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「わたしの美しい娘―ラプンツェル」/ツェル

 2009-02-28-22:42
わたしの美しい娘―ラプンツェルわたしの美しい娘―ラプンツェル
(2008/09)
ドナ・ジョー ナポリ

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誰もが知ってる童話、「ラプンツェル」を下敷きにした物語。下敷きと言っても、ほんとうはこういう物語だったのかしら?、と錯覚を覚えるほどに、すんなりと物語が入ってきます。

感情を抑えた母の語り、母の愛情。無邪気な娘、ラプンツェルの無条件の母への信頼、ラプンツェルの生気に溢れた若さ…。

母と娘のみで充足していた暮らしは、町で出会った貴族の青年、コンラッドによって終わりを告げる。しかし、植物を自在に操る母にはある事情があり、ラプンツェルが母から離れていくことを許しはしない。そうして、ラプンツェルは童話そのままに高い塔に閉じ込められる…。

傲慢ですらあったコンラッドは、一度だけ出会い農家の娘だと思い込んだ、ラプンツェルの事を忘れられずに、彼女を探し続けるのだが・・・。
そもそものラプンツェルの物語はどうだったんだろうと思って、検索してみたら、(少なくとも初版は)私が思っていたのともまた違った物語だったよう(Wikipediaにリンク)。童話っていま一つ理解出来ないというか、納得いかないところがあるような気がするんですが(突然出会った王子に恋に落ちるとか)、いやぁ、これはすんなりすんなり腑に落ちるんですよー。

最初は「ラプンツェル」という物語ではなく、「わたしの美しい娘」の方に着目しちゃってたので、すっかり母側で読んでたのです。最初は娘も「ラプンツェル」ではなく、「ツェル」という愛称で呼ばれているしね。そして、母と娘のどこか普通ではない生活の、何だか美しくも不穏な匂いに惹かれて読んでいくと、そこに現れるのは…! 哀しい女と赦す女の物語でした。青年、コンラッドも良かったです。

石を抱き続けるカモと、そのカモに心を痛めるラプンツェルのエピソードも印象的。知っていると思っていたお話に、解釈によってまた違う面が見えてくるのが快感でした♪ ドナ・ジョー・ナポリ。次は「逃れの森の魔女」を読んでみよっと。こちらは、「ヘンゼルとグレーテル」のようですよ。
目次
Ⅰ 贈り物 スイス、16世紀半ば
Ⅱ 拒絶
Ⅲ 孤独
Ⅳ 執念
Ⅴ キス
Ⅵ 愛
Ⅶ ちりぢりに
Ⅷ 再会
逃れの森の魔女逃れの森の魔女
(2000/02)
ドナ・ジョー ナポリ

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「小鳥たちが見たもの」/彼らが見た世界

 2009-02-26-22:40
小鳥たちが見たもの小鳥たちが見たもの
(2006/12/12)
ソーニャ・ハートネット

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Ciel Bleu」の四季さんのところで知って、気になった本です。

■四季さんの記事は、こちら → 小鳥たちが見たもの」ソーニャ・ハートネット

四季さんが「最初のソーニャ・ハートネット作品がこれでなくて良かった」と書いてらっしゃるのが気になりつつ読んだんですが、うわー、確かにこれは厳しい。

主人公は九歳の男の子、エイドリアン。事情があって母とは離れ、祖母と引きこもりに近いおじと一緒に暮らしている。冒頭にあるのは、行方不明になった三人の子供たちの話。エイドリアンの目から見た世界は恐怖に満ちていて…。

冒頭からそういう話が来るので、そもそもがザッツ・不穏な感じなんだけど、エイドリアンからは、ガラスウールのような透明な棘を感じるのです。ガラス板に爪を立てた時のような、ぞわぞわする感覚からの連想からかなぁ。特に誰が悪いわけでも、悪意があるわけでもないのだけれど、読んでいる内に、エイドリアンの脅えが、読み手であるこちらにもうつってくるような感じがして…。

普通の子にはきっと何でもないようなことが、エイドリアンには恐怖以外の何物でもない。アシモフ編の「犬はミステリー」(感想)の中の、「闇の中を」の少女、ティナを思い出したけれど、エイドリアンにはティナほどの強さはない。常識で考えられる安全が、安心が、与えられない子供の哀しさは共通していると思うのだけれど…。

ラストは確かに美しいのだけれど。果たしてそれは救済なのでしょうか。打ちのめされる気持がします…。

「はさんではさんで」/等身大?

