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「ティンブクトゥ」/魂の行方

 2007-10-26-22:58

ポール・オースター, 柴田 元幸

ティンブクトゥ


ミスター・ボーンズには分っていた。ウィリーがもう長くはないことを。
楽しかった彼との日々が、終わってしまうことを…。

えーと、こう聞くと、ウィリーが犬で、ミスター・ボーンズが人間、と思えるのだけれど(いや、過去、こういう本を読んだこともあるしね)、あにはからんや、ここでは、ミスター・ボーンズが犬、ウィリーがその飼い主になるのです。

ウィリーの人生は、客観的に見て、とても成功したものとは言えない。狂気とアル中の詩人であるウィリーは、けれども、ブラウン管から彼に語りかけるサンタクロースから啓示を受け、ウィリアム・グレヴィッチ改めウィリー・G・クリスマスとなり、一年を通してクリスマスの教えを肯定し、何も求めることなく愛を返すことに専念した(もしくは、そう心掛けた)。

その試みは常に成功!というわけにはいかなかったけれど、ウィリーには常に自分が目指すべきものが見えていた。けれども、若さが失われ、浮浪者同様となったウィリーが、いくら博愛精神を示そうとも、世間は冷たいもの。そんなウィリーが、ボディーガード代わりに飼い始めたのが、ミスター・ボーンズだったというわけ。

ウィリーは全てをミスター・ボーンズに話したし、ミスター・ボーンズも犬の身に許される限り、それらを全て理解した。二人で<匂いのシンフォニー>の研究に夢中になったりもした。マシンガンのようなウィリーのトークの合間に語られたのは、「ティンブクトゥ―ティン‐ブク‐トゥ」のこと。それは人が死んだら行く場所であり、砂と熱からなる巨大な王国、永遠の無が広がる地を越えたところにある土地。ミスター・ボーンズには、その旅は困難なものだと思われたけれど、ウィリーはそこにはあっという間に行けるのだ、と請け負う。

けれど、「ティンブクトゥ」とは人が行く場所なのか? だとすれば、ペットである自分は? この世界に別れを告げるときが来れば、その後はそれまでの生で愛した人と共に暮らせるべきではないのか?

最初に恐れていた通り、やはりミスター・ボーンズとウィリーの別れの日がやって来る。ミスター・ボーンズはウィリーからの忠告を元に、ひとり、生きていこうとする。ウィリーほど信用に足る人間はいないけれども、ミスター・ボーンズは、少なくともウィリーと同じくらい信用できる人間を見つけ…。
ここから語られるのは、いやな奴が一人いたからといって、全員が悪い奴だと思うな、という教訓や、信用できる人間でもその人物に力がない場合の悲しさなど。そうして、ミスター・ボーンズを助けるのは、時に夢の姿を借りてやって来るウィリー。

「ミスター・ヴァーティゴ」ほど、読んでいる最中に面白い!、とは思わなかったのだけれど、読み終わった後にじーんと残るものがありました。犬の視点で語られるのだけれど、犬だから、というよりは、純粋な魂のお話として読みました。愛する者との日々の思い出、愛する者を失ってから、別れが来てからをどう過ごすのか。みんながみんな、夢の形を借りて、生者の元にやって来られるわけではないけれど、ウィリーとミスター・ボーンズは、きっとティンブクトゥに行けたよね。

■関連過去記事■
・「最後の物たちの国で 」/全てが失われゆく街で
・「ミスター・ヴァーティゴ 」/空も飛べるはず
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