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「月が昇るとき」/ミセス・ブラッドリー

 2008-11-30-22:19
月が昇るとき (晶文社ミステリ)月が昇るとき (晶文社ミステリ)
(2004/09/30)
グラディス・ミッチェル好野 理恵

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Ciel Bleuの四季さんとジーヴス物についてお話していた時に、イギリス人のミステリということで思い出したのが、グラディス・ミッチェルによるミセス・ブラッドリーシリーズの「ウォンドルズ・パーヴァの謎 」(感想)だったのです。

で、その時、このシリーズをお勧めした割に、その後、シリーズその他の本を読んでないことを思い出し、借り出してきた本です。サーカスのテント、月、少年と自分が好きな要素が詰まってんなー、と思ったんですが、これが意外に楽しめず。
目次
第一章  骨董屋
第二章  月が昇るとき
第三章  サーカス
第四章  女綱渡り師の死
第五章  女給の死
第六章  亭主、しばし行方不明
第七章  農場に死す
第八章  ナイフ
第九章  月のない夜
第十章  老婦人
第十一章 子守り女の死
第十二章 拾い物
第十三章 分かれ道
第十四章 骨董屋
第十五章 サーカス
第十六章 子守り女の死
第十七章 亭主、しばし行方不明
第十八章 拾い物
第十九章 月が昇るとき
第二十章 老婦人
 グラディス・ミッチェルのオフビートな魅力
目次を書き出してみたら、割と凝った作りだったのかな。

主人公の少年はサイモンとキースという、十三歳と十一歳の兄弟二人。舞台は、ロンドンの西に位置する運河の町。両親は亡く、年の離れた兄夫婦と共に暮らす二人。赤ん坊もいる兄夫婦の家計は決して楽ではないようで、イネス家には若い女性である下宿人、クリスティーナがいる。サイモンとキースの二人はもちろん、兄ジャックもクリスティーナに恋しているといっても過言ではない。逆に兄の妻、ジューンは口うるさく、うんざりさせられる存在なのだが…。

復活祭の祝日に、サイモンとキースの暮らす町に、サーカスがやって来る。二人はサーカスのテントに潜り込むため、夜のうちに隙間を空けておこうと考え、偵察に向かうのだった。その途中、二人は運河の橋の上でナイフを持って佇む怪しい人影を目撃する。翌日、サーカスの綱渡りの女性が殺されていることが分かり、サーカスどころではなくなってしまう。サーカスを楽しみにしていた二人だったけれど、探偵だってやっぱりわくわくするもの。にわか少年探偵となった二人は、この謎に挑むのだが…。

続けて起こる殺人、なんとなく恐ろし気なぼろ屑屋、兄弟の友人である骨董屋の女性との少々奇妙なやり取り、やって来るスコットランドヤードの刑事、内務省の顧問であるミセス・ブラッドリー…。
うーむ、この奇妙なんだけど、微妙にツボを外した感のあるところは、確かにオフビートといえるのかも。若い女性ばかりを狙う切り裂き魔などといえば、割とセンセーショナルだったり、もっとえぐかったりするもんだと思うんだけど、ラストのあの部分を含めてもえぐいところはないんだよねえ。で、少年探偵+ミセス・ブラッドリーという、探偵小説もしくはミステリーであるにも関わらず、ミステリー色は薄いのです。

主眼は月が煌々と照らす中の運河だったり、少年二人の生活だったり、ぎくしゃくしていたけれど、今後は少しうまくいきそうでもあるジャックとジュリーの家庭なんじゃないかしら、と思うのです。ミステリーと思って読むと肩透かしで、その時代のイギリス少年の暮らしと思って読むほうがいいのかなー。ミセス・ブラッドリーも、ウォンドルズ・パーヴァと違って随分大人しいのよ。むしろ、サイモンの目を通してみれば、いい人だし。相変わらず、けたたましく笑ってはいるようだけれど、あんまり強烈エピソードはありません。

