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「月神の浅き夢」/その裏側には

 2009-04-29-10:33
月神(ダイアナ)の浅き夢月神(ダイアナ)の浅き夢
(1998/02)
柴田 よしき

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とうとう、遡り始めてしまいましたよ、RIKOシリーズ。市内の図書館にあるのが、この「月神の浅き夢」だけみたいなので、図書館本でいく限りはもう遡りようがないんですが・・・。

えーと、先日の「私立探偵・麻生龍太郎」の巻末に、amazonよりも良い既刊シリーズの解説が載っていたので、まずはそちらから引いちゃいます。

「RIKO-女神(ヴィーナス)の永遠-」
 男性優位主義の警察組織に屈することなく、凄惨な事件に敢然と立ち向かう女性刑事・村上緑子。そのひたむきな姿を描いた横溝正史賞受賞作。
「聖母(マドンナ)の深き淵」
 ある女性の失踪事件に関わった緑子。母親となった彼女は、錯綜する事件の真相を解明するために、元・警部の麻生龍太郎と接触をはかるが・・・・・・。
「月神(ダイアナ)の浅き夢」
 若い刑事ばかりが殺されていく凄惨な事件。緑子は捜査を通して、愛する人が関与した冤罪事件と、美貌のヤクザ・山内練と麻生の過去の因縁に突き当たる。
「聖なる黒夜」
 聖なる日の夜に、一体何が起こったのか。そして、麻生と山内の運命の歯車はいつ狂ってしまったのか・・・・・・。人間の原罪を問うて深い感動を呼ぶ傑作長編。

そして、本書の目次に行きます
目次
処刑
突破口
留菜
ムーンライトソナタ
犯行声明
月の場合
背徳
鮮血
莢加
グラシア
長い夜の果て
 あとがき
ネタバレ満載でいくので、続きは隠します。

「月神の浅き夢」/その裏側には の続きを読む

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「ブランディングズ城は荒れ模様」/原稿は誰の手に?

 2009-04-26-21:24
ブランディングズ城は荒れ模様 (ウッドハウス・スペシャル)ブランディングズ城は荒れ模様 (ウッドハウス・スペシャル)
(2009/02/25)
P G ウッドハウス

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「ブランディングズ城の夏の稲妻」(感想)の続編です。あれはあれで綺麗に終わっていたような気もするし、読んだのも大分前なので、続編があるなんて思ってなかったんですが、読み始めたらするすると懐かしのメンバーを思い出してきましたよ!

前回は、ブランディングズ城の城主、エムズワース卿の輝けるブタ、エンプレス・オヴ・ブランディングズを巡るドタバタ劇だったんですが、今回も若い二人の結婚の行方を絡めつつも、ドタバタ劇は健在です。今回の騒動は、ギャリー伯父さんの原稿を巡るもの。この原稿は、今ではすました顔で現在の地位に納まっている、貴族のご歴々を震えあがらせるに充分の代物。今さら若き日の愚行を暴露されては堪らない! しかしながら、こういった代物がお金になることも事実なわけで…。どうしてもこの原稿を出版したい者、日の目を見せたくない者、様々な思惑が駆け巡る!

前回、コーラスガール、スー・ブラウンとの婚約をしたエムズワース卿の甥、ロニー。しかしながら、二人の結婚生活を始めるためには、後見人であるエムズワース卿の資金援助が必要で…。ところが、エムズワース卿は、甥のことなど眼中になく、ブタに夢中。エムズワース卿の妹、ロニーにとっての恐るべき伯母レディー・コンスタンスは、ギャリーの本を出さないことを条件に、スーの滞在を認めざるを得ない状況になっていたのだけれど…。

ターミネーターばりにそこにやって来たのは、ロニーの母、レディー・ジュリア。貴族のお仲間からはじかれることを恐れるレディー・コンスタンスとは違い、レディー・ジュリアはそんな事を恐れはしない。許せないのは、自分の息子がコーラスガールなどと結婚すること! レディー・コンスタンスとは、また違った恐ろしさを持つレディー・ジュリア。若い二人は、周囲の反対をおして、首尾よく結婚することが出来るのか?

