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「損料屋喜八郎始末控え」/江戸の男は仁義にゃ篤い

 2007-02-18-17:55
山本 一力
損料屋喜八郎始末控え

夏の蚊帳、冬場の炬燵から鍋、釜、布団までをも賃貸しするのが、「損料屋」の商い。つまり、所帯道具にも事欠く連中相手の小商いということで、年寄りの生業というのが通り相場。ところが、喜八郎は年の頃は二十八とまだ年若く、眼にも掠れ声にも力がある。

実は喜八郎は武士の出身であり、かつて一代限りの末席同心を務め、与力の秋山の祐筆まで務めた男。詰め腹を切らされる形で同心職を失ったけれど、そこを助けたのが札差を営む米屋の先代。喜八郎は米屋が仲町に調えた損料屋の主となった。

さて、生活に汲々とする御家人達に、米を担保に金を貸し出すのが札差の仕事。先代は、両替相場や米相場の動きにも明るかったけれど、二代目は胆力、器量共に、札差には不向きな男であった。先代・米屋のたった一つの喜八郎への願いは、店を畳む事になったら二代目を助けて欲しいという事。金では返しきれぬ恩を受けたと感じた喜八郎は、先代にいつか報いる事が出来るように、配下の者たちを育て、米屋の周りにそれとなく置く・・・。

目次
万両駕籠
騙り御前
いわし祝言
吹かずとも

物語は、この米屋の二代目が、にっちもさっちもいかずに店を畳む決心をする所から。しかし、先代に大恩を受けた喜八郎。そう簡単には米屋を潰させはしない。与力、秋山と協力し合って、巨利を貪り、贅を極める札差たちに一泡吹かせることに。

田沼バブルがはじけ、何かと悪評の「棄捐令」が出された前後のお話なんだけど、痛手を被った札差たちが、御家人達に金を貸さなくなった事で、江戸の町中が金詰りに陥ったり、この辺りは経済小説の趣きもあり。ただし、そこは時代小説なので、悪いやつらに一泡吹かせる、喜八郎や手下の活躍には胸がすく。また、山本さんの小説なので、悪いやつらも一面的に描かれるのではなく、意外な面も併せ持つというように、多面的に描かれるので飽きがこない。

そして、特筆すべきは、人々の義理堅さ。借りが出来たら、それをお金で返すのではなく、次の行動で返すんだよね(場合によっては、動くお金も何百両とか凄い単位になるので、商売人の胆力にも吃驚するんだけど)。私は「いわし祝言」が好きだったんだけれど、これもまた、その前の仕掛けで世話を掛けた、江戸屋に報いるためのもの。米屋のために作った仕掛けを、江戸屋のために使ってもいいのだろうかと、喜八郎は悩むのだけれど、配下のものたちも喜八郎がやろう!、というのを待っているのだ。大規模資本主義にはない考えかもしれないけど、見事な循環型社会だよなぁ、と思った。「いわし祝言」は身の丈、身の程を考えるものでもあり、この辺もお江戸はいいねえ。いわしで祝う結婚。ちょっと煙そうだけれど、みっしりと実質があるんじゃないかな。

「棄捐令」に深く関わった与力・秋山は、これで良かったのかと自問自答し、最初は棄捐令に喜んだ御家人達も、札差の根強い貸し渋りに合って、秋山に対して冷たく当たるようになる。辞職を決意するも、逃げるなと諌められる秋山もいい。己は己の仕事をきっちりやるしか、道はないものね。

山本さんの物語の一つの特徴として、互いに憎からず思う男女が、程よい大人の距離で出てくるんだけれど、今回は料理屋・江戸屋の女将、秀弥がそれに当たる。くっ付いちゃえばいいのにー、とも思うけれど、この距離が潤いになりつつも話の邪魔にならない感じなのかな。「目元がゆるむ」など、の描写も好き。

深川駕籠 」、「深川黄表紙掛取り帖 」は若干やんちゃ寄り、この「損料屋喜八郎始末控え」は、国の行く末に関わる仕事が絡んでくるだけに、抑制がきいた少々大人な感じですかね。amazonを見て驚いたけれど、これがデビュー作なんだそうです。凄い完成度!

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