教会に対する考え、神に対する畏怖、彼らが通う学校、お茶の時間、食事など、なんだかねえ、イギリスの習慣がほの見えるものの、その辺の知識を持って読めば、もう少し面白いんじゃないかなぁ、と思いました。彼らはたぶん、上流階級ではなく、中流もしくは下級階級の子なのかな。それでも、わざわざ列車に乗って学校に通い、毎晩のように宿題があるんだよねえ。その辺り、ちょっと不思議だったなぁ。上流じゃないから、逆にこうなの?

amazonその他では、詩情にあふれた名作とされ、また著者グラディス・ミッチェル自身も本書がもっともお気に入りの作品なのだとか。それは彼女の子供時代を思い出させるからとのことで、サイモンは自分であり、キースは弟のレジナルドだと言明しているとのこと。というわけで、本書の肝は、この少年たちにどれだけ沿うことが出来るか、ということなのかも。最近、どうも読書の感受性が落ちてるので、ちょっと楽しめませんでした。「ウォンドルズ・パーヴァの謎」は、ミセス・ブラッドベリーのキャラが立ちまくってたので、楽しかったんだけどなぁ。
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「古道具ほんなら堂~ちょっと不思議あり~」/あなたの街の古道具屋さん?

 2008-11-22-10:37
古道具 ほんなら堂古道具 ほんなら堂
(2008/05/24)
楠 章子

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もくじ
プロローグ
1話 まめだのせっけん
2話 ガラスビンのしずく
3話 にじ色のこな
4話 かけた茶わん
エピローグ
表紙ではおばあさんが浮きながらこちらをじっと見てはいますが、この人は普通の人間。ほんなら堂の店主、白髪のおかっぱ頭の橙花さんなのです。

すっごく不思議なわけではなく、「ちょっと」不思議。そうですねえ、異界のものたちも出てくるけど、重点は普通の人の生活におかれています。悲しいけれど、惚けてきてしまっているおばあさんを持つ小学生の女の子、優子、お母さん亡き後、お父さんに厳しく躾けられ、それが嫌になっている明美、知らない男の子に影を踏まれてしまった波乃、友だちがいじめられているのを止められなかったさやか…。

一見おっかない橙花さんが(きちんと名乗らないと怒られたりするけど)、彼女たちを助けてくれるのです。おお、今書いてて気づいたけど、これって見事に女の子ばっかり出てくるお話なんだなぁ。

好みでいえば、私はもっと不思議な方に舵を切ってくれる方が好きで、街の不思議でいえば、村山早紀さんの書かれるものの方が好きでした。もっと怪異メインなのかなぁと思っていたので、ちょっとあてが外れてしまいました。優しい物語ではあるのですけれど、ね。

というわけで、以下過去記事へのリンクです。
・「カフェ・かもめ亭 ささやかな魔法の物語」/こんなお店があったらいいな
・「 コンビニたそがれ堂―街かどの魔法の時間 」/探しものはなんですか?

「名探偵クマグスの冒険」/南方熊楠探偵小説

 2008-11-22-09:54
名探偵クマグスの冒険名探偵クマグスの冒険
(2008/09)
東郷 隆

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目次
ノーブルの男爵夫人
ムカデクジラの精
巨人兵の柩
清国の自動人形
妖精の鎖
妖草マンドレイク
かつて、南方熊楠という偉人がいました。
(Wikipediaにリンク
っていうのは、小説の背景として読んだり、漫画で読んだりしていました(「坂の上の雲」「日露戦争物語」)。これは、その南方熊楠のロンドン時代のお話。

「Nature」に数々の論文を寄稿し、研究生活を送る傍ら、同時代にロンドンで起こった事件にもし南方熊楠がかかわっていたとしたら? その博覧強記を生かし、きっと見事に探偵役を務めたことでしょう…。というお話なのです。孫文など実在の人物もバリバリと出てきて、実際熊楠と孫文は交友があったそうなんですね。この作者の方がどういう方なのか、良く分からないんだけど、実際、本当の事もかなり含まれているのかなぁ。