 2009-02-26-22:39
はさんではさんではさんではさんで
(2008/09/25)
甘木 つゆこ

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表題作の「はさんではさんで」と「コンビニエンス・ヒーロー」の二編。
「はさんではさんで」
高校時代の友人、貴之に恋しているといってもいい、私。しかし、貴之には、幼少時の経験により、女性との接触に対し、極度のトラウマがあった。同様の体験をしていた私に対し、ある意味では気を許した貴之は、他の誰にも心を許さない私に、「タロウ」と渾名を付ける。

大学に入ってもこれといった友人も作らず、貴之との時間を何よりも心待ちにする、愛犬「タロウ」として生きる私。他に実感があるのは、ヤフオクで買った鉗子で自分の肉を挟む時ぐらい…。

これといった出来事が起こるわけではないけれど、一歩前進、なのかなぁ。
「コンビニエンス・ヒーロー」
就職活動から突然降りてしまい、休学してコンビニバイトに励む僕。僕に付きまとうのは、「何も僕じゃなくてもいい」という言葉。ついつい自分を軽んじてしまう僕なのだが…。

自ら店長に働きかけ、デリバリーサービスを始めた僕。こちらもやはり、これといった出来事は起こらないのだけれど、そうして僕は身の程を知るのだ。
どちらも物語が始まる以前の物語な気がするのです。なんだろうなぁ、可愛い表紙につられて読んじゃったけど、うーん、特に読まなくても良かったような気がいたしまする。

「盆栽マイフェアレディ」/これがわたしの生きる道

 2009-02-24-22:43
盆栽マイフェアレディ盆栽マイフェアレディ
(2008/06)
山崎 マキコ

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年季が明けるまでの六年間は、まさに丁稚奉公。全く儲からず、実家に仕送りを願い出たりもする。そんな盆栽師の世界に、ひょんな事から飛び込むことになった、本当は計算高いはずのわたし、長瀬繭子。

研究室の先輩であり、今では兄弟子ともなった松本と共に、葉刈りに水やり、土にまみれて、死ぬほど地味な毎日を送るのだが…。そこに現れたのは、甘いマスクに文句なしの金持ち男、高野さん。内面にはそこそこの毒だってあるし、兄弟子、松本に対しては、遠慮容赦なくばさばさと本音トークで切りつけるのだけれど、そこはそれ。実は繭子は、ベビーフェースにおとなしげな外見。黙ってれば、従順な「俺についてくる女」と見込まれ、学生時代に三回ものプロポーズを受けた女。気づけば、高野さんの愛人として、週末は愛人道を驀進することになるのだが…。

三百円で手作り弁当を松本に売り付ける生活と、駐車場と一緒にベンツをぽんとプレゼントされてしまう生活。それまでのように週末に景色を愛でたりもせず、都会で高野のためにあくせくと女を磨く。そんな二重生活はいつか破綻が来るわけで…。

ラスト付近はえらく派手かなー。振れ幅の大きい、繭子の性格(というか、何だかまとまってない気がする。これでは、ちとエキセントリックちゃんだ)にはいまひとつ乗り切れませんでしたが、「盆栽師」という世界が面白かったです。好きか嫌いかだというと、あまり好きではないお話だとは思うのだけれど、この勢いは買う、そんな感じのお話でした。

「ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ」/ゲンジを巡る九つのお話

 2009-02-24-21:57
ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ
(2008/10/31)
江國 香織松浦 理英子

