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「ディスコ探偵水曜日・上」/舞城王太郎、総決算?

 2008-09-30-23:18
ディスコ探偵水曜日 上 (1)ディスコ探偵水曜日 上 (1)
(2008/07)
舞城 王太郎

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何の前情報ももたずに、ぽちっと図書館の取り寄せをした私は、この本が届いて思わず仰け反りましたよ。だって、上下巻だっつーのに(結果的に下巻は上巻に比べると、大したボリュームではなかったんだけど)、上巻はなんと621ページ!(背表紙の厚さを思わず測ってみたら、37mmくらい?) お前は京極本か!、と突っ込みたくなるのは、私だけではありますまい。

大爆笑カレーとか、コテージ奈津川とか、ルンババ12とか、桜月淡雪とか、「THE WORD IS MADE OUT OF CLOSED ROOMS」とか、九十九十九とか、暗病院終了(あんびょういんおわる。清涼院流水みたいじゃない?)とか、東京都調布市とか、福井県西暁町とかとか、たぶん私が見逃してるのも含めて、懐かしのキャラクターだとか設定がバシバシと出てくるのですが、このあんまりな情報量にクラクラと目眩がします。また凄いのが、途中から始まる<パインハウス>で起こった作家、暗病院終了の密室殺人の名探偵たちによる解釈なんですが、推理を展開していった名探偵たちは、途中から真実がすり抜けていくことで、その推理は間違ったものとなり、続々と左目に箸を突っ込んで絶命しちゃうのです。えっぐー。

まぁ、でも、そういった色々な物が詰め込まれていても、やっぱり舞城さんが言ってることは、ごくごくシンプルなんだと思うんだよなー。
ディスコ探偵水曜日。DISCO Wednesdayyy(お前は、終りにeがつくanneかっつー気もしますが)、もしくはディスコ・アレクサンダー・ウェンズデイ、ディスコ水曜日、時にウィリアム・イーディ、時に踊場水太郎は、迷子探しを専門とする探偵。

彼はある事件で取り戻した、六歳の山岸梢と一緒に住んでいる。ところが、梢の体に変化が起こる。十七歳の梢を名乗る、未来の彼女がやって来る時、六歳の梢の体は、本当に伸び縮みしているのだ。同時に起こる、少女たちの魂を盗むとされる「パンダラヴァー」事件。また、小さい梢が体を追い出される時に行くという、「パイナップルトンネル」。西暁町の「パインハウス」事件を聞いたディスコは、梢を守るために、ディスコと同じくらいぶっ飛んだ名前の(そして、ぶっ飛びっぷりは、決して名前だけでは終わらない)、水星Cと共に「パインハウス」に乗り込んでいく。そこでは名探偵たちの推理と死が連続していた。果たして、ディスコは梢を救えるのか?
筋としてはこんな感じなんだけど、タイムトラベル的要素を含むからか、ワームホールだの量子論的な話が出てきたり(下巻では宇宙論なども)、図もバシバシ出てきたり、舞城さんらしいといえば実にらしい作り。突然の太字とか(ジャスト ファクツ)、「待て待て。」とかで展開していくお話も。

で、私がシンプルだと思う、この小説から伝わって来たことは、子供は守るべきものであること、意志の力が世界を変えること、弱いことは悪いことだなんて決めつけんな!、気持は実際に力を持つこと、とにかく愛!とかそういうことなのです。

ラスト付近では、ディスコは時空を曲げて自在に時を行き来できるようになっちゃうし、パンダは喋るし、まぁ、本当に何でもあり。とはいえ、ラスト、これにて無事解決か?と思いきや、まだまだディスコは休むことが出来ません。上巻で振り落とされなければ、下巻は一気に行っちゃえます。

でも定められているとは言え俺は努力を続けなければならないのだ。思うこと、感じること、求めること、願うこと、欲しがること、そういうものをすべて強く持つことだけが運命を引き寄せる。誰よりも強いそれらを持つことだけが運命を現実化させる。 (p618より引用)

