解く
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