多少ね、調べたことをそのまんま書いているのかな、という感じで、正直小説としてのバランスが悪いところ、カッコ書きが興を削ぐところもないではない。

ネットで検索してみたら、朝日新聞社のこんな記事を見つけました。
 名探偵クマグスの冒険 [著]東郷隆[掲載]2008年11月9日
  [評者]唐沢俊一(作家)
  ■奇人学者がホームズばりに大活躍
 

本書の著者・東郷隆は、国学院大学で“博物館学”を学んだという経歴の持ち主なんだそうであります。もう少しこなれてくれると嬉しいなー、なんだけど、他にも著作がいっぱいあるみたい。そこでは違うのかなぁ。シャーロック・ホームズなどの探偵小説がものされた、その時代のロンドンの雰囲気を楽しむ小説ですね。

「エミリーへの手紙」/詩集のなぞ

 2008-11-21-00:05
エミリーへの手紙エミリーへの手紙
(2002/06/25)
キャムロン・ライト

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離婚寸前のボブとローラ夫婦の娘、エミリー。ボブの父であり、エミリーの祖父ハリーのもとを訪れるのは、今ではローラとエミリーの親子と、ヘルパーのカーラのみ。実の息子であるボブ、ボブの姉ミッシェルは、父親とはうまくいっていなかった…。

まだ子供たちが幼い頃の、妻キャサリンの死に、ハリーは耐えられなかったのだ。ボブとミッシェルの姉弟は、母の不在だけではなく、父の不在を感じながら成長した。ところが、孫娘のエミリーとボブの妻ローラは、ハリーと心を通じ合わせていた。

しかし、年老いたハリーは、自らの変調を理解していた。このまま耄碌し、その姿がエミリーに記憶されてしまうのは耐えられない! そうして、ある日、ハリーは永遠の眠りに就く。ハリーが孫娘、エミリーに遺したのは…。
最初はねえ、不幸全開の大人たちにちょっと引いていたのです。離婚する気満々なボブ、まだやり直せるのではないかと考えるローラ。そして、アルツハイマーにより、衰えていくハリー。「エミリー」への手紙なんですが、実際、エミリーという女の子に関しては、特にキャラが立っているとか、すごく特別な女の子であるとか、そういったことはありません。ごく普通の女の子。

ハリーの死後、残されたのは、手作りの三冊の詩集でした。それはきっと、エミリーの分、ボブの分、ミッシェルの分。実はそれぞれの詩は謎仕立てになっており、その謎を解くと、それがパソコンのファイルのパスワードになっているという仕組みだったのです。夢中になって謎を解く、ローラとエミリー。

それはDear エミリーで始まるエミリーへの手紙だったけれど、ボブやミッシェル、ローラへの手紙でもあったのです。子供たちが知らなかった、両親ハリーとキャサリン二人の馴れ初め、ハリーの思い…。ハリーからの「エミリーへの手紙」は、ローラやボブにも影響を与えるのです。
エミリーへの手紙なんだけど、私が心に残ったのは、エミリーの母、ローラのことでした。最初は少々ヒステリックだったローラが、どんどん変わっていくのです。もともと、自分がうまくいっていない夫の父親を大切にする、いい人だったのだろうけどね。

なんとなーく、素人っぽい、素朴な物語。この物語は、1996年に亡くなった祖父が家族に遺した詩集をヒントに書かれたのだとか。自費出版からはじまり、口コミでひろまってユタ州のベストセラーになったのち、全国発売されたとのこと。ハリーが語る人生の教訓は、ごく当たり前のこともあるのだけれど、こういう構成で読むのが面白いです。

