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「タタール人の砂漠」/人生というもの

 2008-10-07-23:32
タタール人の砂漠 (イタリア叢書)タタール人の砂漠 (イタリア叢書)
(1992/01)
ディーノ ブッツァーティ

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できれば本に埋もれて眠りたい」のbookbathさんにおススメ頂きまして、読んだ本です。新訳、「神を見た犬」も気になるディーノ・ブッツァーティ。とは言いつつ、お勧め頂かなければ、きっと読まなかった本。ブッツァーティの没年は1972年とのことですが、全く古さは感じませんでした。

「訳者あとがき」にて、これは幻想文学である、と書かれているんだけど、じーつーはー、全く「幻想」だなんて思わずに読んでました。そんな私の本の読み方は、実は素直すぎるかもしれないなんて、最近良く思ったりもします。そのまんまの意味にとりすぎ?汗

さて、物語は青年将校、ジョヴァンニ・ドローゴの生涯をたどる形で語られます。

任官したばかりのドローゴは、町から離れた、古い古いバスティアーニ砦に配属される。国境にある砦としての、重要な時期は既に過去のものであるというのに、それでも砦では、儀式めいた昔ながらの滑稽なほどの厳重な警備が日々繰り返される。

当初、直ぐにこの砦を去るつもりでいたドローゴは、何かを待ち続けるような砦の古株の将校たちにつられてか、自ら砦に残ることを志願する。去って行く者もいれば、残る者もいる。くだらない事で命を落とす者もいれば、後に羨ましく思われるようなやり方で、命を落とす者もいる。そうして、本当に砦を去りたいと思った時には、去ることも出来なくなっているのだ…。そして、ドローゴの掛け替えのない青春の日々は、自身すら気付かないままに、過ぎ去っていく。

ドローゴは、ただただ何とも知れないものを待ち続け、日々は無為に過ぎ去り、年だけがただ重ねられていく。

砦には何も起こらないかといえば、そんなこともなく、ある日、見つけたのは砦の向こう、北の荒野に見える、一筋の小さく黒く細い線。とうとう、待ち続けたその時が来たのだろうか? しかし、その期待は裏切られる。それは、国境を確定する任務を帯びた北の王国の部隊であり、砦の者たちが待ち続けた戦はまだ来ない…。

時が流れ、ドローゴはもはや、彼の古い友人である町の人間と相容れなくなった自分を知る。友人たちが家庭を作り、子をなし、財をなしていく中、彼には砦で待つ僅かな期待しかない…。恋人と言って差し支えなかった、友人の妹とも最早共に生きていくことはないであろうことを知る。

更に時が流れ、友人たちが孫に囲まれ隠居生活を送る中、ドローゴに与えられたのは病。そうして、とうとう砦に待ちに待ったその日がやって来たというのに、病を得たドローゴは砦を追い出され、更には一人、死に向かうことになる…。
人生は、何の保証もないものをただ待ち続けるには短過ぎて、またそのタイミングは時に皮肉であったりもする。ドローゴの周りの人たち、後にドローゴ自身がその姿となる、待ち続けたオルティス大尉、自らの美学に従って死出の旅へ出たアングスティーナ、待ち続けたことで希望に対して臆病者となったフィリモーレ大佐も印象深い。

人は生きる時も死ぬ時も、結局は一人。運命は人の思うようにはならず、時には皮肉としか思えない運命を与えられる者もいる。自分の思うようになるものは、「死」に向かうその姿勢でしかないのだろうか。

ペシミスティックなのかなぁとも思うけど、登場人物たちそれぞれが印象深く、味わい深い物語でした。情景も美しく、読む時期によって、文章から感じ取るものも違いそうです。bookbathさん、読んで良かったです! おススメありがとうございました♪
コメント
読んでいただいてありがとうございました。
何も考えずに薦めてしまったのですが、さすがつなさん、楽しんでいただけてよかったです。
ストーリーらしいストーリーがないので、心配しましたが杞憂でしたね。

個人的には、待ちつづける磨耗していく日々にしびれました。
いったい砦を去るための分水嶺はどこだったんだろうと。

>読む時期によって、文章から感じ取るものも違いそうです。
なるほどこれもおっしゃるとおりですね。

「神を見た犬」もいいですよ。玉石混合ですが、表題作だけでも読む価値があります。ひまができたら読んでみてください。

しかし「タタール人の砂漠」ほかに読んでいる人とか、いるんですかね。
【2008/10/12 02:36】 | bookbath #- | [edit]
こんばんは。
「タタール人の砂漠」、私の好きな作品のひとつです。

この作品、私も幻想文学と考えずに読んでいました。
気がついたら人生最良の時は過ぎているとか、人生を棒にふるとか、なにか自分ではどうにもならないものに飲み込まれる感覚とか、「タタール人」は淡淡と奇妙にリアルで、あまり「幻想」ではないかなと。
「幻想文学」というと、ボルヘスみたいにもっとありえない感じの抽象的な世界観かなと勝手に理解しています。

クッツェー「夷狄を待ちながら」、ジュリアン・グラック「シルトの岸辺」も似たような雰囲気の作品です。
待ちぼうけ小説としては、やっぱり「タタール」が一番好きですが、良ければぜひ。
【2008/10/13 00:38】 | ふくろう男 #EaNH9XtA | [edit]
>bookbathさん
こちらこそ、ご紹介ありがとうございました♪
待ち続ける日々、なんかねえ、こう起伏のない人生送ってんな~、と思うと割とくるものが…。
そうでなくとも、サラリーマン的にもぐっとくるような気がします。
根拠のない予感を持ったまま待ち続けるもの、出て行ったもの、本当に何が分水嶺だったんでしょう。出て行った者にも、また彼らの砂漠があったのかもしれませんが…。
「神を見た犬」も機会があったら読んでみようと思いまーす。
そして、うふ。ちゃんと「タタール人の砂漠」を読まれた方がいらっしゃいましたよ!うわーい。
ふくろう男さんとこは、海外文学中心と銘打たれているだけあって、それこそこういった系統の本の記事が充実してますよー。素敵です。

>ふくろう男さん
トラバありがとうございます♪
このあと、こちらからもお返ししますね。
淡々とリアルでしたよねえ。いわゆる「幻想」ではなかったけれど、でも、書いた後で何なんですけど、これもまた「幻想」だったのかなぁと思いました。
幻影を待ち続ける日々。「待ちぼうけ小説」というカテゴリーもいいですね♪
他の作品のご紹介もありがとうございます。
「夷狄を待ちながら」は、かろうじて名前を聞いたことがありますが、「シルトの岸辺」は全く知らず~。
またしばらく時間を置いてから、読んでみたいと思います♪
ありがとうございました!


【2008/10/13 21:54】 | つな@管理人 #- | [edit]












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「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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