レディー・ジュリアと同着で、ブランディングズ城に新たにやって来たのは、過去、スーと婚約していたこともある、めかし屋、モンティ・ボドキン。嫉妬深いロニーを慮って、スーとモンティの二人は、二人の過去を隠すことに決めたのだけれど…。やはり二人の仲を疑った、ロニーとスーの仲はすっかりぎくしゃくしてしまう。

さて、モンティの登場は、エムズワース卿にとっても脅威であった。なぜなら、彼はエンプレスを盗み出そうとした(と、エムズワース卿が信じている)、サー・グレゴリー・パースロー=パースローの甥であったから。エンプレスを再び危険な目に合わせはしないと、エムズワース卿は誓うのだった…。
目次
1. ティルベリー卿の不幸
2. モンティ・ボドキン登場
3. 憂愁のスー
4. ギャリー伯父さんの恋の妙薬
5. 危険な再会
6. レディー・ジュリア
7. ブランディングズ城楼上より
8. 回想録をめぐる愛と策謀
9. ブランディングズ城は雨模様
10. 恋人たちの和解
11. チョビひげ探偵の奸計
12. 探偵暗躍
13. 消えた原稿
14. から騒ぎ
15. から手形
16. ポスト回想録時代の福祉と正義
17. ブタでどう儲けるか
18. 大団円
 ブランディングズ城の魅力 佐藤多佳子
 本当のブランディングズ城 N・T・P・マーフィー
 訳者あとがき 森村たまき
あくまで強烈な個性の伯母や母。口を開けば若き日の面白話が出てくるギャリー伯父さん(大抵の時は、その話を最後までしたいという欲求に逆らえない、非常に情熱的な語り手でもある)、「チキショー!」のティルベリー卿、気はいいんだけど、誰かを苛立たせることと来たら、一級品に思えるモンティ、探偵というかこそ泥のようにも思えてしまうピルビーム、執事のビーチ。みんなみんな、楽しいです。相変わらずの物言い、言い回しもくすくすと笑えてしまいます。そして、スーがどこに惚れたのか分かんないくらい、今回、見事に情けないロニーだけれど、ラストはちょっとカッコイイのです。みんなみんな、お見事な大団円!

レディー・コンスタンスの「クラレンス!」というエムズワース卿を呼ぶ声や、ティルベリー卿の絶叫、愛すべきモンティなんかが、印象的です。いくら愛すべきといっても、社主に対して「よしきたホー」はないだろ、と思うけど。ま、彼は「心優しきめかし屋」だからね。

「おまえはしじゅう<クラレンス!>と言い続けじゃ」エムズワース卿は不機嫌に言った。「<クラレンス……クラレンス>とこうじゃ。わしがペギニーズ犬か何かかと人は思うぞ。さてと、今度は何じゃ?」(p123より引用)

「チキショー!」ティルベリー卿が言った。精神的ストレスの際に彼が常用する絶叫である。(p7より引用)

マンモス社出版社の社主は若きジャーナリストの理想型を言葉には表現できないものの、しかしそれはどちらかというともっとむさ苦しい、できればメガネを掛けているようなモノで、金輪際スパッツなんぞは付けていない。それでその時のモンティ・ボドキンは実際にスパッツをしていたわけではなかったのだが、しかし彼の周囲にはまごうかたなきスパッツ・オーラが漂っていた。(p22より引用)

「私立探偵・麻生龍太郎」/龍太郎、出直しの一歩

 2009-04-24-23:54
私立探偵・麻生龍太郎私立探偵・麻生龍太郎
(2009/02/28)
柴田 よしき

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夜の埠頭(?)に佇む二人の男性。ちょっといやーんな感じですが、RIKOシリーズのスピンオフシリーズ、麻生と山内の物語再び!なのです。

麻生と山内の物語と書いたけれど、これは麻生が警察をやめて、私立探偵を開業したあたりのお話。麻生の私立探偵業がメインのお話なので、山内の影がちらちらは見えるんだけど、「聖なる黒夜」(感想)のように、二人の関係ががっつり描かれるお話なわけではありません。あくまで、「私立探偵」の「麻生龍太郎」のお話なのです。

最初はねー、これ、短編集だと気付かなかったので、こういう何でもないような依頼が、とんでもない事件に結びつくのよねえ、とわくわくしてたんですが、短編だったので、事件としては割と普通のところに収まってました。いや、そこは柴田さんなので、人間のふかーい悪意を、一瞬覗きみてしまったような、鋭い切れ味なんですけど。とはいえ、今までのとんでも事件を考えると、事件としては若干小粒? 「所轄刑事・麻生龍太郎」(感想)のように、同僚が出てくるわけでもない、一人の探偵業だから、余計にそう感じてしまうのかも。

