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「秋期限定栗きんとん事件 上・下」/小市民シリーズ3
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「春期限定いちごタルト事件」(感想)、「夏期限定トロピカルパフェ事件」(感想)ときて、この「秋期限定栗きんとん事件」では、ラスト、とうとうこの小市民シリーズの世界は高3の秋を迎える…。春夏秋冬、ぐるっと回って、このシリーズももう少しで終わってしまうのかしら、と思うと淋しいなーー。
さて、「夏期~」で袂を分かち、それまでの互恵関係を断ち切った小鳩くんと小佐内さん。小鳩くんには、当世風の彼女が出来、一方の小佐内さんにも、また年下の彼氏が出来たよう。このまま二人は交わらぬ道を歩むかに見えたのだけれど…。
目次
第一章 おもいがけない秋
第二章 あたたかな冬
第三章 とまどう春
第四章 うたがわしい夏
第五章 真夏の夜
第六章 ふたたびの秋
解説 辻真先
このたび一人称で語るのは、「ぼく」小鳩くんだけではなく、新聞部部員の「おれ」、瓜野くん。瓜野くんは、年上とも知らず、小佐内さんにアタックをし、付き合うようになった猛者でもある。
旧態依然の新聞部を気に入らず、学外の記事を載せるべきだと、堂島健吾部長に楯付いていた瓜野くん。そこで取り上げたのが、木良市で続いていた小火騒ぎ。瓜野くんはほぼ暴走とも言える行動力で持って、犯人を捕まえようと周囲を巻き込むのだが・・・。
途中までは、「月報船戸」(瓜野くんたち新聞部が出している)の騒ぎを横目に、彼女とのデートを楽しんでいた小鳩くん。しかし、何回目かの放火で燃やされたのは、夏のあの事件に関係する車だった。小鳩くんは小佐内さんの関与を疑うのだが・・・。
互いに姿が見えないながらも、再び向き合うことになる小鳩くんと小佐内さん。読んでいるこちらの緊迫感も高まるのだけれど…。なるほどねえ、うっまいなーー。直截は見えないんだけど、どう考えても暗躍してる小佐内さんに、ちょっとにやにやしてしまいます。
確か、「マロングラッセ(仮)」だったはずが、「栗きんとん」になった理由。なるほどねえ。「栗の渋皮煮」でもいいんじゃないかと思ったけど、タイトルとしてはきついですかね。にしても、マロングラッセってああやって作るのね。め、面倒だ…。
ここへきて、自分たちがまったくの小市民ではないことを認めた彼ら。必要なのは、小市民の着ぐるみだったのではなく…。
一年たってぐるっと一回り。二人の関係は変わったのかしら? 小鳩くん、ちょっとわかり辛いデス。互いの美学にも目を向けるようになったあたり、ただの互恵関係から、やっぱり変わったんでしょうけれど。絶妙のお菓子と、楽しくスリリングな会話。
こういう放課後はやっぱり、素敵の一語に尽きる。
米澤さんの作品は読み易いし、一見可愛らしいんだけど、実際はちょっと暗いというか、ひねくれたところがあるように思うのです。でも、このほんのちょっぴり落された暗さ加減が絶妙で、なんだか後を引くんだよなぁ。