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「古城ホテル」/扉を開けよう

 2008-09-07-22:55
古城ホテル古城ホテル
(2008/03/20)
ジェニファー イーガン

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なんだか、表紙がおどろおどろしい雰囲気だし、扉には「ゴシック・ゴーストストーリー」とあるし、イーディス・ウォートンの「幽霊」なんかを思い出したんだけれど、実際、多少怪しげな人物も出て来るものも、これはそちらに主眼を置いたお話ではないのでした。まさに「古城」の「ホテル」。原題は「THE KEEP」とあり、keepには「(城の)天守閣」という意味もあるそうなので、これは作中の老男爵夫人が立て篭もっている塔のことを示しているのかなー。

第1部、冒頭は、ダニーなる人物が、崩壊しつつある城の前で、敷地に入り込む方法を探している場面から始まります。段々と明らかになるのは、ダニーがこの国すらも分からない土地に来る羽目になった事情。現実的な面からすれば、人生の大半をくだらないことに費やしてきた男、ダニーは働いていたレストランでのトラブルのために、ニューヨーク以外の場所に逃げ出す必要があったのだ。

トラブルに巻き込まれていたダニーのもとに、送られてきたのは従兄のハウイーからの城までのチケット。空想好きで、ぽっちゃりした体型、養子であったハウイー(改名してハワード)は、今では人生の成功者となっており、これまで得た資産を注ぎ込んで、城を改装してホテルにするという夢に乗り出していた。ダニーは城の改装を手伝うために呼ばれたというわけ。

読む進むうちにさらに明らかになるのは、このダニーの物語が、実は作中作であるということ。この物語は、刑務所の囚人であるレイという人物が、創作クラブの教師、ホリーに促されて書き始めたものだったのだ。

力あるものとなったハワードのもとには、No.2であるミックや、多くの学生たちがいた。ダニーの力添えを必要とする場面など、ほとんどないかと思われたのだが…。ハワードはダニーの何かを信じていたのだ。両親からも、誰からも信頼されなくなっていたダニーであったのに…。

ダニーの物語を書き続けることで、刑務所にいるレイの周囲にも変化が訪れる。物語の力に引き込まれる囚人たち、そして創作クラブの教師、ホリーもまた…。
うーん、こうやって説明しちゃうと、面白さが伝わらないんだけど、小出しにされる情報につられて、どんどんページを繰ってしまうのよね。だいたい、ダニーの容姿なんかも最初は分からなかったのが、実はこんなぎょっとする姿だったりしてね。

ノラが見たダニーの姿はこんなふうだ。真っ白な肌を真っ黒な服が覆っている。ダニーはもともと白い肌を、ジョンソンのベビーパウダーでさらに白くしていた。黒く染めたまっすぐな髪を、襟足よりも一インチほど長く伸ばしている。ルビーのついた錫製のリングピアスを片耳にしている。今日は(いつもというわけではない)泥のような色の口紅を塗っている。
これがダニーのスタイルだった。何年もかけて身につけた、たくさんのスタイルのうちのひとつだ。

ダニーは割とどうしようもないところもあるんだけど、大勢の知り合いの中で、器用に動き回る術に全力を掛けるところなど、現代の若者風なところもある。関係性ばかりを気にしちゃうんだよね。周囲が自分より大人であることを望んでいたのに、いつからか、周囲は自分より年下の、でも、社会的には「大人」ばかりになっていた、とか、憎めない可哀想な大人なんだよなぁ。

老男爵夫人については、怪しげなところもあるんだけど、それを除けば、実は割と現実的なお話でもあります。出てくるのは、たくさんのドア。それは現実に存在するものもそうだし、心の中の扉であることもある。彼らがそれぞれに抱えていた扉。よーく考えれば、決して明るい話ではないというのに、それぞれが扉を開けていくさまが、心地よいです。特にラスト、とある人物が、日常を離れて非日常の扉を開く場面には、その他諸々もある関係で、ぐっときちゃうな。うまい!

最初に書いた、原題の”keep”。訳者あとがきにきちんとこう書いてありました。

なお、原題の"keep”というのは、城壁の内側に造られた最も頑丈な塔で、日本の城では天守にあたる建物である。戦闘の際には防御の最後の砦となり、敵の侵入を防ぐために下部には扉も窓もない。地下には抜け道が造られ、本書の砦のように拷問部屋や土牢が備え付けられていることも多いという。

うーむ、やっぱりおどろおどろしいのね。日本語のタイトルとしては、「古城ホテル」、雰囲気もあって素敵だと思います。面白かったよ!
コメント
面白そうですね!
表紙と”古城ホテル”というなんだかおどろおどろしいタイトルに惹かれました。
図書館で探してみます。
【2008/09/08 19:36】 | おんもらき #SFo5/nok | [edit]
うふ。やっぱり、おどろおどろしい雰囲気ですよね。
面白いですよ~。
おんもらきさんも楽しまれるといいな♪
【2008/09/08 22:27】 | つな@管理人 #- | [edit]
主人公が、かなり「へなちょこ」で、やきもきするんですけど、感情移入しやすいという意味では、とても良いキャラクターだったと思います。それだけに、哀しい結末ですよね。
ホラーの衣をまといながらも、最終的に「ヒューマン・ストーリー」になるところが、スティーヴン・キングなんかと似たものを感じるんですけど、後味の良さということもあって、「古城ホテル」の方が個人的には良かっです。
【2008/09/09 21:11】 | kazuou #- | [edit]
kazuouさん、いらっしゃいませ♪
トラバ返し、ありがとうございます。

思わず彼の容姿を引用しちゃったんですが、確かにちょっと珍しいくらい「へなちょこ」な主人公でしたよね。
すっかり感情移入したときにあれだったので、おっしゃる通り哀しい結末でもありましたよねえ。
でも、後味が悪くないところが良かったです。
彼がフェードアウトしていく分、彼女がぐーっとフェードインしてきて、そちらの再生があるから、あの哀しい結末も、幾分か救われるというか…。

おお、スティーヴン・キング!
やっぱり、キングは「恐怖」を描きたいのかなぁとは思うんですが、ホラーはホラーでも、やっぱり他の味付けがきちんとなされていると、より魅力的ですよね。
【2008/09/09 23:09】 | つな@管理人 #- | [edit]












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【2008/09/09 21:01】
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つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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