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「夜と朝のあいだの旅」/ナッハモルグの語らい

 2007-11-08-23:53
ラフィク・シャミ, 池上 弘子, Rafik Schami
夜と朝のあいだの旅

著者ラフィク・シャミは、シリアに生まれ、西ドイツに亡命し、長い亡命生活を送ることになったのだという。キリスト教徒でもあったシャミの一家は、シリアにおいては少数派であったけれど、ドイツにおいては自分の同胞でもあるイスラム教徒を攻撃する、その異邦人への差別と偏見に傷つくことも多かった。とはいえ、自分が去った祖国には、変わらない暴力と圧政があり、現実のシャミの求める場所はどこにもなかった…。

物語の主人公は、世界を股に掛けたサマーニ・サーカス団の団長、ヴァレンティン。負債に苦しみ、既に老けこんだ自覚もある彼の元に、ある日一通の手紙が舞い込んだ。それは、アラビアの国、ウラニアに住む、幼馴染からの手紙。建築家として成功し、今では大金持ちになった旧友、ナビルは不治の病を得たため、残りの人生を昔から憧れていたサーカスと共に生きたいと願う。ウラニア公演の準備を全てととのえ、必要なお金は自分が全て用意するから、ヴァレンティンのサマーニ・サーカスにウラニアに来て欲しいというのだ。

ヴァレンティンにとっては、実はこれは願ったり叶ったり。ナビルに会えるのも嬉しいけれど、ウラニアは実は母親がヴァレンティンの父親となる理髪師と恋に落ちた国でもあったのだ。ヴァレンティンは母の日記を元に、この二人の愛を追い、物語を書くことを決意する。すっかり老けこんでいたと思っていたヴァレンティンだけれど、彼はこれを機に日に日に若返るよう。幸運の手紙を運んできた、親子ほどにも年の離れた郵便配達嬢のピアとも恋に落ち…。

ウラニアに渡ってからは、旧友ナビルとの「ナッハモルグ」(夜と朝の間)の語らいを楽しみ、母と父の愛の軌跡を追い、またサーカス団の人々の愛を見守る。父と母の愛の物語には、もう一つの柱として現代の愛も欲しいところ。さて、どの愛が柱となりうるのか?

アラビアの国、ウラニア。サーカス団は、時に原理主義者たちに邪魔をされ、最後には内戦によりウラニアの国を追われてしまう。

目次を見ても分かるように、何だかおとぎ話のような印象も受ける物語です。ところが、全てがおとぎ話かというと、そうではなくって、時に原理主義者、内戦などが生々しく迫って来る。その辺、もしかしたら、シャミ自身の感情が制御しきれず、ぐっと生々しくなってしまうのかもしれません。特に誘拐された恋人のために、何もしなかった女性に対する筆の厳しいこと。

あと、ちょっと分らなかったのが、このヴァレンティンの母親は、夫がありながらも、ウラニアの理髪師と恋に落ち、ウラニアの理髪師もまた家族がありながら、彼女と恋に落ちるのです。こんな状態は、当然自分の家族に負担をかけるもので、私は理髪師の妻や、上の娘である姉の怒りも良く分かるけどなぁ。それを「これが愛!」と言われても、ちょっと納得出来ないものが…。こういう配偶者がありながら、というのは、現代のサーカス団の中でも繰り返されていて、猛獣使いマルティンの妻、エヴァは、道化師のピッポと長らく恋仲だったりするのです。かと思えば、ウラニアの青年と恋に落ちたアニタは、青年が彼女を家族に紹介してくれないから、という理由で振っちゃったりもするのですけれど。うーむ、愛って…。

ながーい物語だし、きちんと「物語」しているのだけれど、そんなわけで、時に現実に引き戻されるので、出来うることなら、もっときっちりと「物語」して欲しかったな、と思いました。何と言うか、突然セットが崩れて、後ろが透けちゃうような感じなんですよね。

ラフィク・シャミ。次は短編を読んでみて、それでダメだったら、諦めようと。

目次
1 すべてはタイミングよく届いた一通の手紙からはじまった
2 ヴァレンティンは、どうしてもまたオリエントに行きたかった
3 時に、現実は夢より奇なり
4 しかめっ面の支店長が、にわかに愛想よくなった
5 緊張がとけて、また新たな弓が引きしぼられた
6 老人だって、まだまだなんでも吸収できる
7 ペパーミントのキスが旅立ち前の最後の日々を変えた
8 大波は思わぬ結果を招く
9 五十年の歳月がその重みを失った
10 愛は死に、ふたたびよみがえる
11 夜と朝のあいだの旅がはじまった
12 いっしょに探してくれる人があらわれて、
  ヴァレンティンは心から感謝した
13 ほほ笑みは、見失った希望を呼び戻す
14 羽根のように軽い愛でも、重いクマを動かせる
15 子供時代は、置いてきたはずの場所には残っていない
16 パンが消え、希望はふたたび目覚めた
17 ていねいなことばづかいに驚いた男と、
  雄ヒツジの眼玉にショックを受けた男
18 死との闘い、おとなになること、そして風車
19 ひとつの時間のなかに、たくさんの時代が共存できる
20 行列はすごくいい商売になる
21 理髪店ではよく話を聞かなければいけない
22 おしゃべりなヴァレンティンが二度もことばを失った
23 損して得すること
24 小柄な理髪師が巨人になると太鼓が鳴りやむ
25 軽い空気も重たいものを持ち上げられる―でも、愛は重すぎた
26 不安は遊び心を押しつぶしたが、ふたたび道化師が誕生した
27 自分のほうが年をとったのではないかと、
  ピアがあっけにとられるくらいヴァレンティンは若返った
28 ヴァレンティンとピアは見開きのページに
  この町で発見したさまざまな側面を書きつけた
29 女のおならはなんでも動かせる
30 物語の結末も、眼鏡も、思わぬところで見つかるものだ

 訳者あとがき―ラフィク・シャミの旅
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つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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