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「千の輝く太陽」/太陽は輝くの?

 2009-02-08-01:39
千の輝く太陽 (ハヤカワepiブック・プラネット)千の輝く太陽 (ハヤカワepiブック・プラネット)
(2008/11/25)
カーレド ホッセイニ

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日の光の下では人はみな平等で、どんな時も太陽は輝き、私たちに光を、温かさを届けてくれる。雨の日や曇りの日があったとしても、太陽はその奥で輝いているもの。それが千もあるのだとしたら、どれだけの輝きが与えられるのだろう…。

しかし、もし実際そんなことがあったとしても、それは幸せな一部の世界の人間だけなんだなぁ、ということを、打ちのめされるような気持と共に実感してしまった物語です。
私生児(ハラミー)として生まれた、アフガニスタンの少女マリアム。父親の家庭から疎まれた母子二人は、ヘラートの町全体を見下ろす丘に建ったコルバ(小屋)に暮らす。週に一度はコルバを訪ねてくる、父ジャリールは甘い言葉でマリアムを蕩けさせる。一方の、母ナナは娘マリアムの目から見ても、僻みの強い頑な女。しかし、父ジャリールが本当にマリアムのことを思うならば、こんな人里離れた隔離された暮らしを続けさせるわけもなく、ジャリールが語る言葉はまさにただの甘言だった。

世の中のことを知らなかったマリアムの純粋な気持ちから出た行動は、取り返しのつかない悲劇を生む。コルバに閉じ込められるような生活は終わったけれど、それは同時に少ないけれども、二人の母子を訪ねてくれた数少ない人たちとの繋がりをも断ち切られるものでもあった。

マリアムは齢、十五にして、故郷ヘラートを離れ、カブールに住む、カンダハル生まれのパシュトゥン人に嫁ぐことになる。年齢は四十から四十五、ラシードは靴屋を営む大男だった。ナンとムース、名誉と誇りを何よりも重んじるというラシードにより、マリアムは抑圧された日常を生きるようになる。外に出るときは当然ブルカ、女の顔はその夫だけのもの…。それでも、結婚当初はそれなりに気を使ってくれていたラシードも、マリアムの度重なる流産のせいか、彼女の美しくない顔立ちのせいか、まるで物のように彼女を扱うようになる・・・。
マリアムとラシードが暮らすデーマザン地区には、ラシードが嫌うモダンな家族がいた。幸せそうに見えたこの家庭も、クーデターにより父バビが高校教師の職を失って以来、さらに二人の息子がソ連とのジハードに行って以来、すっかり壊れてしまっていた。心を凍らせてしまった母、優しさを失わない父のもとで、少女ライラは育つ…。

そして、カブールの街にロケット弾が飛び交う日がやって来る。幼馴染の恋人、タリーク一家はカブールを離れることを決め、ライラにも着いてくるようにと勧めるのだけれど、ライラは父バビを見捨てられず、一方の父バビは心が壊れてしまった最愛の妻を見捨てられない。
そうして、マリアムとライラの人生が交わるときがやって来る。ライラはラシードの第二の妻になったのだ…。ラシードは、美しい少女、ライラをあわよくば妻にしようと狙っていた。マリアムの新婚のときとは全然違うその扱いには、切なくもなってしまう。ラシードの女性の扱い方は、それが良いものであっても悪いものであっても、決して羨ましくなるようなものではないのだけれど。

実はライラにはラシードとマリアムの元に身を寄せなければならなかった理由があり、最初はライラにラシードを盗まれたと感じていたマリアムにも、転機がやって来る。暴君であるラシードのもとで暮らす女二人。それぞれ協力し合えることも増えてくるのだけれど…。
第三部の後半からは、本当に涙、涙です。

磁石の針はいつも北を指し、責める男の指先はいつも女を指す。

神が大いなる許し手であり、天と地をを作りたもうたものであり、日と月を従わせるものであり、圧倒的な平和と安心の感覚の中、マリアムが逝ったのだとしても、それにしてもこれはあまりに辛すぎる。安易な救済は全くないし(ライラに関してはある、と言えるかもしれないけれど。でも、それは文中にもある通り、無償の幸せではない)、父、ジャリールとの和解のチャンスもあったのに、すべては遅すぎた。

しかし、救済が与えられたライラは勇敢な女性でもあった。己だけを幸せな境遇に置くことはせず、彼女は愛する国のため、彼女が愛した女のために、カブールへと舞い戻る。

ヨセフはカナンに戻る。嘆くなかれ、
あばら家はバラの園に変わる。嘆くなかれ。
洪水が起こり、生けるものすべてを溺れさせるとき、
ノアが台風の目にて汝を導く。嘆くなかれ。

