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「佐藤君と柴田君」/ふたりのアメリカ文学者

 2007-07-22-22:23
佐藤 良明, 柴田 元幸
佐藤君と柴田君

1950年生まれ、東京大学教養学部助教授、佐藤良明(トマス・ピンチョンやグレゴリー・ベイトソンの翻訳・紹介で知られるとのこと)、1954年生まれ、東京大学教養学部助教授の柴田元幸(ポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザーなどの訳で知られる)のお二方によるエッセイ集。
(肩書きについては、1995年に発行された、この本の扉の著者紹介から引用しています)

文末に「さ」(佐藤氏)「し」(柴田氏)と記された文章が、ほぼ交互に並ぶ。

時に、一般教養の<英語?>の授業の革命について熱く語り、時に、60年代のポップソングについて語る。そして、時に自らの少年時代について、思いを馳せる。

音楽については、特に佐藤氏の方の思い入れが強く、「そんなん知らんー」となることもあるのですが、柴田氏による「
つまみぐい文学食堂 」を読んだ時にも思ったんだけど、ああ、東大の学生はこんな二人の授業を受けられたのか、と思うとやっぱり羨ましい!(そして、今、Wikipedia を見たら、”歌手の小沢健二は柴田ゼミ出身”なのだとか。)

文章としては、私は柴田さんの脱力系の文の方が好みでした。
特に心に残ったのが、柴田氏による「たのしい翻訳」「ボーン・イン・ザ・工業地帯」の二編。

「たのしい翻訳」に、その恐ろしい書き出しが載せられている、T・R・ピアソンの「甘美なる来世に向かって」も気になるなぁ。訳されても読みこなせないような気もするんだけど。
 
 「ひっかかり、抵抗感こそが味である「悪文」的な原文の、そのひっかかりを再現する」ことを重視している柴田さん。「下手にやると、単に下手な訳文にしか見えなくて、結局は弱気になり、「通りのいい」訳文にしてしまうことが多い」そうだけど、このT・R・ピアソンの文は、そういう意味ではかなり癖の強い「悪文」っぽいです。

「ボーン・イン・ザ・工業地帯」では、柴田さんが訳したスチュアート・ダイベックの「シカゴ育ち」の話と、柴田さん自身の「育ち」の話が絡む。東京のサウス・サイドである京浜工業地帯と、シカゴの南側であるサウス・サイドに、柴田さんはいくつかの共通点を感じるのだそう。

「なつかしい」と「うつくしい」が一致しがたいサウス・サイドを描くなかでダイベックはそこに、ふっと天使の影をよぎらせたり、不思議な言葉で呟かれる老婆たちの祈りを響かせたりして、つかのまの「うつくしいなつかしさ」を、あたかもささやかな救済のように忍び込ませた。

工業地帯の下町に育った柴田さんは、それによって自らが育った町も、一緒に救済された気持ちになったのだとか。そして、この部分にはなんだかしんみりしてしまう。

手拭いを頭に巻いたおじさんたちが黙々と旋盤を回している町工場の並ぶ、夕暮れの街並みを自転車で走るとき、僕はいまも、三十年前の、勉強ができることだけが取り柄の、気の弱い、背が伸びないことを気に病んでいる子供に戻っている。喧嘩と体育ができることが至上の価値である下町では、勉強ができることなんて屁みたいなものであり、そういう世界にあって僕は明るく楽しい少年時代を過ごしたわけでは全然なかった。あのころだって、いまだって、僕はこういう環境にしっくりなじんで生きているわけではない。

そういう、ある種の「うしろめたさ」のようなもの、どこかわかる気がします。

あ、スティーヴン・ミルハウザーの「イン・ザ・ペニー・アーケード」も、気になります。「シカゴ育ち」「イン・ザ・ペニー・アーケード」も、この本が届くべき人たち、この本を読んだらよかったな、と思ってくれる潜在的愛読者に本が届いていない気がするのだって。

 特にミルハウザーなどは、文系よりもむしろ理系の、ふだん小説なんてあまり読まない、どちらかというと人間とかかわるより機械とかかわるほうが好きな、根のやや暗めの人に潜在的愛読者がいるはずだと思うのだが、残念ながらそういう人のところまでこの本は届いていそうにない。

本は人の心に届いてこそのもの。柴田さんがそういう人に読んで欲しいと思ったこの本、自分がこの本を読んだらどう感じるのかなあ、などと思うのでした。

*臙脂色の文字の部分は、本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。

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