ラストはほんのちょっとひねってあります。いやー、検査っていっても、違う方の検査かと思いましたよ…。なるほどねえ。

「変愛小説集」/岸本佐知子さん、編

 2008-11-17-23:43
変愛小説集変愛小説集
(2008/05/07)
不明

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目次
五月   アリ・スミス
僕らが天王星に着くころ   レイ・ヴクサヴィッチ
セーター   レイ・ヴクサヴィッチ
まる呑み   ジュリア・スラヴィン
最後の夜   ジェームズ・ソルター
お母さん攻略法   イアン・フレイジャー
リアル・ドール   A・M・ホームズ
獣   モーリーン・F・マクヒュー
ブルー・ヨーデル   スコット・スナイダー
柿右衛門の器   ニコルソン・ベイカー
母たちの島   ジュディ・バドニッツ
 編訳者あとがき
愛にまつわる物語、十一篇。恋愛至上主義への意趣返しのはずが、編訳者、岸本さんも書かれているように、これが意外とピュアな愛の物語になっているのです。

私が好きだったのは、「五月」、「まる呑み」、「リアル・ドール」、「柿右衛門の器」、「母たちの島」。

突然、近所の家の庭にある木に恋してしまったわたし。「わたし」視点と、わたしが共に暮らす「私」視点がいいんだー(「五月」)。

近所の素敵な男の子、クリスをまる呑みしてしまった私。私の中に入ってしまったクリスとの、エロティックな日々が始まるが…(「まる呑み」)。

妹が持つバービー人形と付き合っている僕。妹の目を盗んでの逢瀬。妹の酷い扱いにも関わらず、バービーは妹のことをすっごくいい子というのだが…(「リアル・ドール」)。

本物の磁器とは、牛を感じるものでなくては。ルーシーの大伯母、パーチ夫人はそう言うのだった。子供のころから絵の巧かったルーシーは、長じて陶芸も嗜むようになった。「牛を感じる」磁器を作り上げた後に、彼女が作ったのは…(「柿右衛門の器」)。

この島は母たちの島。戦争により島を出て行った男たちは、とうとう戻ってくることはなかった。しかし、ある日違う男たちがやって来る。私たちの父親となった彼らは、再び島を去り、島はまた母たちの島となった(「母たちの島」)。

岸本さんの訳はどこか品があるんだよねえ、と書こうと思ったんだけど、この筋を書いていると、お話としては品とかそういう問題じゃないのもありますね。愛情がねじ曲がって、ちょっとホラーなところに着地しちゃったものもあるしなぁ。

突然、体が宇宙服に覆われ、最終的には宇宙へと旅立って行ってしまう、「僕らが天王星に着くころ」もその発想が面白かったし、ごく短い「セーター」、「獣」も当たり前の世界に、ぽーんと怖いものを持ってくるところが面白かったです。「お母さん攻略法」はこりゃまた随分とブラックだし(考えてもみてください。成熟した、経験豊かな、愛情深い女性がすぐ目の前にいるのです)、不治の病により自死を選ぶ妻とその夫を描いた「最後の夜」もまた、美しかった愛情が無残に壊れる様が残酷でした。崇高な愛のはずが、凡庸な愛に思いっきり邪魔されて白茶けています。

「ブルー・ヨーデル」はお話としては良く分かんなかったんだけど、小道具が面白かったです。蝋人形に交じってポーズをとり、急に動いて客を驚かせるなんて職業、実際にはないよねえ。その彼女の恋人の「僕」の仕事は、ナイアガラの滝で、誰かが樽の中に入って滝下りをやらないように監視することなのです。この二人のへんてこな職業が面白いし、どうしてそうなっちゃったんだかはまったく分からないのだけれど、クレアが飛び去ってしまうのが飛行船であること、国境など物ともせずひたすら飛行船を追うさまなど、なかなかに美しいのです。

「ミスター・ミー」/世界は網目で繋がっている?