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あの光る君の物語から、九つの帖を選んで、現代の作家がその世界を描きます。まんま源氏物語そのものの世界であるようなものから、舞台をすっかり現代に移してしまったものまで。

でもって、こちらもメモを消してしまったので(涙)、amazonの内容紹介をお借りいたします。

内容紹介
現代の人気作家九人が新たに織りなす、もうひとつの源氏物語。

異国の男相手の店から幼い少女が抜け出そうとする角田光代流若紫。真実の愛を求める源氏がベニーちゃんにとまどう末摘花by町田康。尼となった女三の宮がみずからの生涯を昔語りする桐野夏生の柏木――ほかに松浦理英子の帚木、江國香織の夕顔、金原ひとみの葵、島田雅彦の須磨、日和聡子の蛍、小池昌代の浮舟、の九篇。

それぞれ素敵な世界だったんだけど、私が好きだったのは、町田さんの「末摘花」と、金原さんの「葵」、小池さんの「浮舟」でした。

金原さんのが好きなのは、自分でも意外だったんだけど、源氏の正妻としてちょっとお高いイメージすらあった葵の上が(って、完全に自分のイメージだけど)、 淡々とさばさばした感じで新しい命を育むところが良かったなぁ。そして、一方の光の役に立たなさっぷりも。

「浮舟」は、心ならずも二人の男の間で揺れることになった、女の心情が良かったです。心情だけなのに、実にダイナミック!

そしてそして、町田さん。「権現の踊り子」(感想)の、「逆水戸」を思い出しちゃうなぁ。題材も「末摘花」であるからして、ところどころ、ちょっと吹き出しそうになってしまいました。「末摘花」って女性の立場からすると、何を?!と思う面もあるんだけど、これは源氏のしょうも無さもあって、その辺あまり気になりませんでした。べらべらしゃべる平安貴族。町田康の文体に意外にハマるのかも~。

「文芸誤報」/05-08

 2009-02-24-21:42
文芸誤報文芸誤報
(2008/11/20)
斎藤 美奈子

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見開き二ページの鮮やかな書評。知っているについてはふんふんと読んだし、知ってはいても食指が動かなかったものも、斎藤さんの手に掛かると面白そう。「結末がいい」とか言われると、粗筋を何となく知っちゃって、もういいやーと思ってたですら、気になって来ちゃいます。頁数が短くったって、その魅力(やそのトホホっぷり)をきちんと伝えることは出来るのだよね。

書評の数は173で、取り上げられているの冊数は、200冊近いのだったかな。読みたいが色々あって、こまごまとメモしたはずなのに、手違いでそのメモを消しちゃったようなのです。涙 今、覚えているのは、乙一が別名でも書いてるとか、そういうことくらい~。

最初に掲げられていた、文芸書を読むための十箇条も面白かったです。ま、今の世の中、文芸とエンタメを殊更に分ける必要もないとは思うのですが、確かにどっちよりかで自分の読むモードも変わっているものね。純粋文芸も純粋エンタメもあまり好きじゃないので、その中の程良いどこかに自分が好きなバランスがある気がするけど。

「恋愛嫌い」/レンアイはそんなにエライか

 2009-02-16-23:56
恋愛嫌い恋愛嫌い
(2008/10)
平 安寿子

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気だるげなおねーさんが迫力の表紙です。お腹辺りがなんともリアルだな~、と。
目次
恋が苦手で……
一人で生きちゃ、ダメですか
前向き嫌い
あきらめ上手
キャント・バイ・ミー・ラブ
相利共生、希望します
恋より愛を
年齢も職業も異なる三人の女性。飲食店でたまたま相席になったことをきっかけに、仲良くなった彼女たち。仕事が違うから利害関係だって全くない。ランチを共にするだけの、程よい距離を保つ彼女たちに、共通して言えるのは、真っ直ぐ、正直だということ。だからこそ、恋愛至上主義が蔓延る世の中で、少々生きにくく感じたりもする。