しかし、麻生が事件にかかずりあってる間に、明らかに山内からSOSが出ているのが切ないです。龍太郎はもっと、田村の忠告を聞くべきだったと思います。この段階では、山内はまだヤクザではないんですねえ。間の物語だからこれは仕方がなくて、山内はこの後、ずぶずぶのヤクザになっているので、それはもう、ゴールが見えている、「スターウォーズ」のアナキン・スカイウォーカーを見るかのようなんですが。

えー、最初にRIKOシリーズを読んだとき、こんなにこのシリーズ(というか、追っかけてるのは、既にこちらが本シリーズなのでは?、と思われるこの二人なんだけど。でも、RYUTAROシリーズとかRENシリーズとかも、やだよなぁ。あ、みんな”R”だ!)にはまるとは思わず、しばらくしてから文庫本を手放しちゃったんですよねー。文庫本なんだし、持っとけば良かったなぁ。いやー、RIKOシリーズの麻生と山内の場面だけでも、読み直したいっす。麻生は結局、事務所をこの殺風景な場所から引っ越せたのかなぁ、とか色々気になるー!

うろ覚えですが、RIKOシリーズの最後の方では、緑子が山内の例の事件に迫ってませんでしたっけ? うだうだと悩む男たちに比べ、異常に強い突破力とアクの強さを持つ緑子(なのに、すっかり影は薄いですけど)。緑子が例の事件を調べ始めれば、麻生、山内、二人の関係にも変化が訪れるんじゃないのかなー、などと思ったり。

次は久々に緑子の活躍を見たいなぁ。麻生なんかは、すっかり人間味溢れるキャラになっちゃって、それに比べると、緑子が何だかサイボーグにも思えてくるんですが…(犯されても犯されても立ち上がる…)。

巻末に、シリーズの時系列についての記述がありました。

この物語の主人公である麻生龍太郎は他作品にも登場します。
それぞれ独立した物語で、どれがどれの続編ということはありませんが、
物語の時系列的に並べると以下のようになります。

所割刑事・麻生龍太郎(新潮社)
聖なる黒夜(角川書店)〔文庫〕角川文庫*上下巻で刊行
本書(角川書店)
聖母(マドンナ)の深き淵(角川書店)〔文庫〕角川文庫
月神(ダイアナ)の浅き夢(角川書店)〔文庫〕角川文庫

やっぱり次はRIKOシリーズが読みたいです!(でも、RIKO自身はあまり好きになれない…)
contents

OUR HOUSE
TEACH YOUR CHILDREN
DEJA VU
CARRY ON
Epilogue

「ぼくと1ルピーの神様」/答えはどこにある?

 2009-04-24-23:12
ぼくと1ルピーの神様ぼくと1ルピーの神様
(2006/09/14)
ヴィカス・スワラップ

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話題の映画、「スラムドッグ$ミリオネア」の原作本です。映画の記事を読むと、原作とは設定が少し違うんじゃないかなー、とは思うんですが。
目次
プロローグ
第1章 ヒーローの死 1,000ルピー
第2章 聖職者の重荷 2,000ルピー
第3章 弟の約束 5,000ルピー
第4章 傷つけられた子どもたち 10,000ルピー
第5章 オーストラリア英語の話し方 50,000ルピー
第6章 ボタンをなくさないで 100,000ルピー
第7章 ウエスタン急行の殺人 200,000ルピー
第8章 兵士の物語 500,000ルピー
第9章 殺しのライセンス 1000,000ルピー
第10章 悲劇の女王 10,000,000ルピー
第11章 エクス・グクルッツ・オプクヌ
     (またはある愛の物語)  100,000,000ルピー
第12章 十三番目の問題
エピローグ
訳者あとがき
クイズ番組で見事全問正解。大金をせしめたはずの少年、ラムの元にやって来たのは警察官だった。スラムに暮らす十八歳のウェイターに、答えが分かるはずがない。そう決めつけた番組関係者が、ラムの逮捕を望んだのだ。

拷問にかけられ、今にも賞金を辞退しそうになっていたラム少年のもとにやって来たのは、今度は彼の救い主である女性弁護士だった。彼女に語り始めた、ラム・ムハンマド・トーマス少年が全問正解出来た理由とは? また、「1ルピーの神様」とは?