 2008-11-12-23:04
ミスター・ミー (海外文学セレクション)ミスター・ミー (海外文学セレクション)
(2008/10)
アンドルー・クルミー

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表紙がなんだか可愛いでしょう。東京創元社から出ている本書、著者アンドルー・クルミーの四作目の作品にして初邦訳だそうですよ。

面白いっちゃー面白いんですが、読書に何か役立つことを求める向きにはお勧め出来ないタイプの本です。ただただ、ああ、こういう事も出来るんだよねえ、と小説としての型を楽しむ本かな。あとは、結構下ネタ的要素もある(こういうタイプの本ほど、そういう要素が散りばめられるのはなぜなんだ?)ので、そこを面白いと思うかどうかだなー。

表紙扉からそのまま引用します。

 書物に埋もれひとり暮らす八十代の老人、ミスター・ミー。彼は、ひょんなことからその存在を知ることになった、失われた謎の書物、ロジエの『百科全書』の探索に熱中し、パソコンを導入するに至る。ネットの海に乗り出した老人は、読書する裸の女性のライブ映像に行き着いた!彼女の読んでいる本のタイトルは『フェランとミナール―ジャン=ジャック・ルソーと失われた時の探究』
 浄書で糊口をしのぐ十八世紀のふたりの男、フェランとミナールと謎めいた原稿の物語、ルソー専門のフランス文学教授が教え子への恋情を綴った手記、老人ミスター・ミーのインターネット奮闘記。この三つの物語のそれぞれがロジエの『百科全書』を軸に縒り合され、結ぼれ、エッシャー的円環がそこに生まれる!

前情報と、この老人が本に囲まれた表紙を見て(よーく見ると、実際は机の真ん中にPCがあり、そこには裸の女性がいるんだけど)、もっと緻密な本に関するお話なのかなぁ、と思っていたのです。でも、実際は怪しげな本を巡るお話ではあれど、それぞれにすっとぼけた人物たちが活躍するお話でもありました。”エッシャー的円環”とまで言う必要があるかは良く分かんないけど、私はお話の繋がりよりも、むしろこれら三つの物語の人物たちのしょうもなさを楽しんでしまいました。

十八世紀のやせ形のっぽのフェランと、ちびでぶのミナール(このミナールがまた、胃袋で考えるタイプの考えなしさんなんだなー)、世間知らずの老人ミスター・ミー、妄想たくましいペトリ博士。虚実織り込まれた作風は、既にどこに実があるのかも良く分からず、ルソーだのダランベールだのプルーストだの、「実」を知っていればもっと面白いのかもしれないけど、分け隔てなく楽しんじゃうべきなのかも。絶対嘘だー、と思っていた「テアトロフォン」はネットでちょっと検索してみたところ、本当にあったものみたい。

そういえば、ロベスピエールってどこかで読んだんだよな、と思っていたら、よしながふみさんの「ジェラールとジャック」でした。私の十八世紀フランスの知識ってこんなもんなのよね。でも、漫画って便利。

ジェラールとジャック (白泉社文庫)ジェラールとジャック (白泉社文庫)
(2004/05)
よしなが ふみ

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「ムッシュ・マロセーヌ」/マロセーヌ・シリーズ4

 2008-11-11-23:57
ムッシュ・マロセーヌムッシュ・マロセーヌ
(2008/08)
ダニエル・ペナック

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赤ん坊が一人ずつ増えていくこのシリーズ。今度の子どもは、なんとバンジャマンとジュリーの子ども! 生贄の山羊的人生を送るバンジャマンは、生まれてくる子どもに向かって、多分に厭世的に自らの周囲の紹介を行うのだけれど…。

これに老ジョブなる人物が残した《唯一の映画》と、彼のすべての映画コレクションを、ベルヴィルに残されたたった一つの映画館、ゼブラ座を預かるシュザンヌに譲るというお話が絡んできます。

どうしたって暴力的になりそうもない話なんだけれど、そこはそれ、マロセーヌ・シリーズだからして、相変わらず人は死んじゃうし、バンジャマンは嫌疑をかけられるのです。映画の話かなーと思っていたら、娼婦たちの刺青(タトゥー)を剥ぎ、惨殺する事件も絡んできちゃうしねえ。しかも、今回はいかに疑わしくともバンジャマンの無実を信じてくれた、クードリエ警視長がまもなく定年を迎えるときた! 後釜の娘婿のルジャンドル警視長には、苛々させられちゃいます…。

