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「マイセン―秘法に憑かれた男たち」/磁器が白い黄金であった時代に

 2007-09-17-20:41

ジャネット グリーソン, Janet Gleeson, 南條 竹則

マイセン―秘法に憑かれた男たち


それは、磁器が何よりも尊い価値を持っていた時代。魔法のように純白で堅くありながら、卵の殻のように薄く、陽にかざすと光が透けて見える。まさに粘土から出来た黄金ともいうべき磁器。ヨーロッパの王侯や美術の目利きたちは、たちまち東洋からもたらされたこの美しい磁器に心を奪われ、城や屋敷をこぞって磁器で飾り立てた。

卑金属を黄金に変え、人を不死にする力があると信じられていた賢者の石ほど秘教的ではなかったけれど、磁器の製法もまた人々に求められたという点では引けを取らない秘法であった。この物語は、この磁器の製法を確立した錬金術師、ヨハン・フリードリヒ・ベドガー、冷酷かつ野心的な芸術家で、マイセンの色柄と図柄を発展させたヨハン・グレゴリウス・ヘロルト、名彫刻家で新しい形の芸術を生み出したヨハン・ヨアキム・ケンドラーという三人の非凡な男たちの生涯を描いたもの。

 
三世紀近く経った今日、磁器はもはや世の主立った科学者や権力者、哲学者の心を支配することはない。たいていの人間にとって、それは比類なき財宝ではなく、気軽にデパートで買ったり、結婚のお祝いにもらったり、ショーウィンドウに置いてあるのをなにげなくながめて楽しむもので、日常生活に溶けこんだ道具だ。日頃食器をテーブルに並べ、コーヒーカップを口元に運び、炉棚の人形を並べかえるとき、そうした物がどれも何らかのかたちで、この三人の非凡な男たちのおかげをこうむっていることを思う人はまずいないだろう―また、磁器が黄金よりも貴重な時代があったなどとは。
                            
(P10「序章」より引用)

野心、裏切り、強欲なんでもあり。ノンフィクションでありながら、非常にエキサイティングな語りの運び。訳者の南條さん目当てで借りてきたのだけれど、こういう知らない時代、知らない常識(磁器がそんなに貴重だったなんて! 磁器の製法を確立したのが、錬金術師だったなんて!)を、物語として読ませてくれるという点で、この本は知的好奇心も満足させてくれる、とても面白い本でした(中欧の歴史には、いまひとつついていけてない自覚はあるけど…)。

序章
 第一部 秘法師(アルカニスト)
第一章 逃亡者
第二章 変成か詐術か
第三章 王の虜
第四章 磁器の謎
第五章 絶望の底で
第六章 発見の序章
第七章 僥倖の炎
第八章 白い黄金
第九章 自由の代償
 第二部 競争者たち
第十章 死の影
第十一章 磁器の宮殿
第十二章 偽りの仮面
第十三章 十字の双剣
第十四章 汚職事件と再生
第十五章 夢の世界
 第三部 磁器戦争
第十六章 最後の旅路
第十七章 磁器の兵隊
第十八章 生活の諸相
第十九章 最後の敗北
第二十章 秘法(アルカヌム)
あとがき
謝辞 
 赤と白―解説 池内 紀
 訳者あとがき 


ベドガー、ヘロルト、ケンドラーの三人の中で、磁器の製法を最初に発見したという点で、ベドガーの生涯が一番興味深かった。ヘロルト、ケンドラーの二人はそれなりにうまくやったというのに、ベドガーが一番報われなかったという点でも…。

化学に並々ならぬ天分を示した少年ベドガーは、その知識を増やすにつれ、賢者の石の秘法を見つけ出すという考えに取付かれるようになる。十九歳となったベドガーは秘密裏に秘法の実演をして見せるようになり、種々の金属を少量の黄金に変成出来ると信じ込ませた。実験の資金を集めるためには、これは必要なことだったけれど、それはまた危険な賭けでもあった。評判が高まったベドガーは、とうとうプロイセン王フリードリヒ一世の元に召喚されてしまう。

フリードリヒ一世の手を辛くも逃れたベドガーであるけれど、今度は同じような貪欲さと野心を持つ、ザクセン王アウグストの囚われ人となってしまう。当初、戦費を賄うために、黄金を作り出すことを求められたベドガーだったけれど、磁器の製法を研究するチルンハウスの知己を得たこと、彼から研究の後継者とされたことから、賢者の石の秘法に心を残しながらも、磁器の製法の研究を進めることになる。広い実験室と窯が必要となったベドガーは、囚人の身分のまま、アルブレヒト城に移送される。そこはドレスデンの北西に行くこと約二十五キロ、趣のある中世の町マイセンに聳える王城だった…。

磁器の製法を確立したものの、当初王に約束した黄金を造り出すことが叶わなかったベドガーは、待遇が改善されたり、母や妹、義兄弟を呼び寄せたり、結婚しても、一生をザクセンにとどまり、黄金造りの研究を続けることを求められ、その生涯のほとんどを囚人として過ごす。途中、病を得て、監禁を解かれるものの、病はベドガーにとって何よりも効果的な牢獄であった…。

ベドガーを苦しめ続けたアウグストの野心や欲、贅沢(ただし、それは自分が使うものであって、ベドガーやマイセンの工場に対しては吝嗇であり続けた)っぷりは桁はずれ。こんなにギラギラと欲を持ち続けたのもすごいことだなぁ、と思うのでした。これまでとは違った目で、磁器を見てしまいそう。私はどちらかというと、磁器よりも陶器が好きで、「柿右衛門」についても、これを読んでから調べてしまったくらいの、知識のなさっぷりだったのだけれどね。

*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。
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