●田之倉喜世美
…コンタクトレンズ販売店フロア主任、二十九歳。
 「恋が苦手で……」、「あきらめ上手」
●二宮翔子
…販売データ処理会社社員。二十六歳。HN mog。
 「一人で生きちゃ、ダメですか」、「キャント・バイ・ミー・ラブ」
●矢代鈴枝
…スナック菓子メーカーベテランOL、三十五歳。
 「前向き嫌い」、「相利共生、希望します」

イロイロと、彼女たちの女心を惑わす出来事もあるのだけれど、結局、彼女たちが選ぶのは、「それが自分らしいか?」ということ。奇跡的に感じの良い眼科医に言い寄られても、プチ成金に言い寄られても、ちょっとずれた後輩に好意をほのめかされても、揺らぎはすれど変わりはしない。

だから、最終章の「恋より愛を」が少し唐突にも思えてしまうんですが・・・。

信頼。
これより得難いものが、この世に二つとあるだろうか。

それでも、奪ったり食いつくしたりしない、レンアイだってあるはずなのだ。女性誌では、モテ特集なんかがやっているわけだけれど、それでもみんなが恋愛至上主義というわけじゃないよね。平さんは、等身大というか、自分の隣にいそうな女性を描くのが巧いよねえ。彼女たちのランチに混ぜてもらいたくなりました。

■関連過去記事■
セ・シ・ボン」/女子の生きざま

「踊るドルイド」/ドルイドは踊るよ

 2009-02-15-21:55
踊るドルイド (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)踊るドルイド (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)
(2008/09/26)
グラディス・ミッチェル

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内容紹介
見知らぬ男に、いきなり車に乗せられ「病人」移送を手伝わされたのだが、その病人は「血を流した死体」のように見えた・・・。
ドルイドが踊りだすとき、バラバラのピースはつながりはじめる――。

amazonの内容紹介も、いやにあっさりなんですが、これはうーん、確かに仕方のない面もあるのかな。グラディス・ミッチェルによる、「ミセス・ブラッドリーシリーズ」の一冊なんだけど、いつものことながら、ミステリの癖にプロットよりも、細部に面白さがあるんだよねえ。

”野ウサギと猟犬”のレース中、”猟犬”として”野ウサギ”を追っていた、青年、マイケル・オハラは、足をくじいた揚句に、内容紹介にもあるように病人の移送を手伝わされる。その後、血だらけの自分に気づいたオハラは、何らかの犯罪に手を貸してしまったことを恐れ、親友、ガスコインと共に、当地に滞在していた知り合いの弁護士のもとを訪ねる。そこにいたのは、彼の母親の、高名な精神科医、ミセス・ブラッドリー。青年たちの話を聞いた彼女は、秘書のローラ・メンジーズと共に、調査に乗り出すのだった…。

タイトルには「ドルイド」とはっきりあって、王家の血をひく若者オハラがいて(でも、王家の血を引いてることの意味が全くなかったような…)、巨石群があって…。確かにドルイドが踊るんですが、あまりそこをメインに考えない方が楽しめるような気もします。どっちかというと、学生たちがクロスカントリーを楽しむ、田舎の長閑な休日とか、ローラや青年二人(しかも、ハンサムなんだよー)の探偵ごっこを楽しむ感じ。陸地の巨石だけではなく、海岸の洞窟なども出てきちゃうんです。

ローラが若い女性であるということを考えると、すわ、二人の青年のうちどちらかとのロマンス?!などと思ってしまうのですが、そこはやはりグラディス・ミッチェル。ローラはかなり逞しき女性であり(具体的な体重の記述によると、かなりいい体格だったような気がするし、格闘になっても負けてません)、青年二人のことなんてお子様としか思ってないんですよねー。かつ、ローラには、実はギャヴィン警部という、婚約者がいるのでした。

