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「アンジェラの灰 上・下」/家族

 2009-03-31-20:59
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フランク・マコート

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アンジェラの灰 (下) (新潮文庫)アンジェラの灰 (下) (新潮文庫)
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子供のころを振り返ると、よく生き延びたものだと思う。もちろん、惨めな子供時代だった。だが、幸せな子供時代なんて語る価値もない。アイルランド人の惨めな子供時代は、普通の人の惨めな子供時代より悪い。アイルランド人カトリック教徒の惨めな子供時代は、それよりもっと悪い。
どこの国にも、幼いころの惨めさを得意気に語る人がいる。涙ながらに語る人もいる。だが、アイルランド人の惨めさは桁が違う。貧困。口ばかり達者で甲斐性なしの、飲んだくれの父親。打ちのめされ、暖炉のわきでうめくだけの信心深い母親。偉ぶった司祭。イギリス人と、そのイギリス人が八百年ものあいだつづけてきたひどい仕打ちの数々……。
それよりも何よりも、私たちはいつも濡れていた。(p7-8より引用)

貧乏、無知、迷信、無理解、不衛生…。まさに引用箇所にもあるように、読みながら良くこれで生き延びられたものだなぁ、と思うのです。実際、弟妹のうち、何人かは幼くして亡くなってしまうのだけれど…。いやー、実のところ人間は揚げパンとお茶、もしくはタバコとアルコールだけで生きられるもんなんでしょうか。明らかにビタミンだのタンパク質なんかが不足してます。

ところが、この前に読んだ「石のハート」(感想)なみに不幸な家庭かというと、これがそうではないんです。どん詰まりもいいところの状況にはあるのだけれど、どこか温かい視線すら感じるのです。父親の口癖、「アッハ、」は原語ではどんな言葉なんだろうな。この言葉がこの文章の独特なリズム感に一役買っているように思うのです。「翻訳文学ブックカフェ」(感想)を読んだ時に、訳者、土屋政雄さんが、この「アンジェラの灰」について言及されていたんだけど、原文の子供言葉の処理、お見事でありました。

飲んだくれの父親。お話をしてくれる父親。アイルランドのために死ぬことを誓わせる父親。少年フランク(フランキー)は父親はまるで三位一体のようだと思う。この父親が一緒に住んでいる時も全く役に立たないんだけど、家族をリムリックにおいて、お金を稼ぐためにイギリスに行ってからも、相変わらず全く役に立たないんです。週末、路地の他の家には、電信為替が届いても、マコート家に為替が届くことはない。例えば、幼い弟、マイクルなんかは、父親を見限って、母親にべったりになることが出来る。けれど、フランクにはそれが出来ない。フランクはクーフリンのお話をしてくれた父を覚えているから。長男の悲哀を感じてしまいます。

チフスで死にかけ入院した病室で、シェークスピアや詩に出会ってからが、私には俄然面白くなりました。しかめっ面で、北の出身の父親に良く似ていると言われ続けてきたフランクが、誰からも愛される弟マラキを巻き返したようにも思います。逆に大人になってからは、マラキの方が辛いんじゃないかな、と思ったり。

印象的だったのが、フランクが十四歳の誕生日を迎え、郵便局の臨時雇いになり、電報を配達をしていたときのお話。チップをはずんでくれるのは、お金持ちでは決してなく、フランクたちと同じような貧乏な人々でした。貧しく無知な中にある、信頼や感謝の念に打たれるのです。

しかし、信仰が何の助けにもなってないところが哀しくもあり。何せ「カトリック教徒の惨めな子供時代は、それよりもっと悪い」んです。司祭や教師が強要するこれは、信仰というかほとんど脅し。

これを読んでも、表題の意味は分かりません。訳者によるあとがきによると、続編「アンジェラの祈り」を読むと、この「灰」の意味が分かるのだとか。あ、アンジェラとは、フランクの母の名です。

こちらは「アメリカに渡ったマコート青年の悪戦苦闘ぶりに目を丸くすること請合い」で、「父マラキ、母アンジェラ、弟三人(マラキ、マイクル、アルフィー)にも再会できる」とのこと。そう、ラストはフランクがアメリカに渡るところで終わるんだけど、父親はイギリスに行きっぱなしだし、このまま家族が生き別れても全く不思議ではないのです(というか、父親に至っては、途中で死んでるんじゃ…、と疑っていましたよ)。マコート一家がもう一度全員揃うだなんて、この段階ではほとんど奇跡に思えるのだけれど、これがノンフィクションだというのだから凄いよねえ。

