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「ミノタウロス」/けだものの子ら

 2008-07-11-00:40
ミノタウロスミノタウロス
(2007/05/11)
佐藤 亜紀

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最近思うに、その世界に吹いている風が感じられるような小説が、私は好き。

表紙にもどこまでも広がる麦畑が見えますが、これはこの草原に吹く風が感じられるような物語でした。爽やかな風ではなく、それはむしろ荒涼たる風なんだけど。

語り手は、”しみったれた出のどん百姓”から地主に成り上がった父を持つ、少年ヴァシリ。母親は父の地所であるミハイロフカに慣れることなく、キエフへと去って行った。兄もまた、幼年学校から士官学校へと進み、ミハイロフカを出て行った。ヴァシリは父と、父の共同事業者とも言える土地の大旦那シチェルパートフと、ミハイロフカの地所、麦畑を見て育つ。お気に入りの兄の他に、もう一人息子がいたことを思い出した母により、教育のためキエフに呼び出されるまでは。

人間の尊厳なぞ糞食らえだ。ぼくたちはみんな、別々の工場で同形の金型から鋳抜かれた部品のように作られる。大きさも、重さも、強度も、役割もみんな一緒だ。だからすり減れば幾らでも取り換えが利く。彼の代わりにぼくがいても、ぼくの代わりに彼がいても、誰も怪しまないし、誰も困らない。

早熟で多分に厭世的でもあった少年ヴァシリ。勿論、地方の大旦那の家の次男としては、これは特に問題のない考えであったのだけれど…。

時代は変わっていく。砲弾によって顎半分を失った兄は、ミハイロフカへと帰ってくる。ペテルブルクのツァーリが帝位を追われても、ミハイロフカの生活はそう変わらなかったけれど、父の死はヴァシリの生活を変える。当初はシチェルパートフの協力を得て、父の遺産の上でぬくぬくと無為に過ごしていたのだけれど…。

身の不始末と”革命”騒ぎが重なって、ヴァシリは父の屋敷を焼け出される。ヴァシリ兄弟は、シチェルパートフの屋敷に身を寄せるが、更なる不幸が彼らを襲い、またしてもヴァシリの前から、一人の人間が去って行く…。

このあたりから、早熟でこまっしゃくれていて、口ばかりで誠意がないヴァシリの本性が段々とあらわれてくる。時代が時代であれば、ヴァシリもこのまま生きていくことが出来たのだろうけれど、情勢はそれを許さず、この後ヴァシリは色々なものを剥ぎ取られ、その本性のみが明らかになっていく…。

ミハイロフカを追われたヴァシリは、二人の同行者を得る。ドイツ人ウルリヒ、百姓の子、フェディコ。あとはひたすらに殺しと略奪の日々…。彼ら三人には奇妙な連帯感はあるものの、友情と呼べるものはない。動けないほどの大怪我となれば、たぶん彼らは躊躇なく仲間を捨てていくし、自分を助けるために仲間を裏切りもする。そうして、終にこのある意味で高揚した彼らの生活も終わりをつげる。残されたものは何だったのか??

正直、例によって、歴史的背景を理解して読めたとは言えず、ひたすらに続く殺しと略奪には、一部引いてしまうところもある(いっそ陶酔したヴァシリによって語られるその様は、実は時に美しかったりもするのだけれど)。何が言いたいのか、汲み切れなかったところもある。それでも、どこか心惹かれてしまうところがあるんだよな~。佐藤亜紀さん、また他のものも読んでみたいと思います。
コメント
>荒涼たる風なんだけど
ハイ、殺伐とした、お話しでしたね、、。
逆に、不条理を描いたというか、壮絶な感じでした。
佐藤亜紀さんのは、読み終わり凄いとは思うんだけど、
読んで直ぐに次のを読みたいとは、
ちょっと思いませんね、、、。
【2008/10/26 01:15】 | indi-book #- | [edit]
『バルタザールの遍歴』は読まないといけないのだろうが、
私もすぐに読む気がしませんw100円であったら買います。
【2008/10/26 09:10】 | goldius #ncVW9ZjY | [edit]
>indi-bookさん
こんにちはー。
ほんと、殺伐としてお話でしたね。
壮絶でしたけど。
ヴァシリの本性がどんどん剥き出しにされる様が怖かったんですけど、実際あんな境遇におかれたら、誰だったそうなっちゃうんだろうなぁ、とか思ったり。
そういえば、最近、「まっぷたつの子爵」を読んで、このヴァシリの兄のことを思い出したのでした…。
うーん、そろそろ他の本を読んでみようかしら。

>goldiusさん
トラバ&コメントありがとうございます♪
こちらからは、トラバがつながらない可能性が大なんですが、このあとお返しにいきますねー。
「バルタザール~」は、これまたややこしそうですもんなぁ。
【2008/10/26 13:07】 | つな@管理人 #- | [edit]












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