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「蒲公英草紙―常野物語」/幼年期の終わりに

 2007-06-12-23:57
恩田 陸
蒲公英草紙―常野物語

蒲公英草子。それは一人の少女が、かつて自分の日記に付けた名前。
窓の外の丘、麗らかな光を浴び、すくすくと育つ蒲公英を見た彼女は、自分の日記をそう名付ける事にしたのだ。

彼女はそこに書かれた日々を振り返る。
それは当時は分からなかったけれど、振り返ってみれば、光り輝くような日々だった。

槇村のお屋敷に聡子さまがいて、旦那様、奥様がどっしりと集落の皆を支え、お屋敷には様々な人々が出入りし、そしてあの不思議な春田家の人々がやって来たその月日。それは少女、中島峰子の幼年期の終わりでもあった・・・。

集落の医者である父に頼まれた峰子は、お屋敷に住む同年輩の聡子お嬢様のお相手を務める事になる。聡子さまは、病弱で学校に行く事が出来ないため、話し相手となる同年輩の友だちが必要だったのだ。峰子と聡子さまは親しく過ごすようになり、峰子は聡子さまの美しく清らかな心根に惹かれるようになる。ただ一つ気になるのは、聡子さまが時々あらぬことを呟く事。時にそれは現実となるのだが?

お屋敷に集う人々は様々。優しく頼もしい旦那さまご夫妻、美しい清隆さま、何かと峰子にちょっかいをかけてくる廣隆さま。先ごろの清との戦争により息子と孫を失った発明狂の池端先生、書生の新太郎さん、日本画を忌み嫌い洋画を学ぶ椎名さま、仏師だったという永慶さま・・・。そこに一家でやって来たのが、あの不思議と穏やかな春田家の人々。彼らは『しまう』一族であるというのだが。

時代はこの後、轟音をたてて変わっていく。しかしながら、この東北地方の田舎にある裕福な集落、槇村においては、そういった変化もまだほんの僅かしか訪れていない。それでも、この後の世界の変化を予告するかのように、心の臓が悪かった聡子さまがいなくなり、春田家の人々も集落を去り、お屋敷にいた人々も徐々に消え、そうして峰子の幼年時代は幕を閉じる。

新しい世界に出ること、新しい時代というもの、新しいもの。それは古いものを否定することと同義ではない。人々は春田家のような人がいることで、救いを得る。思いを託し、覚えてくれる人たちがいることで、前に進む事が出来るのだ。

この『しまう』一族、春田家のことは、代は違うけれど、光の帝国」にも出てきました。「三月は深き紅の淵を 」もそうだったけれど、この常野シリーズもまた、あちこちに様々な入口が隠れている物語。この二つのシリーズが、どんどん増殖していってくれると嬉しいなぁ。

回想記のような体裁をとる物語には、作家の力量が良く現れるように思われる。最初はこの峰子の語り口に慣れなくて、勝手に恩田さんの力量不足では?、と思っていたのだけれど、途中からは話にぐんぐん引き込まれ、最後まで通して読んでからまた最初に戻ると、恩田さんの語りのテクニックには不足が無かった事が分かりました。

にしても、回想記の体裁をとる物語は、大抵不幸な結末に至るところも、何だか苦手なところなのよね。この物語は不幸な「だけ」ではないんだけど、それでも、やっぱり哀しいんだよなぁ。

☆関連過去記事
光の帝国―常野物語

目次
一、窓辺の記憶
二、お屋敷の人々
三、赤い凧
四、蔵の中から
五、『天聴会』の夜
六、夏の約束
七、運命
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