スポンサーサイト
新しい記事を書く事で広告が消せます。
「海の底」/熱き血潮を
![]() | 海の底 (2005/06) 有川 浩 商品詳細を見る |
陸空ときて、これが「海」ですね。此度、地上を襲うのは、突然海からやって来た、赤い巨大甲殻類。正体はおいおい明かされるけど、つまりは赤くどでかいエビが地上を荒らすのです。
「塩の街」、「空の中」と違うのは、ヒーロー側が二人であることでしょうか。「塩の街」でも、秋庭と入江という二人の男性が出てくるけど、あれってコンビとは言えないしなぁ。
桜祭りで賑わう米軍横須賀基地を、突然襲った赤い巨大甲殻類。逃げ惑う人々は、文字通り甲殻類たちに、「食われて」しまう。その時、米軍横須賀基地内の海自施設近くに、二人の実習幹部を乗せた潜水艦、『きりしお』がいた。
『きりしお』に出された突然の出航命令。出航不可であれば、そのまま艦を捨てて陸へあがれ、との有り得ない指令。何が何だか分からないまま、乗員は陸へと上がるのだが…。
夏木、冬原の二人の実習幹部は、艦長の死という大きな犠牲を払いながら、桜祭りを見に来ていた子供たちと共に、『きりしお』内に立て篭もることになる。子どもたちの中の唯一の女性、高三の森生望、彼女を異常に敵視する、中三の遠藤圭介、圭介の顔色を伺う他の子どもたち、望の喋らない弟、翔。小一から高三まで十三名の子どもたち。彼らが住む町内の歪みが、そのままこの狭い潜水艦の中でも、拡大される。
秩序を作り、生活することで手一杯の潜水艦の中。大人は、夏木、冬原の二人のみ。料理を作ったこともなく、もちろん子供の世話をしたことなどない。加えて、まだまだ若い彼ら二人は、(仕方のない事情とはいえ)、この子供たちのせいで、艦長を亡くしたばかり。色々な感情を飲み込みながら、二人は潜水艦内での子どもたちとの共同生活を軌道に乗せる。
一方、地上では自衛隊の出動が許されないまま、機動隊を中心とした警察主体の応戦が続く。神奈川県警への応援を開始していた警視庁に加え、警察庁と関東管区警察局からも人員が選出され、神奈川県警による対策本部に合流する。その名も、『横須賀甲殻類襲来事件』現地対策本部。指揮を執るのは、エリートである警察警視庁警備部参事官の烏丸。こちらは叩き上げで、問題児でもある県警本部の警備課、明石警部と二人、コンビを組んで、自衛隊へのリレーを落とし所として奮闘する…。
対応できる武器を所持しつつも、出動命令がないと動くことが出来ない自衛隊、何の装備もないまま戦わなくてはならない警察。どちらも苦しいのです。
ここでも勿論「恋愛」が出てくるわけで、それはぶっきら棒な優しさをもつ夏木とのお話。ふつーは、人当たりが良く、外面の良い冬原の方に懐くんじゃ?と思われつつも、森生・姉が心を寄せるのは、冷たい冬原よりも、熱さをもった夏木なんですねー。五年で三尉から二尉になってるっていうのは、順調な昇進コースと言えるのでしょうか? 思わず自衛隊の階級を調べてしまいましたが、良く分からん…。とりあえず、夏木、冬原の二人は大卒なのね、ってことしか分からず。
これにて、有川さんの自衛隊三部作を無事読み終わりました♪ これって、陸海空がそろっただけではなく、男性陣の名前には春夏秋冬も揃っているんですねー。「クジラの彼」には、「海の底」では多少冷血漢にも描かれる冬原が出て来るのだとか。こちらも読まなくては! しかし、「沈む」ではなく「潜る」。それはいいとして、潜水艦乗りは、タクシーにも乗車拒否される程の悪臭を放つってのは、本当なんですかねー。うーむ、恐ろしいぞ。
CONTENTS
一日目、午前。
一日目、午後。
二日目。
三日目。
四日目。
五日目。
最終日。―そして、