輝きは外から与えられるものではなくて、内から溢れ出るものかもしれない。そうして、誰かが誰かの心の中で輝くものなのかもしれない。何人のマリアムが、ライラが、バビが、タリークがいるのだろう、と思うと、本当に気が遠くなるし、決して楽しい読書ではないのだけれど。読んだ人の心の中で、マリアムとライラが輝く二つの点として、残るような気がします。

引用した「ヨセフは~」の部分は、ハーフェズのガザル詩(Wikipediaにリンク)の四行だそうなんですが、嘆くなかれって言われたって、そりゃ嘆くよーーーー!!!としか言いようがない物語だけど、上を見て前を見て少しずつでも状況が良くなっていくといいな…。そんな簡単な話ではないのだろうけれど、ね。
■関連過去記事■
「アフガニスタンの少女、日本に生きる」 /アフガニスタン
fc2のもの→リンク
過去のamebaのもの→リンク

amebaの方では、ちょうど、この記事にもコメント&トラバ頂いた、有閑マダムさんのコメントもありますね~。しかし、昔の記事って、コメント欄でどんどん話が転がってるなぁ。とらにーさま、最近、お話してないけど、お元気かなぁ。
コメント
カーレド・ホッセイニさんは上手いですね。
「君のためなら千回でも」でも泣かされましたが、こちらの作品は腕に磨きがかかっていると思いました。今度こそ映画化されたら必ず見ようと思っております。
【2009/02/09 09:25】 | 7kichi #- | [edit]
7kichiさん、こんばんは。
しかし、もうこの巧さで描かれる世界に、すっかり打ちのめされてしまいました。
最後の方は読むのが苦しくて…。
希望もあるけど、状況が厳しすぎますよねえ。
世界は何でこんななんだろう、と思ってしまいます。
「君のためなら千回でも」。こちら、映画も本も気になるなぁ、と思いつつ、そのままです。
どちらも評判がいいですよね。
【2009/02/09 21:55】 | つな@管理人 #- | [edit]
つなさ~ん!
この本、特に私たち女性が読むにはほんとうに苦しいですよね。
こんなこと、あっていいのか?と思うようなこと、世界にはいっぱいあるんだなーって・・・
楽しい読書どころか、胃の中がひっくり返りそうになったりしながらなのに、読み始めるとぐいぐいと先に引っ張られますよね。

君のためなら千回でも、も是非に。
私はこちらのほうが小説としての完成度は高いと思いますよ。

【2009/02/11 13:34】 | 有閑マダム #.UUnsg0g | [edit]
有閑マダムさ~ん(ひし<抱きついてみました。笑)!
いやー、ほんとに苦しくて。
ちょうど、昔読んだ記事を思い出したので、追記しておきました。
ほんとに、胃がでんぐり返りそうでしたよね…。
美しさもあるにはあるけど、それにしても辛い。
ちょうど、今日のニュースで、カブールでまたタリバンの襲撃があったと報じられていました。
テレビに映るカブールは、埃だらけの街でした…。
戻って行ったライラのような人たちにとっても、まだまだ安全な街ではないのですね。

「君のためなら~」もいつか必ず読みます!
こっちは少年の分、ここまで辛くはないのかな?と思ったんですが、あらすじを読むと、こちらも弱者という点で辛そうなお話ですね…。
【2009/02/11 23:16】 | つな@管理人 #- | [edit]
この本の中でも、タリバンがどれだけ女性の権利を目の敵にしているかがわかりますよね。
私が最近読んだニュースでは、登校中の小学生の女の子に、道で
「学校に行くのか?」と声をかけて、
「そうよ」
という返事が返ってくるなり、顔に塩酸をぶっかけるタリバンの襲撃がたくさん出ているとか・・・
女学校そのものに火をつけたり、爆弾を仕掛けたりもありますが、何の罪もない小さな子供にそんなことをするなんて、心から怒りが湧きます。
親としては、もう怖くて学校になんか行かせられなくなるところけれど(もちろん、本人も怖いだろうし)、そうするとまさにタリバンの思う壺なので、退院次第すぐにまた通学させる、と語るアフガン人の親御さんのインタビューに、彼らのしんの強さも感じました。
それだけ、すべてが戦い、になってしまっているわけですね。
ほんとうに、平和を祈ります。


【2009/02/12 10:34】 | 有閑マダム #.UUnsg0g | [edit]
うわぁ、そんなことが…。
タリバンもタリバンで、年端もいかない子がやっていたり、本当にそれが「よいこと」であると信じ込んでいるところが、また暗澹としてしまいますよね。

親もすごいなぁ。
本当に日々が戦いなんですね。
覚悟が違いますよね…。
【2009/02/13 23:58】 | つな@管理人 #- | [edit]












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    今までよく知らなかった、アフガニスタンという国について注目する機会を与えてくれた、 映画「君のためなら千回でも」(過去記事リンク) と、その原作「The Kite Runner」(過去記事リンク) は、すばらしい作品でした。 The Kite Runner の作者によるこちらの...
【2009/02/11 13:43】
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プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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