時系列は、バンジャマンの子どもがジュリーのおなかに宿っていると分かってからと、その子どもが生まれ出るまで(ジュリーのおなかからじゃないけどね! いやー、前作「散文売りの少女」といい、外科医のベルトルドの腕のげに恐ろしきことよ)。

このシリーズの魅力って何だろう?、と思うんだけど、饒舌さとそんな無茶なー!な展開でしょうか。お馴染みメンバーのどたばたを楽しむこのシリーズ、なんとなく中毒性があるんだよね。ただし、そのどたばたもそれなりの思い入れがないと楽しめないわけで、今回でいえば、二作目をすっ飛ばしちゃったせいか、パストール警部との愛の逃避行を終え、家族のもとに帰ってきたママについては、いまいち楽しめないまま…。一作目と三作目では、ママはほとんど不在だもんねえ。

老ジョブとその妻、リースルが作ったという、《唯一の映画》。うーん、実際にこんな映画があったらどうなんでしょう。このシリーズは、はちゃめちゃなようでいて、意外と伏線などがしっかりしているのも特徴で、全部読んでから彼らの息子、マティアスの台詞を読むと、また興味深いのです。
そうそう、あの泣きまくり、不機嫌なヴェルダンはてっきり男の子だと思っていたので、女の子だったのが驚きだったなー。そして、訳者あとがきを除いて、481ページ、二段組の本書、該当箇所をもう一度探すだけでもとっても大変。上で書いたマティアスの台詞について、もう一度よく見てみようと思ったら、これが探せなくてですねえ。勘違いだったのかなぁ。わが一族は偏執狂的で…というような台詞しか探せませんでしたわ…。色々と情報量多すぎなんだよね、この本。いや、そこがいいんですが。
目次
Ⅰ すばらしきかな、人生
Ⅱ <雪のシスー>
Ⅲ ジョブの息子
Ⅳ シュザンヌと映画狂たち
Ⅴ 癲癇の洞窟
Ⅵ バルナブース
Ⅶ ジェルヴェーズ
Ⅷ 最悪の法則
Ⅸ 幕間
Ⅹ 幕間終了
ⅩⅠ 帰ってきた身代わりの山羊
ⅩⅡ 刑務所にて(現在形で)
ⅩⅢ 墓地はその話題でもちきり
ⅩⅣ ムッシュ・マロセーヌ
 訳者あとがき

☆関連過去記事☆
・「人喰い鬼のお楽しみ」(感想にリンク
・「散文売りの少女」(感想にリンク

「アメリカにいる、きみ」/ナイジェリアという国を知っていますか

 2008-11-10-22:44
アメリカにいる、きみ (Modern&Classic) (Modern&Classic)アメリカにいる、きみ (Modern&Classic) (Modern&Classic)
(2007/09/21)
C・N・アディーチェ

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ラッタウット・ラープチャルーンサップの「観光」の記事にコメントした際に、P&M_Blogのpiaaさんからお勧め頂いた本です。

著者が1977年生まれと比較的若いこと(「観光」は更に若く1979年生まれ)、みずみずしい筆致と確かに連想させられる部分もあるかも。でも、私が感じたのは、ルワンダの大虐殺を描いた「ジェノサイドの丘」(上巻感想下巻感想)を読んだ時と同じように、自分は何も知らないんだなぁ、ということ。

