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「メモリー・キーパーの娘」/人は悲しみから逃れることが出来るのか?

 2009-01-20-23:57
メモリー・キーパーの娘メモリー・キーパーの娘
(2008/02/26)
キム・エドワーズ

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人は悲しみから、不幸と思われる事柄から逃れることが出来るのだろうか?

きっとそんなことは不可能で、誰か守るべき人、守りたいと思った人の行く道から、石ころや岩(と思われるもの)を全て取り除いたからといって、それでその人が満足し、幸せになるとは限らない。

だって、丸ごとの不幸などというものは存在せず、不幸(と思われるもの)の中にも喜びや、幸福があるものだから…。ある事柄をごっそりなかったことにされたとしたら、引き剥がされてしまったら、その喪失感はいかほどのものなのだろう。

若き外科医師、デヴィッドの妻、ノラは、初めての子をある雪の日に産み落とす。子を取り上げるはずだった、デヴィッドの同僚の医師は、雪のために出産に間に合わない。デヴィッドは自ら、子供を取り上げるのだが…。

元気な男の子の次に、ノラの産道を通ってきたのは、ダウン症の女の子だった。ノラは双子を身ごもっていたのだ。1960年代、ダウン症についてはまだあまり知られておらず、自分の妹の経験からも、心臓に欠陥があることを恐れたデヴィッドは、有能な看護婦、キャロラインにその女の子を託す。施設に預けるようにと…。

高齢出産の両親から生まれ、幼いころから注意深く育てられてきたキャロラインは、ここへきて、自らのこれまでの生き方を覆す決断をする。彼女がその女の子、フィービを連れていった施設はそれ程にひどかったのだ。ここから、キャロラインの人生は思いもかけない風に変わっていく…。

変わっていったのは、ノラとデヴィッドの夫婦もそう。ノラは健康な男の子、ポールの誕生よりも、喪われた女の子、フィービの死を悼む。デヴィッドはフィービは死産であったと伝えたのだ…。そうして出来る、夫婦の間の隙間風。デヴィッドのついた嘘が、二人の関係をも変えていく…。

結婚当初、守られるばかりであったノラは、喪失感を埋めるために、しゃにむに様々な分野で活躍し、自立した女性になっていく。それは自らの意図した範囲を超えた成功だったとも言える。一方のデヴィッドは、全ての場面を記録せずにはすまないとでもいうように、写真へとのめり込む。そう、彼は「メモリー・キーパー」とでもいうべき存在になったのだ…。また、デヴィッドは自らを後ろめたく思うあまり、責めるべき場面においても、ノラを責めることはない。二人の関係は勿論、息子、ポールの精神にも影を落とす…。妻と息子、二人がデヴィッドに感じる高い透明な壁…。

人生には元に戻すことの出来ない、不可逆点が存在するし、そうかと思えば、予想もしていなかったことに巻き込まれることもある。そう考えると、人生設計ってなに~?、と思ったりもするんだけど…。

みんながあまりに切なくて、フィービの明るい歌声があまりに素敵で、最後はやたらと泣けてしまいました。以前に読んだ「時のかさなり」(感想)ではないけれど、人にはそう行動するだけの理由や、それまでの経験、歴史がある。貧しい家に生まれ、太陽のように皆を繋ぎ止めていた妹を亡くしたデヴィッドの気持も良く分かるのです。自分がしたような経験を愛する者にさせたくはなく、残った子供であるポールには、出来るだけのことをしたのだけれど…。

それでも写真のように、時が留まることはない。時は移ろい、人は変わっていく。いくら近しい人だからといって、その人の人生を代わりに請け負うことは出来ない。その存在に勇気づけられることがあっても、ね。

 高く透きとおる彼女の声は木の葉の合間を縫い、陽射しをすりぬけて流れていく。砂利に、草叢に、ぶつかって弾ける。水に小石を落とすように宙で音符が弾むと、見えない水面に波紋が広がる。音の波、光の波。父はすべてを固定しようとしたが、世界はつねに流れ移ろい、留めることなどできない。
 ひるがえる木の葉。なめらかに注ぐ日光。(p543より引用)

同じ一瞬がないからこそ、人生は美しい。
目次
1964
1965
1970
1977
1982
1988
1989
コメント
わ~、読まれたのですね!!

