「ショコラティエの勲章」/甘いミステリー
![]() | ショコラティエの勲章 (ミステリ・フロンティア 44) (2008/03) 上田 早夕里 商品詳細を見る |
タイトルを見て、食&ミステリーのジャンルも豊作となって、随分細分化されるようになったんだなー、と思ったんですが、表紙の大人っぽい雰囲気そのままに、なかなか楽しめる作品でした。細分化されちゃうことで、お話が固定されちゃうことを懸念したんだけど、お話のバラエティという点でも文句はなかったです。
人気ショコラトリーのシェフを探偵役に、お隣の和菓子屋の売り子の女性をワトスン役とした、連作集。ショコラトリーと和菓子屋、異なるお店を配置することで、お話が一本調子にならず、同じ甘みに食傷することもないのかも。
目次
第一話 鏡の声
第二話 七番目のフェーヴ
第三話 月人壮士
第四話 約束
第五話 夢のチョコレートハウス
第六話 ショコラティエの勲章
語り手は、老舗の和菓子店、<福桜堂>の売り子をしている、絢部あかり。上等の上生菓子を売っているという誇りを持ちつつも、時にそれが時代遅れのように感じ、揺らぐこともある。特に、隣のショコラトリー、<ショコラ・ド・ルイ>の賑わいを見た時などは。短大卒業後、五年間勤めた会社が倒産し、仕方なしに父が工場長を務める、<福桜堂>の売り子になったあかり。あかりにとってこれは単なる臨時の職なのだが…。
えーー、ここで解かれるのは、所謂日常の謎系のミステリとでもいいましょうか。店頭で消えた商品の謎、結婚祝いの焼き菓子に入っていた、七個目のフェーヴの謎、<福桜堂>の競作菓子の謎、などなど。
人が死なないミステリーで、描かれるのも大抵は人の心の機微。探偵役の長峰シェフも、優しいだけではなくって、いかにも職人的な厳しさもある。ちょっと良く分からなかったのが、語り手のあかり。洋菓子にも和菓子にも矢鱈と詳しく、舌も確かみたいなんだけど、今の仕事も「臨時」と言っちゃうし、少々ね、まだ若いのにそんなに引いちゃうことないんじゃない?と思ったり。も少し、この仕事が好きだー!とか、将来こうしたい!、とかいうのが、あってもいいんじゃない?などと思うのでした。いや、そこ主眼じゃないんだろうけどさ。でも、職人同士の絆を羨ましがったりしているわけだし、傍観者でい続けることもないと思うのです。あと、SNSのオフ会などが出てくるところは、いかにも時代なんですかねー。
さて、この中で私が一番好きだったのは、「約束」。<ショコラ・ド・ルイ>の沖本に誘われて、南仏料理のレストランへと出かけたあかりは、そこで沖本と長峰シェフが共に過ごした東京のパティスリーでの話を聞く。軽薄なように思えた、沖本の同期の梅崎が、テレビ出演に拘ったり、フルーツタルトに拘ったわけとは…。
しかし、どうしたってこれ、美味しいお菓子が食べたくなりますよーー。美味しいお菓子と、それに合う飲み物を用意して読み始めるのがベストですね。うーん、神戸はお菓子が充実してそうで、いいなー。
関係ないけど、東京創元社のミステリ・フロンティアを読むのも随分久しぶり。いつの間にやら、知らない作家さんも増えてるなぁ。