面白いことは面白かったんだけど、混沌としたインドを舞台としているのに、そこには期待したような匂いがないんですよねえ。ラム少年の境遇は結構悲惨なんだけど、とんとんと進んで行ってしまうからか、現実味があんまりないのです。でも、そういうところを主眼とした物語ではないのだとしたら、これは映像の方が表現媒体としてより適している物語なのかもしれません。

ばっちり起伏もあるし、細かい部分は、映像が補足してくれるのかも・・・。実はもう一つの目的があったところにはおおっとは思ったけれど、「1ルピーコイン」の秘密に、割と早い段階で気付けちゃうところは、若干興ざめ。でも、一問ごとに明かされる少年の過去は、えらくバラエティに富んでいて、先が気になってどんどん読んじゃいます。

インド的深み、混沌はないのだけれど、青春やサクセス・ストーリーを楽しむ感じかなぁ。社会問題的な話もあるし、インド社会の厳しさ、不合理もあり、辛い現実が描かれるんだけど、あくまでテイストが軽いというか、やたらと読み易いんだよねえ。この辺は本業がインドの外交官であるという、著者のバランス感覚によるものなのかなぁ。
文庫もあるんですねー。↓
ぼくと1ルピーの神様 (ランダムハウス講談社文庫)ぼくと1ルピーの神様 (ランダムハウス講談社文庫)
(2009/02/20)
ヴィカス スワラップ

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「ディビザデロ通り」/断片

 2009-04-24-22:13
ディビザデロ通り (新潮クレスト・ブックス)ディビザデロ通り (新潮クレスト・ブックス)
(2009/01)
マイケル オンダーチェ

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amazonの内容紹介から引いちゃいます。

血のつながらない姉妹と、親を殺された少年。一人の父親のもと、きょうだいのように育った彼らを、ひとつの恋が引き裂く。散り散りになった人生は、境界線上でかすかに触れあいながら、時の狭間へと消えていく。和解できない家族。成就しない愛。叶うことのない思いが、異なる時代のいくつもの物語を、一本の糸でつないでいく―。ブッカー賞作家が綴る、密やかな愛の物語。

血のつながらないアンナとクレア。二人の姉妹と共に育ち、アンナと恋に落ちたクープ。そして、二人を許せない父親。共に育った彼らは、ある嵐の日に引き裂かれる…。

そこから描かれるのは、その後の彼らの人生だったり、彼らが出会った人の人生。なんというか、普通の物語だったら、クモの巣を張り巡らす方向に進む所を、既に張られているクモの巣の、細い一本を辿っていく感じというのかなぁ。辿りきったところでぷつっとその糸は終わってしまって、今度は同じ円環上にある違う方向の糸を辿っていく感じ。だから何というか、クライマックスはそこにはなくて、どうなっちゃうのーー?!と思うところで、終わってしまう事もある。

そこがちょっと消化不良の感もあるんですが、これはそういう物語なんでしょうねえ。沢山の人生の断片が、少しずつ重なって響き合っていく。全てを辿ったわけではないから、しっかりと強烈に印象付けられることはなかったのだけれど、なんとなーく、それぞれの人生の一部が自分の中に残る感じ。こういう小説もあるんだなぁ、と思いました。でも、こういう物語物語してないタイプは、私にはちょっと読み辛かったです。
目次
1 アンナ、クレア、そしてクープ
   孤児/赤と黒/マヌーシュ/過去から抜け出す/かつてはアンナとして知られていた人物/名前につまずく
2 荷馬車の一家
   家/アストルフ/旅路/二枚の写真
3 デミュの家
   マルセイヤン/到着/広大な世界/犬/シャリヴァリと夜なべ/恋文/夜の仕事/親類/マゼールの森/畑/考え/戦争/休暇/帰還/さよならを言うがいい

 謝辞
  訳者あとがき

「私の男」/血の、人形

 2009-04-20-23:14
私の男私の男
(2007/10/30)
桜庭 一樹

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表紙からして、何だかねっとりした感じなんですが、ここで扱われるのは、ずばり、近親相姦。

もうすぐ尾崎花になる、腐野花と、花の結婚相手である尾崎美郎、花の義父、腐野淳悟。かつて淳悟との結婚を考えていた、大塩小町。それぞれが語る、花と淳悟の物語。

北海道南西沖地震により家族を失った少女、花。花を迎えに来たのは、遠い親戚であるという、まだ25歳だった淳悟だった。二人は淳悟が暮らす、紋別の地に居を移し、地域の共同体にも受け入れられるのだが・・・。