今回の魅力はね、もうこのローラ嬢に尽きます! ミセス・ブラッドリーも相当面白がりながら、ローラを見守ってる感じなんだけど、バリバリ車を運転していたり、地図を読み込んでその地を歩き通してみたり、実践派の彼女の活躍が楽しいのです。ミセス・ブラッドリーの身辺で言えば、やたら有能な運転手ジョージもひそかに魅力的。ヘンなところが生き生き描かれちゃうのも、やっぱりグラディス・ミッチェルならではなのかなぁ。

■関連過去記事■
・「ウォンドルズ・パーヴァの謎」/イギリス人のミステリ!
・「月が昇るとき」/ミセス・ブラッドリー

「タングステンおじさん」/オリヴァー・サックスの少年時代

 2009-02-14-01:03
タングステンおじさん―化学と過ごした私の少年時代タングステンおじさん―化学と過ごした私の少年時代
(2003/09)
オリヴァー サックス

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脳神経科医、オリヴァー・サックスの少年時代を語ったエッセイです。医者、実業家など、科学に造詣の深い両親や親類たちの中で育ち、化学にのめり込んだ少年時代。少年、オリヴァーが化学にのめり込んだのは、疎開により負った心の傷もまたその一因であった…。不変であり、美しい化学の世界は、不確かなものが多い世の中で、少年オリヴァーを魅了したのだ。

ロンドンからの疎開と言えば、ナルニア国物語もそうであり、本土への空襲を経験していないという意味で、アメリカという国はやはり特別なのかも、などとちらりと思いました。
目次
1 タングステンおじさん-金属との出会い
2 「三七番地」-私の原風景
3 疎開-恐怖の日々のなかで見つけた数の喜び
4 「理想的な金属」-素晴らしきタングステンとの絆
5 大衆に明かりを-タングステンおじさんの電球
6 輝安鉱の国-セメントのパンと鉱物のコレクション
7 趣味の化学-物質の華麗な変化を目撃する
8 悪臭と爆発と-実験に明け暮れた毎日
9 往診-医師の父との思い出
10 化学の言語-ヘリウムの詰まった気球に恋して
11 ハンフリー・デイヴィ-詩人でもあった化学者への憧れ
12 写真-二度と戻らぬ過去への愛着
13 ドルトン氏の丸い木片-原子の目で物質をながめる
14 力線-見えない力のとりこになる
15 家庭生活-身内の死と発狂した兄
16 メンデレーエフの花園-美しき元素の周期表
17 ポケットに分光器を忍ばせて-街や夜空を彩るスペクトル
18 冷たい火-光の秘密へ
19 母-「生物への共感」と解剖の恐怖
20 突き抜ける放射線-見えない光で物を見る
21 キュリー夫人の元素-ラジウムのエネルギーはどこから来るのか
22 キャナリー・ロウ-イカと音楽と詩と
23 解放された世界-放射能がもたらした興奮と脅威
24 きらびやかな光-原子が奏でる天球の音楽
25 終わりのとき-量子力学の到来と化学との別れ
 あとがき
 謝辞
 訳者あとがき
わたくし、一応、化学の専門教育を受けているんですが、これ、すごく分かりやすく広範囲の化学を網羅していて、面白かったです。内容も、普通に教科書としても使えるんじゃないかなぁ、というレベル。科学者の発見を追う部分もあるので、科学史としても面白かった!

