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「私の男」/血の、人形

 2009-04-20-23:14
私の男私の男
(2007/10/30)
桜庭 一樹

商品詳細を見る

表紙からして、何だかねっとりした感じなんですが、ここで扱われるのは、ずばり、近親相姦。

もうすぐ尾崎花になる、腐野花と、花の結婚相手である尾崎美郎、花の義父、腐野淳悟。かつて淳悟との結婚を考えていた、大塩小町。それぞれが語る、花と淳悟の物語。

北海道南西沖地震により家族を失った少女、花。花を迎えに来たのは、遠い親戚であるという、まだ25歳だった淳悟だった。二人は淳悟が暮らす、紋別の地に居を移し、地域の共同体にも受け入れられるのだが・・・。

はじめに不審の念を感じたのは、当時、淳悟と付き合っていた大塩小町だったのかもしれない。彼女は女性特有の勘でもって、この父娘の危うい関係に気付く。地域社会に暖かく受け入れられながらも、互いさえいればそれでいいというような排他的な関係を築き上げていた、花と淳悟。そこには、既に恋人であった小町の場所すら残されていなかった。

桜庭さんの話を書く時に、ついつい毎度「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」(感想)について書いてしまうんですが、「砂糖菓子~」は大人が本来、子供に与えるべきである安全から零れ落ちた少女たちを描いていましたが、「私の男」で描かれるのもまた、家族というものから零れ落ちてしまった少年と少女

淳悟にもまた、両親を失った過去があり、彼はまるでその隙間を埋めるかのように、花に縋りつく。互いが互いにとって、大海で縋りつくべき唯一の浮き輪のような…。その身に流れる血の中に、自分の父を、母を感じることは、ぐるっと遡りつつも、自分の尻尾を噛んで環となったウロボロスのよう。

これは正しいこととはとても言えなくて、でも、やり直すとしたら、淳悟が両親を失ったところから始めなくてはならなくて。そして、それはもはや不可能で。周囲の優しさや思いやりがあって尚、堕ちていきたいと思う人たちを止めることは出来ないんだよなぁ。

花の結婚相手である美郎は、非の打ちどころのない、実に現代的な青年で、現実社会を巧みに回遊できるだけの、財力や知力、性格の持ち主なんだけど、彼にもまた、巧みに生きられてしまうが故の虚しさがある。その虚しさが、彼の周囲にはこれまでいなかったであろう、花のような女性との結婚を決意させたのだろうけど、なんだか桐野夏生さんの「ローズ・ガーデン」(感想)における、ミロの夫、博夫を思い出してしまいました。健全な人がそうやって危ういところに近づくと、飲み込まれちゃうかもよー?などと思ったり。

時系列はずんずんと遡っていく。二人でひとつだった関係を解消し、別れた花と淳悟。失ってはじめて気付くこと。「私の男」である淳悟を失った花は、これからどう生きていくのでしょう。子供には分からないこと。越えてはいけない、してはいけないこと。大人になった花は、その関係を断ち切ったはずだけれど、そこから先は、描かれては、いないのです。
目次
   第1章
 2008年6月
花と、ふるいカメラ
   第2章
 2005年11月
美郎と、ふるい死体
   第3章
 2000年7月
淳悟と、あたらしい死体
   第4章
 2000年1月
花と、あたらしいカメラ
   第5章
 1996年3月
小町と、凪
   第6章
 1993年7月
花と、嵐
コメント
こんばんは。TBさせてもらいました。
桜庭さん続いていますね。
この本も濃かったですよね~濃厚すぎて息苦しかったです。
未読ですが、ずばりなタイトル『ファミリーポートレート』もきっと濃ゆいんでしょうねぇ。

『荒野』を終えて、今はモリミーワールドにプワプワと浸かっております。
【2009/04/22 19:53】 | momo #- | [edit]
momoさん、こんばんはー。
トラバありがとうございました。
そうですね、ほんと続いてるなぁ。笑