はじめに不審の念を感じたのは、当時、淳悟と付き合っていた大塩小町だったのかもしれない。彼女は女性特有の勘でもって、この父娘の危うい関係に気付く。地域社会に暖かく受け入れられながらも、互いさえいればそれでいいというような排他的な関係を築き上げていた、花と淳悟。そこには、既に恋人であった小町の場所すら残されていなかった。

桜庭さんの話を書く時に、ついつい毎度「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」(感想)について書いてしまうんですが、「砂糖菓子~」は大人が本来、子供に与えるべきである安全から零れ落ちた少女たちを描いていましたが、「私の男」で描かれるのもまた、家族というものから零れ落ちてしまった少年と少女

淳悟にもまた、両親を失った過去があり、彼はまるでその隙間を埋めるかのように、花に縋りつく。互いが互いにとって、大海で縋りつくべき唯一の浮き輪のような…。その身に流れる血の中に、自分の父を、母を感じることは、ぐるっと遡りつつも、自分の尻尾を噛んで環となったウロボロスのよう。

これは正しいこととはとても言えなくて、でも、やり直すとしたら、淳悟が両親を失ったところから始めなくてはならなくて。そして、それはもはや不可能で。周囲の優しさや思いやりがあって尚、堕ちていきたいと思う人たちを止めることは出来ないんだよなぁ。

花の結婚相手である美郎は、非の打ちどころのない、実に現代的な青年で、現実社会を巧みに回遊できるだけの、財力や知力、性格の持ち主なんだけど、彼にもまた、巧みに生きられてしまうが故の虚しさがある。その虚しさが、彼の周囲にはこれまでいなかったであろう、花のような女性との結婚を決意させたのだろうけど、なんだか桐野夏生さんの「ローズ・ガーデン」(感想)における、ミロの夫、博夫を思い出してしまいました。健全な人がそうやって危ういところに近づくと、飲み込まれちゃうかもよー?などと思ったり。

時系列はずんずんと遡っていく。二人でひとつだった関係を解消し、別れた花と淳悟。失ってはじめて気付くこと。「私の男」である淳悟を失った花は、これからどう生きていくのでしょう。子供には分からないこと。越えてはいけない、してはいけないこと。大人になった花は、その関係を断ち切ったはずだけれど、そこから先は、描かれては、いないのです。
目次
   第1章
 2008年6月
花と、ふるいカメラ
   第2章
 2005年11月
美郎と、ふるい死体
   第3章
 2000年7月
淳悟と、あたらしい死体
   第4章
 2000年1月
花と、あたらしいカメラ
   第5章
 1996年3月
小町と、凪
   第6章
 1993年7月
花と、嵐

「逃れの森の魔女」/ヘンゼルとグレーテル

 2009-04-16-23:40
逃れの森の魔女逃れの森の魔女
(2000/02)
ドナ・ジョー ナポリ

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「わたしの美しい娘」(感想)に引き続き、二作目のドナ・ジョー ナポリ。

こちらもまた、「ヘンゼルとグレーテル」を下敷きにした物語なんだけど、前半を割いて語られるのは、魔女がお菓子の家を作って、人里離れた森の中に暮らすまで。「わたしの美しい娘」もそうだったんだけど、おとぎ話だと唐突に、そういうものだと語られている部分が、ものすごーく納得出来る形でその状況が整えられているのです。

悲劇ではあるのだけれど、この「魔女」がとても素敵。まだ二冊しか読んでないけど、ドナ・ジョー・ナポリが描くところの女性たちは、その意志の強さと賢さが魅力的なんだよね。賢さと言っても、それは知識ではなく知恵の方。しかし、知恵のある女性だった、この物語の「魔女」は、ちょっとした切っ掛けから、転落してしまうのです。

転落してしまった後も、自らを律することの厳しさから生まれる緊迫感にドキドキします。そして、誰もが知っているあのラストへ。それはでも、美しい希望なのです。
目次
第1章 旅のはじまり
第2章 魔法陣
第3章 癒し
第4章 バール
第5章 炎
第6章 お菓子の家
第7章 野菜のスープ
第8章 宝石
第9章 魔法陣