ナイジェリアという国について、よく知っているという人はきっと少ないでしょう。Wikipediaを読んでも(ナイジェリアの項にリンク)、とっても複雑な成り立ちの国家であることが良く分かります。それは、ほとんどすべてのアフリカの国々に当てはまることなのかもしれないけれど…。
目次
アメリカにいる、きみ
アメリカ大使館
見知らぬ人の深い悲しみ
スカーフ―ひそかな経験
半分のぼった黄色い太陽
ゴースト
新しい夫
イミテーション
ここでは女の人がバスを運転する
ママ・ンクウの神さま
 訳者あとがき
もちろん、これは「ジェノサイドの丘」のようなノンフィクションではなく、物語であるわけなんだけど、巧みに織り込まれたナイジェリアという国の内情が胸を打ちます。最初は自分がナイジェリアを知らないだけに、ちょっとカタログ的?と思ってしまったけれど、悲しい苦しい話の中に、著者近影の力強い笑顔のように、どことなく明るいユーモアが見える短編集でした。

心に残ったのは、「見知らぬ人の深い悲しみ」、「スカーフ」、「イミテーション」、「ここでは女の人がバスを運転する」。後ろに収録されているものの方が、少し柔らかくなっているような印象を受けました。なんかね、ここに筋を書いてしまうよりも、頭の中でもう少しゆらゆらとさせておきたい感じ。話の筋も勿論大切だけれど、それ以上の空気とか雰囲気を沁み込ませておきたいなぁ。

ラヒリの物語には内戦が影を落とすことはないけれど、インドのジュンパ・ラヒリを思わせる部分もありました。ラヒリと同じくびっじーん!だしね。

アフリカといえば、面白かったんだけど、どうもネット上でもあまり感想を見かけない「哀しいアフリカ」の感想にリンク。実話だなんてうっそでしょーーー!な、国際的私立探偵、ケリー・ジェームズ氏の冒険譚。面白いですよー。

「年下の男の子」/あいつはあいつは…

 2008-11-08-20:12
年下の男の子年下の男の子
(2008/05/16)
五十嵐 貴久

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目次
出会いについて
メールについて
ディナーについて
会議について
引っ越しについて
デートについて
告白について
紹介について
ご褒美について
×××について
交際について
別れについて
神様について
三十七 マイナス 二十三 イコール 十四。

この年齢差の恋愛はありやなしや?

それも、女性の方が年上だったとしたら?

というお話。


いやー、これが実に楽しいんですよ。

児島クンの懐きっぷり、晶子の逡巡。リアルかどうかは良く分かりませぬが、楽しませて頂きました。
三十七歳、独身。このたび、ついにマンションを購入までしてしまった、食品会社宣伝部広報課勤務、川村晶子。結婚を諦めたわけではないけれど、四年前に彼がいたきり、交際している男性もいない。

代り映えのしない日常の中、先方のミスとは言え、会社人生初とも言えるトラブルが起きてしまう。ミスを取り戻すため、徹夜のシール張り作業をともに行うことになった、取り引き先PR会社の若い男性、児島達郎。深夜の難作業を行う中、ある種の感情が芽生えるけれど、それは危機をともに乗り越えたからだと思っていた。その後の彼の、お詫びを兼ねた食事の誘いも、社交辞令だと思っていたのだが…。

なんだかまめにメールを送ってくる児島くんに絆され、食事を共にする晶子さん。話も合うし、好感のもてる青年である児島クン。晶子の引っ越しも重なり、晶子と力仕事が得意な元・山岳部の児島くんは関係を深めていくのだが…。
有川浩さんの「ラブコメ」ともまた違うんだけど、読みながらなんだかニヤニヤしてしまうんだなぁ、これが。

晶子とも年齢が釣り合い、彼女の憧れの人でもあった、秋山部長の離婚話とか、児島くんに好意をもつ、晶子の後輩小川弥生とか、二人の障害(?)も出てくるんだけど、ここらは割とあっさりしているような気がしました。小川弥生なんて、応援してるよ~!、と言いながら、実際は晶子がとってしまったわけで、もうひと波乱あるのでは?と怯えながら読んでたんだけど、彼女は割とただ大人しいだけの女の子でしたね。いわゆる女性の恋愛小説だと、このあたり、恐ろしい復讐に打って出たりするもんですが、あまりどろどろせず良かったです。