さっそく「アンジェラの祈り」も予約しちゃいました。

■Wikipediaの「クー・フリン」の項にリンク
コメント
いつも雨が降ってジトジトしているような土地、想像もつかないほどの貧しさ、ところが読み始めてクスクス笑えたりして一気にラストまでいってしまいました。「アンジェラの祈り」もいいですよ~、たしかあちらは、「ガッテム!」だったと思います。
【2009/04/01 16:51】 | 7kichi #- | [edit]
この本を読んだのが3,4年前で、記憶もぼやけてしまっていたのですが、つなさん記事+自分の書いた記録を読んで、そうだった、そうだったと思い出しました。
アイルランドというと、最近見た「マグダレンの祈り」というカトリック信仰の犠牲になったような女性達の映画も思い出しますが、独特の背景や事情があるのですね。

「アッハ」という言葉、好奇心で今本をめくってみましたが、多分'Och''Och, aye'あたりかな? 現代のアイルランドでは使うのかな~?
知り合いのアイルランド人の方からは、こういった言葉を聞いたことがありません。 

TB大量に送りますので・・・・お時間のあるときにでも。
【2009/04/02 01:22】 | 有閑マダム #.UUnsg0g | [edit]
おお、奇遇です!
私も丁度「アンジェラの祈り」に予約を入れたところなんです。
「アンジェラの灰」を読んだのは2年ぐらい前で、かなり記憶が薄れてるんですが
つなさんの感想を拝見して、徐々に思い出してきました。
続けて読もうかなと思いつつ、その時はなんだかツラくて読めなかったんですよねえ。

ツラいといえば、「石のハート」かなりツラかったようですね。
という私もツラかったのだけど…
私の感想のどこに、つなさんが興味をひかれたんだろうと思っていたのです。
あまり楽しそうには書いてないと思うのですが。(笑)
【2009/04/02 07:06】 | 四季 #Mo0CQuQg | [edit]
>7kichiさん
一階のアイルランドと二階のイタリアも凄かったですね!笑
ほんとにとんでもない貧しさだし、悲惨としか言いようがないんだけど、良く分からない明るさがありますよね。
結構な長さがありましたが、私も割と一気!でした。
今度は、「アッハ、」ではなく、「ガッデム!」がリズムを刻むのでしょうか。
週末には借りに行ける予定です♪


>有閑マダムさん
わー、沢山のトラバありがとうございます♪
3、4年前といえば、ブログの初期の頃ですよね。
記事を見に行ったら、懐かしい方のお名前も。
この頃って、既にマダムさんとお知り合いになっていた頃だったのかな。
長~いお付き合いが出来て、感謝です。

さて、アイルランドは本当に独特でしたね。
引用した箇所がやっぱり印象深いです。
「アッハ、」の原語もありがとうございますー。
おばあちゃんや、おばさんの「われ」という言葉もそういえば印象的でした。
アイルランドの古い言葉なんですかね?
トラバ、後ほどお返しにあがりますねー。


>四季さん
こんばんはー。
わー、ほんと奇遇ですね。
でも、四季さんの記事の方が先になりそうです。笑

辛くもあったんですが、「石のハート」と比べると、全然明るいな~、と。笑
フィクションとノンフィクションを、比べるのもおかしいですけど。
や、「石のハート」はですね、読もう!、と思ったときって、記事をあんまりきちんと読まずに、さらっとだけなぞっちゃうんですね。
で、勝手にサスペンスチックな話なのかなー、と思って借りてきたんですよ。
そしたら、もう辛くて辛くてー。
後できちんと読んだら、四季さんも辛いって書いてあったなぁ、と。
ちょっとクレストブックスのブランドにだまされました。笑
【2009/04/02 22:00】 | つな@管理人 #- | [edit]
この本は、読んでませんが
映画を見ました。

ほんとに、壮絶な貧しさでしたね。
あのジメジメ感は、すごかったです。

本も読もうかと思いましたが、
気が滅入ってくるようで
まだ、読んでません。

これを機会に、本にもチャレンジしてみます。(*^_^*)
【2009/04/05 08:58】 | honyomi #- | [edit]
honyomiさん、こんばんは~。
映画をご覧になったのですね。

私は逆に映画の方は全然知らないです。
でも、貧しさとジメジメ感がしっかり出ているんですね。

壮絶な貧しさですが、不思議と気が滅入る感じは、私はなかったです。
ただ、けっこうな長さですけど。

続編の「アンジェラの祈り」を借りてきたら、これがまたえらい分厚くて、ちょっとビビってます。笑

「灰」のhonyomiさんのご感想を楽しみにしてますね。
【2009/04/05 22:11】 | つな@管理人 #- | [edit]












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