「アンジェラの祈り」/灰と祈り

 2009-04-14-23:55
アンジェラの祈り (新潮クレスト・ブックス)アンジェラの祈り (新潮クレスト・ブックス)
(2003/11/26)
フランク・マコート

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「アンジェラの灰」(感想)のフランク少年が、アメリカに渡ってから。

実際、ほんとうの意味で一家がまた揃うことはなかったのだけれど、それでも一家がリムリックに張り付いていた頃よりも、幸せな日々が描かれる。ま、本当の意味で幸せか?、というと、そうでない場面もしっかり描かれるんですが。母をアメリカに呼び寄せてから。何はなくとも、きちんと入れたお茶が必要な母(というか、アイルランドの母と言えば、とりあえずお茶みたい)、狭くとも家族全員が揃って暮らしていた暮らしから、母に与えられたのはティーバックのお茶と、一人暮らし…。それでも、兄弟には既にそれぞれの生活があるわけで…。血が近いゆえの甘え、近いゆえの怒りなんかが描かれるのは、まさに大人になったからんでしょうね。

「アンジェラの灰」を読んだ時に、弟マラキの方が生きにくくて、フランクの方が生き易くなるのかも、なんて思ったんですが、実際はマラキはニューヨークに行っても、バーの経営に成功し、一方のフランクは貧しいまま。

ホテルの清掃係から、軍隊生活、波止場でのトラックの積み荷卸し、…そして高校教師へ。アイルランドにいると、アメリカに貧しい人がいるなんて信じられない。しかし、案の定、フランクの生活はかなりの貧しさ。フランクの仕送りは、弟アルフィーの新しい靴に、クリスマスのご馳走に(豚の頭から進歩してるんです!)、母とアルフィーが暮らす新しい家になる。弟たちが同じくニューヨークにやって来て、かつ彼らが成功をおさめていても、それでもフランクは仕送りは欠かしていないよう。

しかし、ふわふわとした語り口(ところどころを締めるのは、「ガッデム!」という誰かの叫びなんだけど)のせいか、時系列で何が起こっているのかは何だか分かり難いのです。一定のテンポで進んでいた前作に比べ、時間は伸びたり縮んだり。

念願の大学生となり、自分には勿体ないような美人のガールフレンドが出来、そして更に彼女に結婚を迫られても、既にそれなりの年齢になっているにも関わらず、フランクは安定を求めるのはまだ早過ぎる、と考えたりもする。マラキに比べ、堅実に生きているかのように見えても、実際は、「たいへんな一日を明日に控えた私だもの、ここは景気づけにビーンポットバーでビールの二、三杯飲むのはしかたがない。」なんて感じで、「~だもの。~なのもしかたがない。」の繰り返しで、自分にとっても甘い甘い。彼女との約束があろうが、次の日に大切な何が控えていようが、ずるずると飲みに行ってしまい、自分の世界に戻っていくことが出来ない所には、父マラキの影を感じてしまう。お金に関しては、たぶん、父よりマシなんだけど(というか、子供が沢山いないから?)。

完全な堅気の生活とは言えなくて、フランク自身が、決まりきった暮らしよりも、所謂アーティストのような暮らしを好んでいるよう。それでも、実際は弟マラキたちのようにパーティを巧みに回遊することも出来ないし、本質的にはとても泥臭いようなんだけど…。自分の世界に戻って行っても、遊んでいる誰かを考えると淋しいし、かといって遊んでいる場所にずっといても、何だか居場所がないような感じ?

高校教師になってから、評判の良くない高校の生徒たちを手懐けたようにどこかで書いてあったので、そういうお話かと思ったら、そういった部分はほんとにちょっぴり。あと、ずっと気になっていたんだけど、フランクが出会い、恋におち、結婚し、娘を設けた女性とは、違う名前が献辞にあるんですよね。そういう意味で、本作は幼少期を丹念に描いた前作とは異なり、フランクの生涯全てをきちんと追った話ではないのでした。

ほんとうに細部まで描かれた「アンジェラの灰」とは違って、細かい話もあれば、ぐーんと飛ばしてしまう部分もある。より小説的になったとでも言うのかな?