ファンタジーといえばファンタジーなのかもしれないし、ラストはそうきちゃうか!、というのもあるけど、それでも読んでる間、私は楽しかったなー。児島くんの懐き方には、なんだか大型犬を思わせるものもありますが、いいよねえ、こんだけ気が利く児島くん。こんな子が、周りにいたら楽しいだろうなぁ。恋愛ではなくても、好意を示されれば嬉しいわけで、なんつーか大人になっても、その年齢ほどは実際には大人に成りきれていない私なんかは、精神年齢的には結構な年下とも変わらないのよね。最近、会社で一回り下の女の子に癒されている私、こんな恋愛もいいなー、などと思ってしまいました。

「非正規レジスタンス」/IWGP8

 2008-11-05-23:20
非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク8非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク8
(2008/07)
石田 衣良

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目次
千川フォールアウト・マザー
池袋クリンナップス
定年ブルドッグ
非正規レジスタンス

■千川フォールアウト・マザー■
シングル・マザー、ユイの苦しみ。彼女に自らの経験を踏まえて、ある道を示したのはマコトの「おふくろ」だった。ユイの子供、カズシの転落事故などは、どこかで起こっていても不思議ではない事件。わたしたちはその背景を知ることもなく、若い母親を無責任だと責めるけれど…。その裏にはこんな事情がないとも言い切れないよなぁ。

■池袋クリンナップス■
池袋の街を再開発したデベロッパーの息子、カズフミは池袋の街で清掃活動を始めていた。黄色いバンダナをつけた、平和的集団、池袋クリンナップス。ところがこのカズフミが、父親の強引な事業の進め方のせいか、誘拐されてしまう。マコトはカズフミを救出するための協力を求められるのだが…。

■定年ブルドッグ■
どうしようもないS男に引っかかってしまった、警察官の娘、ハルナ。ハルナの行動もあまり褒められたものではないけれど、S男、カズマは、ハルナの父と、ハルナそれぞれに写真をばらまき、脅してきたのだ。父と娘の物語であり、警察官の父と「定年ブルドッグ」である大垣の友情の物語でもある。

■非正規レジスタンス■
池袋の街でマコトが知り合った、まるで難民のような生活を送るサトシ。そんな中、日雇い派遣で生きのびる彼らが、何者かに襲われるという事件が相次ぐ。マコトは派遣会社、ベターデイズに登録し、スタッフ番号I128356の真島として、その内情を探ることになる。
これが、池袋の、日本の「今」だとするならば、今回はまた随分と暗い話ばかりだなぁ、と思いました。相変わらず、石田さんの「今」を切り取る文章は見事なんだけどね。

たとえば、「非正規レジスタンス」における出だしはこんな感じ。

 おれたちの生きてるこの国では、二十四歳以下の若いやつらの半分が透明人間だって、あんたはしってるかい?
 やつらはこぎれいな格好をして、こまめにシャワーを浴び、外見はまるでうえの階級に属する正社員の若者と変わらない。憲法で保障された生存権を脅かす貧しさは、巧妙かつ必死に隠されているのだ。すえた汗のにおいはしないし、髪型だって普通。女だったらきちんと化粧もしているだろう(デパートの試供品なんかでね)。
 だが、誰も気にとめない透明人間をよく見てみると、悲惨な実態がわかってくる。

ベターデイズは、まんまグッドウィルのあの事件ですね。安全ネットもなく、連帯感もなく、日々漂うしかない若者たち。この中にも東京フリーターズユニオンなる団体が出てきますが、実際にもこういった団体が出てきているのですよね。安く使い捨てできる人材を求める企業の姿勢は、一度その旨味を知ってしまっただけに、本当に変わることが出来るのかしら、と思うけれど、やっぱりこのあたりの歪さはどこかで是正するべきだよねえ。働いて、評価されて、経験を積み上げることは、純粋に喜びだもの。ただただ労働力を提供するだけでは、擦り切れていってしまうよなぁ。
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プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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