危険なものも含めて試薬を買える環境にあり(これは、たぶん時代のせいですよね。今だったら、きっと売ってはもらえない)、自分専用の実験室を持つことが出来(しかも、ドラフト付き)、また、アドバイスをくれる親類にも恵まれたという、特に恵まれた環境もあると思うんですが、少年オリヴァーが追及する化学の真実に、一緒にわくわくしてしまいます。

親類たちがまたすごくてですね、タングステンおじさんは勿論、オリヴァーに植物と数学の面白さを教えてくれた、レンおばさんもまた凄い(他の親類もみんなこんな感じなんだけど)。

あるときは、庭のヒマワリの花の真ん中に密生している小花がらせん状のパターンを描いているさまを見せ、その小花の数を数えてごらんなさいと言った。私が数えていると、おばは小花がある数列にしたがって並んでいるのだと指摘した。つまり、1、1、2、3、5、8、13、21……といった具合に、どの数も前のふたつの数の和となるように並んでいたのだ。

ヒマワリの花から、フィボナッチ数列と、黄金比を教えられる。なんだか、ユダヤ系社会の底力を見せられたというか…。

また、通常、周期表って、水兵リーベ僕の舟…、と何も考えず、覚えるもんだと思うんですが、オリヴァーの場合、アルカリ金属、アルカリ土類金属など、それぞれの元素の性質を知った後に、博物館で周期表の存在を知るのです。周期表を知ったオリヴァーの中で、ただの四角い表である周期表は、らせんやループに形を変え、天まで届くヤコブの梯子となる。こんなところも詩的だなぁ。少年、オリヴァーは融点や密度などから、自らその周期性を確かめ、また未知元素の性質の予言までしてしまうのです。

こういった背景を知って読むと、また、彼のこれまでの著作へのイメージも変わるなぁ。執拗とも思えた追及の仕方とか、物凄く患者に寄り添うところとか(これは、父親の影響なのかな)、何だか少しわかったような気もしました。

■関連過去記事■
・「火星の人類学者」/ダイナミックで複雑な脳というもの、わたしたちの世界

「TAP」/グレッグ・イーガン短篇集

 2009-02-09-22:19
TAP (奇想コレクション) (奇想コレクション)TAP (奇想コレクション) (奇想コレクション)
(2008/12/02)
グレッグ イーガン

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奇想コレクションの一冊である本書は、グレッグ・イーガンの日本オリジナル第四短篇集(全作本邦初訳)であるそうな…。奇想コレクションって、表紙の色遣いとか、何だかみんなおんなじ感じがするんだよねえ、と思いながら読んでたんですが、「銀炎」が面白くて、姿勢を正した感じです。

ところが、面白いなと思い始めた時点で時すでに遅く、次の予約者が待ってたせいで、全編読み通すことができずに、泣く泣く返却致しました。というわけで、この記事は完璧にただのメモ。

グレッグ・イーガン初読みだったんですが、もっとハード系のSFを想像してたんだけど、どっちかというと生物寄りなのかな? それがイーガンの本質かは分かりませんが、少なくともこの短編集はそんな感じで、割と読みやすそうな感じでした。

次回はその世界に入るのに時間が掛っちゃう短編よりも、一気にざくざくいけそうな長編を読んでみたいなぁ。と、思って、amazonで検索かけたら、やたらと「日本版オリジナル短篇集」の文字が…。イーガンの本質は短篇側にあるのかしらん。

色々読めそうだし、いっそ、こっちを読んでみようかなー。
20世紀SF〈6〉1990年代―遺伝子戦争 (河出文庫)20世紀SF〈6〉1990年代―遺伝子戦争 (河出文庫)
(2001/09)
グレッグ イーガンダン シモンズ

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目次
「新・口笛テスト」
Beyond the Whistle Test(Analog 1989.11)
「視覚」
Seeing(短篇集 Axiomatic,1995)
「ユージーン」
Eugene(Interzone 1990.6)
「悪魔の移住」
The Demon's Passage(Eidolon 1991.Winter No.5)
「散骨」
Scatter My Ashes(Interzone 1988.Spring)
「銀炎」
Slver Fire(Interzone 1995.12)
「自警団」
Neighbourhood Watch(Aphelion 1986/87.Summer,No.5)
「要塞」
The Moat(Aurealis 1991.3,No.3)
「森の奥」
The Walk(Asimov's 1992.12)
「TAP」
TAP(Asimov's 1995.11)
SF
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プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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