「翻訳文学ブックカフェ」(感想)より、訳者の土屋政雄さんの対談の中での言葉を引用します。

そこまでの何十年という積み重ねがあるんで、『灰』で全部を吐き出せたわけではなかったんではないかな。だから、『祈り』はまた違った新しい作品ということではなかったんでしょう。『祈り』にも『灰』を書く以前から書きためていた文章が入っているでしょうし。強いて違う点を挙げるとすれば『祈り』のほうが普通の英語になっているんじゃないかという点ですかね。全部現在形で通してる『灰』と、過去形だのなんだのが入ってきてる『祈り』という感じ。まあそれぐらいで、作家として劇的に変わったという印象はありませんよね。

『灰』も文庫で上下分冊と長かったんですが、『祈り』もまた背表紙の厚さなどが半端なく、ながーいお話です。それでも、長くて退屈するようなことはなかったです。父のエピソードも良かったな。母譲りなのかもしれないけど、何があってもフランクは人を恨むことがないのです。淡々と事実として描かれる中には、恨んでもおかしくないこともあるし、そもそも赦せないと言えば、彼らの父もそうでしょう。赦すというか、そんな弱い人を認めてあげただけなのかもしれませんが、そういう所も、このいっそ陰惨にもなってしまう話が、多少感傷的になったとしても、明るく読めてしまう一因なのかもしれません。

『灰』を読まれて良かった方は、『祈り』も読まれた方がいいんじゃないかなー。やはり、『灰』あっての『祈り』で、狭い範囲の子供の視点から語られた『灰』からすると、一気に広がった視点に最初はちょっと戸惑うかもしれないけれど。

クレストブックスお馴染みの裏表紙の書評の一人は、佐伯一麦さん。うーん、人選がいいですね、これ。

「家、家にあらず」/自分の道を掴め

 2009-04-13-23:21
家、家にあらず家、家にあらず
(2005/04)
松井 今朝子

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「非道、行ずべからず」(感想)の美しき化け物(女形)、沢之丞の若き日が出てくるとのことで、借りて来た一冊です。

とはいえ、バリバリの芝居物である「非道、行ずべからず」とは異なり、こちら「家、家にあらず」が舞台とするのは、大名屋敷の奥。主人公瑞江は、北町奉行所の同心を父に持つ娘。母亡きあと、御殿女中として出世を遂げた「おば様」を頼って、砥部家に勤めることになったのだが・・・。

瑞江という名も奪われ、「うめ。切米五石。金五両」として、楽な部屋子ではなく、三之間勤めとなった瑞江。日々の勤めに追われ、良縁を用意される気配もない。おば、浦尾が瑞江を砥部家に招き入れたのはなぜなのか? 

そして、お屋敷に落ちる影。安全なはずの屋敷の奥で人が死ぬ。町奉行の同心である父は、本来、大名家のことに首を突っ込んではならないのだけれど…。町中でおきた人気役者と水茶屋の娘の心中事件もまた、砥部家の事件と関わっているようで…。父は娘を心配して内情を探るのです。ここに絡んでくるのが、若き日の沢之丞なんですね。あ、あと、薗部理市郎の父、薗部理右衛門も出てきます。

全ての種明かしがなされた後の(実はこの瑞江自身が、ある意味、信頼出来ない語り手だったりするんだけど)、瑞江の語りがいいのです。女は道を選ぶことが出来ないと思っていたけれど、屋敷の奥で様々な女の道を見て、更に自分で道を選ぶだけの力をいつしか得ていた瑞江。瑞江はどんな道を選んだのでしょう。「非道、行ずべからず」の笹岡平左衛門の妻は、同心の妻らしくないとか言われてましたが、瑞江関連でお嫁に来たのでしょうか。「非道、行ずべからず」で、瑞江の話って出てきましたっけ?? 出てこなかったように思うんだけどなぁ。

タイトル、「家、家にあらず」というのは、「女三界に家なし」というのもそうなんだけど、町奉行所に勤める同心にもかけてあるんですね。町方の同心は譜代の臣ではなく、その身一代限りのお抱えなんだそうです。大晦日の夜に、支配役の与力の家を訪問し、「此度もまた重年を申し付くる」といい渡されて、やっと翌年のお勤めが許される。みながみな、黙って受け継ぐことが出来る家を持っているわけではない。

そういえば、「非道、行ずべからず」では、芝居という継ぐべきものが出てきましたが、どうなんでしょうね、継ぐべきものを持っている方が幸せなのか、好きな道を選べる方が幸せなのか。どちらにもそれぞれの幸せがあるとは思うのですが・・・。「非道、行ずべからず」の歌舞伎の話も面白かったですが、「家、家にあらず」の大名屋敷の奥の世界も面白かったです。浦尾のように御年寄まで出世した場合、それまでの功績ゆえに女だてらに家を興すことも可能なのだとか。

↓文庫も。
家、家にあらず (集英社文庫)家、家にあらず (集英社文庫)
(2007/09/20)
松井 今朝子

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「赤朽葉家の伝説」/ファミリー・サーガ桜庭ver.