乾いているのに、なんだか濡れている。
そして、momoさんも書かれているように、遡るほどに狭く細くなっていく感じが印象的でした。
過去の章のねちゃねちゃした感じは苦手だったんですけど、それでも読まされてしまいました。

あ、「荒野」の感想も上がってましたね♪
桜庭さんの小説は、主人公の名前も印象的ですよね。
モリミーワールドの感想も楽しみにしています。
【2009/04/24 21:31】 | つな@管理人 #- | [edit]
こんばんわ。TBさせていただきました。
この作品も重くてずしっときますよね。でも、これが桜庭作品だなとも思わせてくれる作品でした。
淳悟と花、2人の関係は決して周りにとってはいい関係ではないですよね。
でも、2人の中では確立されている。
何だか難しい問題だなぁと思います。
だんだん時代がさかのぼってくるのがちょっと救いでした。
淳悟がだんだん人間に戻っているような気がしました。2人は今どうなっているのでしょうか。
とっても気になります。
【2009/04/27 00:04】 | 苗坊 #- | [edit]
苗坊さん、こんにちはー。
うん、ずしっときましたねえ。
どろどろの「血」が、なんとも。

互いさえいれば良いという関係は、やはり二人とも大人に成りきれていない、子供だったからなのかもしれませんね。
しかし、この後の二人はどうなったのかなぁ、と考えてしまいますよね。
【2009/04/29 09:56】 | つな@管理人 #- | [edit]
結婚直前から、描かれるわけで、今後の花の結婚生活について
ちょっと意味深な感じもしますね、、。
 いやぁ血の人形、、。つなさんの記事のタイトルみて
思い出しました。かなり強烈です。
TBうまくいかなくてもお気になさらずに、、、
また、URL挟んどいてください。
【2009/06/01 00:27】 | indi-book #- | [edit]
indi-bookさん、こんばんは。

ちょうど少し前に、桜庭さんが朝日新聞に寄稿されてたんです。
藍色さんが記事書いてらっしゃるので、アドレス載せさせてもらっちゃいます。腐野花は、転生した海野藻屑であり、腐野花としては、そこまでしか書けなかったけど、彼女もまた他の作品に転生したのだとか。

http://1iki.blog19.fc2.com/blog-entry-879.html

桜庭さんの本を読む時に、つい「砂糖菓子~」を考えてしまうのも、間違ったことではないのだなぁ、と思いました。
家族と虐げられた子どもと愛。
桜庭さんご自身が家庭を持たれた今、次に描かれる作品はどんなものになるのでしょうね。

タイトル、迷ったんですが(書いちゃったら、何となくネタバレ?的な)、血の人形、強烈でしたよねー。

あ、例によってトラバとおりませんでした。涙
また、URL入れときますねー。
【2009/06/01 23:36】 | つな@管理人 #- | [edit]
>互いが互いにとって、大海で縋りつくべき唯一の浮き輪のような…。

上の引用部分を含む段落、淳悟と花の関係を的確に表現されていて、感心してしまいました。
このウロボロスのような、「どうしようもなさ」の描き方が巧みだから、花が大人になっても、結婚してさえも、この関係は断ち切れていない、と感じさせ、読者に複雑な読後感を残すのでしょうね。

トラックバックを見逃していました。ごめんなさい。父の認知症の悪化と、自分の体調不良で、3月~5月が大変でした。ようやく復活基調となってきたところです。
【2009/06/18 23:27】 | ディック #22hNL7Yc | [edit]
ディックさん、こちらもばたばたしてて、お返事遅れました。
すみません~。
ディックさんの方は、ほぼ復調でしょうか? 良かったです~。

さて、おほめ頂き、ありがとうございます♪
この「どうしようもなさ」が良く分かるから、読んでて嫌だなぁと思っても二人を断罪することが出来ないんですよね。
未来へもこの複雑な感情が残りますよね…。
【2009/06/23 23:21】 | つな@管理人 #- | [edit]












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