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「アンジェラの祈り」/灰と祈り

 2009-04-14-23:55
アンジェラの祈り (新潮クレスト・ブックス)アンジェラの祈り (新潮クレスト・ブックス)
(2003/11/26)
フランク・マコート

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「アンジェラの灰」(感想)のフランク少年が、アメリカに渡ってから。

実際、ほんとうの意味で一家がまた揃うことはなかったのだけれど、それでも一家がリムリックに張り付いていた頃よりも、幸せな日々が描かれる。ま、本当の意味で幸せか?、というと、そうでない場面もしっかり描かれるんですが。母をアメリカに呼び寄せてから。何はなくとも、きちんと入れたお茶が必要な母(というか、アイルランドの母と言えば、とりあえずお茶みたい)、狭くとも家族全員が揃って暮らしていた暮らしから、母に与えられたのはティーバックのお茶と、一人暮らし…。それでも、兄弟には既にそれぞれの生活があるわけで…。血が近いゆえの甘え、近いゆえの怒りなんかが描かれるのは、まさに大人になったからんでしょうね。

「アンジェラの灰」を読んだ時に、弟マラキの方が生きにくくて、フランクの方が生き易くなるのかも、なんて思ったんですが、実際はマラキはニューヨークに行っても、バーの経営に成功し、一方のフランクは貧しいまま。

ホテルの清掃係から、軍隊生活、波止場でのトラックの積み荷卸し、…そして高校教師へ。アイルランドにいると、アメリカに貧しい人がいるなんて信じられない。しかし、案の定、フランクの生活はかなりの貧しさ。フランクの仕送りは、弟アルフィーの新しい靴に、クリスマスのご馳走に(豚の頭から進歩してるんです!)、母とアルフィーが暮らす新しい家になる。弟たちが同じくニューヨークにやって来て、かつ彼らが成功をおさめていても、それでもフランクは仕送りは欠かしていないよう。

しかし、ふわふわとした語り口(ところどころを締めるのは、「ガッデム!」という誰かの叫びなんだけど)のせいか、時系列で何が起こっているのかは何だか分かり難いのです。一定のテンポで進んでいた前作に比べ、時間は伸びたり縮んだり。

念願の大学生となり、自分には勿体ないような美人のガールフレンドが出来、そして更に彼女に結婚を迫られても、既にそれなりの年齢になっているにも関わらず、フランクは安定を求めるのはまだ早過ぎる、と考えたりもする。マラキに比べ、堅実に生きているかのように見えても、実際は、「たいへんな一日を明日に控えた私だもの、ここは景気づけにビーンポットバーでビールの二、三杯飲むのはしかたがない。」なんて感じで、「~だもの。~なのもしかたがない。」の繰り返しで、自分にとっても甘い甘い。彼女との約束があろうが、次の日に大切な何が控えていようが、ずるずると飲みに行ってしまい、自分の世界に戻っていくことが出来ない所には、父マラキの影を感じてしまう。お金に関しては、たぶん、父よりマシなんだけど(というか、子供が沢山いないから?)。

完全な堅気の生活とは言えなくて、フランク自身が、決まりきった暮らしよりも、所謂アーティストのような暮らしを好んでいるよう。それでも、実際は弟マラキたちのようにパーティを巧みに回遊することも出来ないし、本質的にはとても泥臭いようなんだけど…。自分の世界に戻って行っても、遊んでいる誰かを考えると淋しいし、かといって遊んでいる場所にずっといても、何だか居場所がないような感じ?

高校教師になってから、評判の良くない高校の生徒たちを手懐けたようにどこかで書いてあったので、そういうお話かと思ったら、そういった部分はほんとにちょっぴり。あと、ずっと気になっていたんだけど、フランクが出会い、恋におち、結婚し、娘を設けた女性とは、違う名前が献辞にあるんですよね。そういう意味で、本作は幼少期を丹念に描いた前作とは異なり、フランクの生涯全てをきちんと追った話ではないのでした。

ほんとうに細部まで描かれた「アンジェラの灰」とは違って、細かい話もあれば、ぐーんと飛ばしてしまう部分もある。より小説的になったとでも言うのかな?

