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「趣味の問題」/ある二人の男

 2007-08-19-23:39
フィリップ バラン, Philippe Balland, 高橋 利絵子
趣味の問題

これは、かなり変わった小説です。
で、読んでいる時は、それ程いいとも、すごいとも思わずに読んでたのだけれど、後になってからじわじわと心を揺さぶられるような物語でした。

主人公はフリーターのニコラ。自分のやりたい事は、文学教授の父のような代り映えのしない毎日を送ることではない。大学中退後、いきなり社会に飛び出した彼は、様々な職業、様々な国を転々とする。そんな彼の秘かな憧れは”貴族”。実際の彼は収入の関係もあり、勿論”貴族”的な生活を送ることなどは叶わないけれど、決してお金のためだけにあくせくと働くことはしない。しかし、そんな彼もそれなりに年を重ねる。これまでは「経験」を重視して仕事を選んでいたけれど、これからはもう少し遣り甲斐のある仕事をしたいもの…。

そんなニコラの前に現れたのが、フランス最大の企業の一つ、ドゥラモン・インターナショナルの社長、フレデリック・ドゥラモン。ドゥラモン・インターナショナルを継ぐべく帝王学を授けられたフレデリックは、学校に行ったこともなければ、所謂「子供」としての体験もない。子供時代から大人の世界しか知らず、無条件の愛情も知らない、そんな彼はどこか歪。

リスクをとることを嫌い、常に周到な準備を好むフレデリックは、かねてからの憧れ、中国の皇帝のような<試食係>を置くことを思いつく。白羽の矢が立ったのが、年格好の近いニコラ! 食べ物の<試食>から始まったニコラの「仕事」は、そのうち、本や映画鑑賞、女性を美味しく調えることや、危険なスポーツなど、フレデリックの私生活の様々な分野に及んでいく。そして、共依存を深めた彼らに待っていた運命とは…。

このフレデリックが物凄く横暴で傲慢な人間なんだけど、たぶん、彼が持っている淋しさや孤独が、ニコラがフレデリックを振り切れない理由なんだろう。自分が嫌いなチーズや魚介類をニコラも嫌いになるように、と画策するところなども、ほとんど犯罪。そもそも自分の好みを完璧に理解する人間を創り上げる、ということ自体も、勿論おかしいのだけれど。それって、もう一人同じ人間を創ることだしねえ。それに、外界との接触を嫌うあまり、そうやってフィルターを通したものしか受け入れない、というのも、そんなんじゃ感性が枯渇しそうだし。

フレデリックはそんな風にとっても歪な人間なんだけれど、ニコラはフレデリックよりは社交性(というか、他人に嫌われない)がある人間であるにも関わらず、やはりどこかが欠落してしまっている人間。好奇心や感受性は豊かなようなのだけれど、主体性がなく、社会に適応しきれていない。ニコラはフレデリックの完璧な<試食係>でいようとするあまり、フレデリックの気持ちにぴったりぴっちりと寄り添っていき、二人の関係はどんどんおかしなものになっていく。社会には適応できないのだけれど、フレデリックにはほぼ完璧に適応してしまうのだ。

フレデリックの横暴な要求は、まるでニコラの愛を確かめるかのよう。理不尽な要求に、ニコラがどこまでついてこられるのか?

ニコラにはこのおかしな関係から抜け出すチャンスも、そういう気持ちもあったのに、とうとう最後までフレデリックとともに突き進んでしまう。ニコラが<試食>した、フレデリックの元・妻、イザベラと娘・ローラとの関係だって悪くはなく、彼女らもニコラに好感を持っていたというのに…。

ニコラとフレデリック。この二人でなければ、きっとこんな倒錯的な関係にはならなかっただろうという点で、これは何だか二人の男性の純愛物語にも読めてしまう。純愛ってそもそも狂気的だし。

映画もあるようで、映画ではニコラは若く、フレデリックはもっと年を経た男性という設定だそう。そちらもちょっと見てみたいなぁ。いかにも、「フランス映画」っぽい感じなのかしらん。

若干、惜しいのは、「感性豊かである」とされるニコラの、感性豊かたる所以があまり伝わってこなかったこと。フランス人ニコラが、日本のマイナーなロック・グループ、<オタオ>のファンというあたりも、その感性の豊かさの記号なのかもしれないけれど、自分が日本人だからか、あまりピンとは来なかった。そこら辺が、もっと説得力あるものであったとしたならば、この物語がもっと胸に迫るものになったのだと思うのです。

キング
趣味の問題
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つなです。
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