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「千年の祈り」/珠玉の短編集

 2007-09-13-23:38
千年の祈り (Shinchosha CREST BOOKS)千年の祈り (Shinchosha CREST BOOKS)
(2007/07)
イーユン・リー

商品詳細を見る
目次
あまりもの
 Extra
黄昏
 After a Life
不滅
 Immortality
ネブラスカの姫君
 The Princess of Nebraska
市場の約束
 Love in the Marketplace
息子
 Son
縁組
 The Arrangement
死を正しく語るには
 Death Is Not a Bad Joke If Told the Right Way
柿たち
 Persimmons
千年の祈り
 A Thousand Years of Good Prayers
訳者あとがき

これ、めっちゃくちゃ良かったです!
同じ新潮クレスト・ブックスシリーズでいうと、「停電の夜に 」のような短編集なんだけれど、「停電の夜に」で少し感じた、人生の疲れ、澱のようなものがほとんどない。

かといって、決して悲しくないわけでも、幸せいっぱいなわけでもないのだけれど、感情のエッセンスが純粋に昇華されている感じ。ペーソス、ユーモア、すべてが恬淡と、いっそほのぼのと語られる。

「あまりもの」
行かず後家の林(リン)ばあさんはいつだってあまりもの。寡婦の王(ワン)ばあさんの勧めに従って、今にも死にそうな金持ちの年寄りと結婚しても、全寮制の私立学校に職を見つけても…。
「愛の幸せは流星のように飛び去って、愛の痛みはそのあとに続く闇のよう」
林ばあさんを道で追い越した少女が口ずさむ。

「黄昏」

蘇(スウ)夫妻と、方(ファン)夫妻のお話。いとこ同士の蘇(スウ)夫妻は、遺伝的な障害を心配する親族の反対を押し切って結婚した。すべては確率の話。障害を持つ子が生まれてくる確率は、蘇氏の計算ではごく少ないもののはずだったのだが…。彼らの元に生まれてきた貝貝(ベイベイ)は、重度の知的障害と脳性まひを持っていた。しかし、それは決して不幸ではなかった。皮肉なことに、蘇夫妻を互いに遠ざけたのは、その後の子、健(ジエン)の誕生だった。
 
「不滅」

数々の宦官を送り出してきたわたしたちの町。宦官たちは町に富を送り、わたしたちは宦官が死出の旅に出るとき、盛大に送り出した。王政の時代は過ぎ去って、共産主義がやってきた。わたしたちの町が今度送り出したのは、独裁者、毛主席と瓜二つの顔をした若者。

「ネブラスカの姫君」

医師である伯深(ボーシエン)は、同性愛者でもあった。天安門事件からこちら、人権や、エイズについて語ることの危なさを思い知った伯深は、偽装結婚をしてアメリカへと渡る。幼いころから京劇の男旦(ナンダン:京劇の舞台で女役を演じる男優)として仕込まれ、のちに「娼夫」となった二十歳も年下の恋人陽(ヤン)を残して…。陽は同性愛者であるために、舞台から追われていた。伯深は陽を京劇の舞台に復帰させると約束するのだが…。
アメリカへ渡った伯深の元へ現れたのは、陽ではなく薩沙(サーシヤ)。薩沙は陽の子がお腹にいるのだと話し、中絶を望む。

「市場の約束」
三三(サンサン)は何よりも約束を重んじる。それは友人と恋人の手酷い裏切りにあってなお。三三は頭の中で、彼ら二人のセックスを思い浮かべすらする。それはまるで三人の結婚生活のよう。ところが、彼ら二人の結婚は破れてしまった。だからといって、周囲が望むように、彼と付き合いなおすことなどできようか。三三は何よりも約束を重んじるのだから。

「息子」
今ではアメリカ市民となった三十三歳、独身のハン。里帰りで母に会うたびに、いつも衝突してばかり。子としての務めを抱えた息子でいるのは楽じゃない。同性愛者であるハンは、一生、「母の息子」でいるしかないのだが…。

「縁組」
病弱な母親と暮らす若蘭(ルオラン)。茶葉の販売員である父親は、一年のほとんどを外で過ごす。若蘭が物心ついてから、父親の帰宅は年末の大掃除と春節のみ。父のいない間、若蘭たちを助けてくれるのは、炳(ビン)おじさん。
そして、若蘭が十三歳となったとき、父親は母親にとうとう離婚を切り出した。若蘭は父と共に行くことを望むのだが…。炳おじさんが語る、彼らの家庭に隠されていた秘密。

「死を正しく語るには」

誰かの子供でいることは、その立場からおりることのできない難しい仕事。研究所の中に住み、教師をしている母から逃れ、厖(パン)夫妻の家で過ごす夏と冬の一週間は、「わたし」にとってとても貴重なものだった…。研究所で育った子供たちの遊びの中では、研究所の防犯ゲートから外へ出ることも、灰色の建物に近づくことも許されない。
今ではアメリカで暮らす私は、遠い地で厖夫妻のこと、その近所の人たちのことを思う。


「柿たち」

老大(ラオダー)は十七人もの人間を殺した英雄だ。干ばつに見舞われた「わたしら」が思い出す、老大のこと。これは天罰なのか? しかし、この干ばつがもたらしたのは、日がな一日、槐の老木の下に座って煙管をふかし、だらだらと語り合うけだるい喜び。

「千年の祈り」

離婚した娘を慰めるために、娘が暮らすアメリカを訪れた石(シー)氏。ところが、娘は彼の慰めを受け容れるどころか、迷惑な様子を隠そうともしない。近所を散歩中に知り合った、言葉の通じないイラン人の「マダム」とは、心が通じ合うというのに…。
娘によって暴かれる石(シー)氏の不名誉な過去、そして娘の離婚に至った事情。
どんな関係にも理由がある。たがいに会って話すには、長い年月の深い祈りが必ずあったはずなのだ。愛する人と枕をともにするには、そうしたいと祈って三千年、であるならば、父と娘ならばきっと千年。人は偶然に父と娘となるのではない。石(シー)氏の想いは、娘に届くのか?

長々と書いてしまったけれど、それはどれも甲乙つけ難いお話だったから。短編なんだけど、話がぶわーーーっと広がっていく感じがするのです。

ダイ・シージエも中国人でありながら、フランス語で小説を書いているのだけれど、この作者、イーユン・リーも母語ではなく英語で物語を書く。母語では書けないこと。新しい言語を獲得したからこそ、書けること。中国の文革の爪あとはいまだに深い。

■関連過去記事■
・ダイ・シージエ「
バルザックと小さな中国のお針子 」/一九七一年、中国の青春
・ダイ・シージエ「
フロイトの弟子と旅する長椅子 」/フロイトの弟子にして、ドン・キホーテ、莫(モー)がゆく
コメント
これは、ほんと、ジーンとくるいい短編集でしたね、、。
外国語だからこそ、ここまで書けるのかもしれないと
思いました。
【2008/11/30 01:04】 | indi-book #- | [edit]
indi-bookさん、こんにちは!
ほんとにいい短編集でしたよねー。
私の去年のベスト本です♪

ある程度の不自由さ、制限がある方が、書けること、言えることもあるのかもしれませんねえ。
【2008/11/30 22:30】 | つな@管理人 #- | [edit]












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つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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