つなさんの記事を読んで、再びこの本の世界が心の中に蘇りました。
妻を守りたい一心でついた嘘が、夫婦の間の溝をどんどん深くしてしまう事実。そんな嘘をついてしまったデイヴィッドの生い立ち。
切ないです。
人間って、人生って、ほんとうにどれだけ注意深く最善を尽くしているつもりでも、思わぬ方向に向かうことがいっぱいありますよね。 でも、逆に、思わぬ方向に行くからこそ救われる局面もありますけれど・・・。

【2009/01/22 12:52】 | 有閑マダム #.UUnsg0g | [edit]
そうでした~。
有閑マダムさんと樹衣子さんのやり取りを見ていたはずなのに、マダムさんとこが原書(でしたよねえ?)だったからか、トラバを頂くまで、すっかり忘れていましたよ…。

いやー、良かったですねえ、これ。
すっかり引き込まれました。

デヴィッドの生き方は本当に切なかったですよね。
終盤から出てくる「彼女」には、他人だからこそうまく出来ることや、今度は間違えないことも出来るのかなぁ、と思ったり。
でも、なんか、ほんとうに「メモリー・キーパー」というか、ただ大きく慈しむような視線ですよね。
隣で一緒に戦ってくれる視線ではないのかもしれません。
最後のノラの「赦そうとしている」ところも良かったですよね。

キャロラインはあの選択をすることで、豊かな人生となったわけで…。
なんだか嘆息してしまいますよね。
物語ではあるわけだけれど、すっかり彼らの人生に入り込んでしまいまいた。

ブログ名が変わられてからは、初トラバでしょうか♪
このあと、お返ししますねー。
【2009/01/23 00:34】 | つな@管理人 #- | [edit]
私もコメントに参加します。
つなさんもこの本をお読みになったのですね♪
振り返れば、それぞれの人物描写がとてもよく描かれていたと思います。そのため物語の展開がとても理解できたし、彼らの人生や人間像自然に共感でき入り込めました。

余談ですが、この表紙が雰囲気をかもし出し、内容にあっていました。これほど、ぴったりの表紙もそうそうない・・・。
読書は本当に楽しいですね!
今年もよい本とよいブログ仲間の出会いを期待したいです。


???「カニバリストの告白」?つなさん・・・そんな本読んじゃったのですか!

【2009/01/29 22:34】 | 樹衣子 #- | [edit]
樹衣子さん、ご無沙汰してます♪
コメント参加ありがとうございまーす。
といいつつ、思いっきり、お返事が遅れてしまってすみません…。

そうなんですよねえ。
すごく丁寧に書いてあるから、登場人物それぞれにすっかり入り込んでしまいました。

この表紙もタイトルも、最初はなんだか不思議だなぁ、と思ったんですが、途中くらいから、おお、合ってるなぁ、と思いました。
うんうん、読書は楽しいですね♪
今年もよろしくお願いします。
って、おお、もう2月だ。笑

そうなんです、「カニバリストの告白」読んじゃいました。
しかも、まんまでした~。笑
【2009/02/03 00:02】 | つな@管理人 #- | [edit]












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    アジアで数年暮らした後、アメリカに戻って思うのは、 何らかのハンディキャップを抱えている人にとって、本人も家族も堂々と暮らしていきやすい社会 ということ。 例えば、車椅子の人にとってどれだけ普通に生活できるか、とか。 精神的に不安定だったりすることも...
【2009/01/22 12:55】
  • 「メモリー・キーパーの娘」キム・エドワーズ著【千の天使がバスケットボールする】
    アメリカの女はたくましい。母であり、妻であり、娘である前にひとりの人間として、そして女として自分の人生をきりひらいていく。嘘や秘密ものりこえて。 1964年3月、ケンタッキーではめったにない大雪の深夜。医師デイヴィッドは、新妻のノラとの初めての我が子をその
【2009/01/29 22:21】
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プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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