スポンサーサイト

 -----------:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
カテゴリ :スポンサー広告 トラックバック(-) コメント(-)

「孤宿の人」/人間の弱さ、狡さ

 2007-08-13-21:46
宮部 みゆき
孤宿の人 上 」「孤宿の人 下
新人物往来社

讃岐の国の丸海藩。海うさぎと呼ばれる白波が立ち、紅貝染めの塔屋からは煙が立つ、海辺の長閑な国。金毘羅参りの旅籠ともなるこの藩は、新興の紅貝染めで多少の潤いを得てはいるものの、懸命に働く人々の暮らしは決して楽ではない。

そんな丸海藩に、江戸の大罪人「加賀殿」のお預かりという大役が回ってきた。これは、紅貝染めで利益を得ている丸海藩を、面白くなく思ってのことなのか。藩の取り潰しを恐れる藩の重鎮たちは、江戸の意向を必死で探ろうとし、また藩の主だった人々も、町の人々の情報操作に余念がない。

さて、軸となるのは、不幸な生い立ちの末、江戸から丸海藩へとやって来た少女「ほう」。「ほう」は阿呆の呆だと教えられた彼女は、働くことは苦ではないものの、読み書きや頭を使うことは得意ではない。丸海藩の医者である、「匙家」の井上家に引き取られたほう。これからは静かで温かな暮らしが待っているはずだったのだが…。

勘定奉行まで務めたものの、部下を殺し、妻を殺し、子を殺した「加賀殿」は、悪鬼となったのだという。加賀殿が丸海藩にやって来るということは、その何か「悪いもの」がやって来るということ。「悪いもの」に出会ったとき、弱い人々はどうするのだろうか。ある者は無暗に怖がり、ある者は悪い出来事の原因をそれに求め、もっと弱い者はそれに乗じて悪事を為す。のどかな国であったはずの丸海藩には、一転不穏な空気が蔓延するようになる。

少女ほうをめぐる人々は様々。匙家の人々、女だてらに引き手を目指す宇佐、番屋の親分一家、加賀殿預かりの涸滝の屋敷を守る武家…。しかししかし、この物語では、市井の懸命に生きる人々が、どんどんどんどん死んでいくのです。後半は涙なしでは読めないのだけれど、この涙は嬉しくなかったな~。哀しくて涙が出たのもあるけれど、それは憤慨の涙でもあった。

私は基本的に宮部さんのファンではあるのだけれど、同じくいやな後味が残った「誰か」を思い出しました。大がかりな陰謀というよりは、それを隠れ蓑にした人々の弱さ、狡さがどうしても印象に残ってしまう。そして、それらを見殺しにする「身分の高い」人たちのしたり顔。そこで責任を取らなくては、そこでなんとか物事の収拾を付けることができずに、何のための「身分の高さ」か、と憤りすら覚えてしまいましたよ。身分の高い人たちは、基本的には「いい人」ではあるのだけれど、「いい人」が有能であるか、というのは、これまた別の問題なわけで…。そこは敢えて「悪人」であってもいいんじゃない?、などとも思うのです。

みんながみんな、そうやって突出することをせず、「建前」や「決まり」を大切にした結果、どれだけ多くの命が失われたのか。世の中ってそういうものかもしれないけれど、『物語』の中でまで、そういう話を読みたくはないのだよなぁ。

「加賀殿」に対する後始末は、京極さんの巷説百物語シリーズのよう。なんだかねえ、この架空の丸海藩に、私は又市たちに来てほしかったです。又市たちなら、もっとよい始末をつけられたはずなのでは…。そして、きっと、こういうことには怒ってくれると思うのだよね。「ほう」は無垢で愛らしい存在だったのだけれど、誰かもっとこの現実に怒ってくれ!!、と思ってしまうのでした…。そんなわけで、怒りながら、泣きながら、読んでたので、ちょっと疲れる読書でした。やり切れなさすぎる…。
コメント












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:
http://tsuna11.blog70.fc2.com/tb.php/198-67bdcb86
≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫
プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

掲示板その他リンク

ユーザータグ
最近の記事
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

RSSフィード
カウンター

月別アーカイブ
検索エンジン情報
Googleボットチェッカー Yahoo!ボットチェッカー MSNボットチェッカー

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。