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「レディ・ジョーカー」/抑鬱の果てに

 2007-07-26-23:21
高村 薫
レディ・ジョーカー〈上〉 」「 レディ・ジョーカー〈下〉

「物語三昧」ペトロニウスさんに、高村薫の『リヴィエラを撃て』をオススメしていたところ、こんな記事を書いて下さいました。

ペトロニウスさんの記事はこちら
→ 『リヴィエラを撃て』 高村薫著 素晴らしい人間ドラマでした
  『リヴィエラを撃て』高村薫著? ハードボイルド小説の心象風景とディティールの描写

ついでに、こっちも
→ 『毎日が日曜日』 城山三郎著 日本株式会社の経済戦士たちのバイブル?

で、私はペトロニウスさんにオススメしたくせに、最近、高村作品を読んでません。このブログに記事を書いたのも、合田刑事シリーズ第二作目の『照柿 』くらい。一時期はまって、一気にガーっと読んだので、『新リア王』以外は一応押さえてはいるはずなのだけれど。「企業小説」であることもあり、このたび、唯一まだ持っている『レディ・ジョーカー』を読み直してみることにしました。

高村作品は大抵がどれも緻密な描写が続くのだけれど、再読となるとなまじ筋を知っているだけに、ついつい読み飛ばしてしまうことも。なかなか最初に読んだ時の集中力では読めませんです…。『レディ・ジョーカー』は登場人物の数も結構なものだしねえ。それぞれの人生が重いです。

さて、「レディ・ジョーカー」とは何ぞや。それは、ある犯罪グループが自称する呼び名。警察の捜査に浮かび上がるような<鑑>もなく、一見ばらばらである彼らの人生において、唯一つ共通するもの。それは、「自分はジョーカーを引いてしまったのではないか」という思い。年齢も職業もバラバラの男たち。ただただ目の前に起きた出来事を見据え、与えられた仕事を黙々とこなした日々。しかし、己の人生は、確実に正負のバランスが狂ってはいまいか?

抑鬱された感情の果てに彼らが起こした行動は、大手ビール会社を恐喝して金を強奪するというもの。実際のところ、男たちには金への執着心はほとんどない。それはこの閉塞した状況を抜け出すための手段にすぎない。偶然が積み重なって選ばれた企業<日之出麦酒>も、実は必然であったのか。総会屋<岡田経友会>との関係、関連運輸会社やその主力銀行の融資疑惑を含め、日之出麦酒は様々な手に絡め取られていく。

最初の怪文書を除けば、約5年間のお話であるこの物語。『レディ・ジョーカー』は、合田刑事シリーズ第三作目であるからして、勿論合田刑事も登場する。「レディ・ジョーカー」の脅迫は実に巧妙であり、まずは日之出麦酒社長の城山を誘拐、ビールが人質であることを説明し、後に裏取引を行うというもの。「レディ・ジョーカー」の名にふさわしく、脅迫に使われるビールの色は赤。赤いビール、それは「レディ・ジョーカー」のしるし…。社長の誘拐には当然警察も介入し、また日之出の裏取引を阻止するために、生還した城山社長に張り付けた所轄の刑事が合田というわけ。

警察と企業の駆け引き、警察の捜査、企業内でのパワーバランス、報道記者の世界などなど、余すところなく、非常にみっちりと描かれます。

レディ・ジョーカー」に対峙するうち、メンバーの一人であり、暴力的でぎらぎらした思いを持て余す男に引きずられるように、合田刑事もまた隠微な思いを深めていく。彼らの行動は互いにほとんど愉悦の源でもある。この二人は最後まで突き抜けていってしまうけれど、そうではないメンバーたちもいる。どこの闇に落ちたのかすら分らない者もいるけれど、「終章」で描かれる山々や耕地の姿は美しい。泥のように、澱のように、隠されていた強烈な怒りや、憤りがそれぞれに噴出したこの事件。この事件を体験した者たちは、それぞれに生まれ変わることが出来るのだろうか。この事件が起こったことによる、様々な弊害は残るのだけれど…。

「企業小説」として「終章」で語られる出来事は苦い。背後に暴力団誠和会がつく、岡田経友会とのしがらみを暴露した日之出麦酒への報復として、社長職を辞任した城山は第一回公判の前日に射殺される。城山三郎さんの小説などとは(って、たぶん、むかーしに数冊読んだだけなんだけど)、この辺の厳しさ、リアルさが違うよなぁ、と思います。

終章」で、本庁の国際捜査課に警部として異動になったことが知れる合田刑事。照柿』で灼熱の浄化を経験し、レディ・ジョーカー』にて「再び生まれ落ちた」合田刑事。国際捜査課での活躍も見たいものです。

<おまけ> 料理について
城山の秘書、野崎女史が城山のために用意する軽食が美味しそうでねえ。実際に作るのは、自社ビルの四十階にあるビヤレストランの総料理長なのですが。

 もともとは、ザワークラウトと男爵イモを骨付きの塩豚の塊とともに白ワインで煮込んだものだが、城山のために豚の塊は抜いてあり、ネズの実入りの真っ白なザワークラウトが小ぶりの一山、ほくほくに煮上がって粉をふいたジャガイモが一つ、バター煮のサヤインゲンが少々、熱々の湯気を立ててマイセンの皿に載っていた。          (上巻p330から引用)

誘拐犯から解放されて、会社に戻ってとる食事がこれ。ザワークラウトを食べると、この場面を思い出します。
上巻/目次
 一九四七年―怪文書
第一章 一九九〇年―男たち
第二章 一九九四年―前夜
第三章 一九九五年春―事件
下巻/目次
第四章 一九九五年夏―恐喝
第五章 一九九五年秋―崩壊
終章
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