「翻訳文学ブックカフェ」(感想)より、訳者の土屋政雄さんの対談の中での言葉を引用します。

そこまでの何十年という積み重ねがあるんで、『灰』で全部を吐き出せたわけではなかったんではないかな。だから、『祈り』はまた違った新しい作品ということではなかったんでしょう。『祈り』にも『灰』を書く以前から書きためていた文章が入っているでしょうし。強いて違う点を挙げるとすれば『祈り』のほうが普通の英語になっているんじゃないかという点ですかね。全部現在形で通してる『灰』と、過去形だのなんだのが入ってきてる『祈り』という感じ。まあそれぐらいで、作家として劇的に変わったという印象はありませんよね。

『灰』も文庫で上下分冊と長かったんですが、『祈り』もまた背表紙の厚さなどが半端なく、ながーいお話です。それでも、長くて退屈するようなことはなかったです。父のエピソードも良かったな。母譲りなのかもしれないけど、何があってもフランクは人を恨むことがないのです。淡々と事実として描かれる中には、恨んでもおかしくないこともあるし、そもそも赦せないと言えば、彼らの父もそうでしょう。赦すというか、そんな弱い人を認めてあげただけなのかもしれませんが、そういう所も、このいっそ陰惨にもなってしまう話が、多少感傷的になったとしても、明るく読めてしまう一因なのかもしれません。

『灰』を読まれて良かった方は、『祈り』も読まれた方がいいんじゃないかなー。やはり、『灰』あっての『祈り』で、狭い範囲の子供の視点から語られた『灰』からすると、一気に広がった視点に最初はちょっと戸惑うかもしれないけれど。

クレストブックスお馴染みの裏表紙の書評の一人は、佐伯一麦さん。うーん、人選がいいですね、これ。
コメント
この本もまた、なかなか読み応えがありそうですね。
訳者は土屋政雄さんなんですか。
この人の訳は、「イギリス人の患者」を読んで好きになりました。
【2009/04/15 09:01】 | honyomi #- | [edit]
つなさん、こんにちは。
分厚さの割に読みやすい本でしたよね。
でも時系列の刻み方(?)がきちんとなってなかったので…

>細かい話もあれば、ぐーんと飛ばしてしまう部分もある。

ええと、これですね。
そういう意味ではちょっと分かりづらかったです。
確かに「灰」が良かったら「祈り」も読んだ方がいいと思うんですが
もしかしたら、「灰」だけでやめておいた方が
自分の読みたいように読んでいられたような気もします…(笑)

でも、こちらも面白かったですねー。
やっぱりマラキはどこに行ってもマラキなんですね。(笑)
【2009/04/16 07:00】 | 四季 #Mo0CQuQg | [edit]
>honyomiさん
こんばんはー。
そうですねえ、でも、読み応えがあるのは、やっぱり「灰」の方かもしれません。
こちらはなんだかふわふわした感じ。
土屋さんといえば、私は「日の名残り」ですかね。お、「わたしを離さないで」、「千の輝く太陽」も土屋さんですね。
「イギリスの患者」と言えば、今、マイケル・オンダーチェの「ディビザデロ通り」を読んでます♪(でも、ちょっと苦戦中…)


>四季さん
わーい、トラバありがとうございます。
あ、そうか、時系列はあってんですよね。
ただ、刻み方がおかしいのかー。
あとは、私はカットインしてくる、いろいろな人たちをいまひとつ整理し切れなかったというか…。
みんな、割と唐突に出てきませんでした?

わはは、「灰」だけでやめておいた方が、確かに好きなように想像出来たかもしれませんねー。
父はあくまであのまんまだったし、母もちょっとあれでしたものね。
でも、これ、ちょっとずるいですよね?
フランクはまた違った形で幸せになってるのかもしれないけど、そこのところはスルーだったんですもの。

ええ、文句いいつつも、でも、面白かったです。
どんな先生だったのかしら。

マラキは軽やかに回遊してましたね。笑
でも、赤髭の大男…。
【2009/04/16 22:59】 | つな@管理人 #- | [edit]












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【2009/04/15 20:56】
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プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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