 2009-04-09-23:35
赤朽葉家の伝説赤朽葉家の伝説
(2006/12/28)
桜庭 一樹

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目次
第一部 最後の神話の時代
 一九五三年~一九七五年 赤朽葉万葉
第二部 巨と虚の時代
 一九七九年~一九九八年 赤朽葉毛毬
第三部 殺人者
 二〇〇〇年~未来     赤朽葉瞳子
桜庭さん描くところの、三人の女三代記。

扉より引きます。

”辺境の人”に置き忘れられた幼子。この子は村の若夫婦に引き取られ、長じて製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれ輿入れし、赤朽葉家の”千里眼奥様”と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。―千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし。高度経済成長、バブル景気を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる三代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の姿を、比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。
ようこそ、ビューティフルワールドへ。

表紙の赤が鮮やかで、「赤」朽葉家の物語でもあることから、読んでいる間中、「赤」がとにかく印象的な本でした。三代遡るといえば、たとえばジェフリー・ユージェニデスの「ミドルセックス」(感想)があり、ナンシー・ヒューストンの「時のかさなり」(感想)がある。三代を遡ると、世界情勢とか、その国の歴史がぐっと浮かび上がってくるんですよねえ。山口瞳さんの「血族」(感想)なんかも、自らのルーツに迫る話なんですが、こういうファミリー・サーガって、ぐいぐいと読み進んでしまいます。

赤朽葉家が製鉄業で財をなした家であることから、赤朽葉家の歴史はそのまま重工業の歴史でもあるし、万葉を置いて行き、ある時期からほぼ姿を見せなくなってしまった、”辺境の人”の話は、山陰地方における「サンカ」の歴史でもある。

歴史のように語られる万葉の章、毛毬の章に比べると、現代の瞳子の章は、まだ何者でもない彼女を反映してか、ちょっと迫力に欠けている。歴史ものを読んでいる気分になっていたら、突然瞳子と彼氏の探偵物語になっちゃったりね。でも、この軟弱さも含めて、これが現代のわたしたちの時代なのでしょう。

ようこそ。ビューティフルワールドへ。悩み多きこのせかいへ。わたしたちはいっしょに、これからもずっと生きていくのだ。せかいは、そう、すこしでも美しくなければ。(p307より引用)

世界を美しくするために、これからも桜庭さんは物語を紡いでくれるのでしょう。webでチェックするところによると、母、毛毬の漫画、『あいあん天使(エンジェル)!』(タイトルはごっつく『製鉄天使』になって、とーぜん小説だけれども)が、スピンアウト作品として出版されるようですね。こちらも楽しみ!

この物語でビューティフルだったのは、赤朽葉家のお屋敷に至る坂道とか、溶鉱炉の赤(あ、これは何となく、高村薫さんの「照柿」(感想)も思い出しちゃうな)とか、豊寿の職人気質とか、トコネン草を燃やした時の細くたなびく紫の煙とか、”辺境の人”が若い不慮の死者を連れていく山奥の渓谷とか。章ごとに違うけれど、流れる空気もビューティフルなんですけどね。

ところで、web(リンク)にある、推定体重44、5キロで、茶色っぽい長髪、芸人であるという桜庭さんの旦那さんって誰なんでしょう。気になるー。

あ、さらに桜庭さんのweb話をすると、旦那さんの部屋からの荷物の引っ越しにおける、この部分、なんだかすごく分かるー!!

わたしたちはもう女の子なんてフワフワしたかわいい生き物じゃなくて、だから、労わられて重い荷物を肩代わりされるより、がんばってるところを見てもらって「がんばったね」と褒められたいのだ……。
 と、そんな面倒くさい大人子供の心理を説明するのは、明日か、来月か、もしくは10年後かにブン投げて後回しにする。

こういうの、やっぱり大人子供なんですかねえ。周りからすると面倒くさいかもしれませんが、とっても共感してしまうのでした。
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つな がる

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つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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