本筋とは異なるけれど、気になったことと言えば、「ら抜き」言葉! 新潮社のチェックをくぐり抜けているわけだし、わざとだよねえ。でも、なんでー? あとは私はやっぱり舞城さんの擬音が好きだな~。電話の音、ルサムサムサムサム……とか、ぶぶーという笑い声とか。梢が読んでるのが、「大どろぼうホッツェンプロッツ」なんてところも。しかし、ディスコは何で、宇野千代の桜の花びらナイフとフォークなんて持ってたんでしょう。笑 そりゃ、あんまりにファンシーだ。
目次
第一部 梢
第二部 ザ・パインハウス・デッド
第三部 解決と「○ん○ん」
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「平台がおまちかね」/本と書店とミステリー

 2008-09-28-23:17
平台がおまちかね (創元クライム・クラブ)平台がおまちかね (創元クライム・クラブ)
(2008/06)
大崎 梢

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書店を舞台とした、「配達赤ずきん」シリーズの大崎梢さん。本にまつわるお仕事といえば、ぱっと思い浮かぶのは、書店員や出版社の編集部だけれども、いやいや本が実際に売れるまでには、もっと様々な人たちの手を経ているのです。そう、たとえば、出版社の営業さんとか。

というわけで、これはとある中小出版社の営業である、新人・井辻くん(口の悪い他社の営業、真柴によると”ひつじくん”)を主人公とした短編集。まじめで穏やかでいて、なかなかの推理力を持つ、この井辻くんのキャラクターもあって、本に対する真摯な愛情を感じつつ、ミステリを楽しめるという、嬉しい作り。うーん、私、配達赤ずきんシリーズより、こっちの方が好きだわ。”ひつじくん”の名付け親でもある、井辻くんの勤める明林書房の二倍は大きな佐伯書店の営業マン、ラテン系ノリだという真柴との会話も楽しい。

口下手で地味、しゃべるのが苦手と自己分析しつつ、出版社の社員となりながら、井辻くんが編集部ではなく営業にいるのは、ある一つの理由があるのだけれど、それもまた可愛らしい理由なんだな~。本の世界の楽しみ方は、人それぞれ。井辻くんにも誰にも負けない、本への愛情があるのです。

安野モヨコさんの「働きマン」にも、報われない(と思っていた)出版社の営業マンの話が出てきましたが、本が出版され、私たちの手元に届くまでには、本当に色々な人たちが関わっていて、それは誰が偉いとかそういう話ではなく、どれも欠かせない仕事なんだよね。

図書館本ばっかり借りてはいるのですが、それでも私も実書店の平台を眺めたり、書店を徘徊するのも大好き。今後はそれに加えて、営業さんっぽい人がいたら、思わず注視してしまいそうです。本って特殊な商品なだけに、営業という仕事も大変だよね。それでも、編集部のいい本を作ってやる!という思いとおんなじに、いい本を売ってやる!と思うのでしょうねえ。
目次
平台がおまちかね
 新人営業マン・井辻智紀の一日 1
マドンナの憂鬱な朝
 新人営業マン・井辻智紀の一日 2
贈呈式で会いましょう
 新人営業マン・井辻智紀の一日 3
絵本の神さま
 新人営業マン・井辻智紀の一日 4
ときめきのポップスター
 新人営業マン・井辻智紀の一日 5
しかし、創元クライム・クラブ。「ヴァン・ショーをあなたに」もそうだったんだけど、amazonで画像が出ないのはなーぜーー!!平台に積まれた本が楽しい表紙なのになぁ。

■関連過去記事■
・「配達あかずきん-成風堂書店事件メモ」/本屋の謎は書店員が解く!
・「晩夏に捧ぐ-成風堂書店事件メモ(出張編)」/今度は出張だ!

「人喰い鬼のお愉しみ」/マロセーヌ・シリーズ1

 2008-09-27-00:50
人喰い鬼のお愉しみ (白水Uブックス―海外小説の誘惑)人喰い鬼のお愉しみ (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
(2000/08)
ダニエル ペナック

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利用図書館の新着案内を何よりの楽しみにしているわたくし。たまたま気になったのが、このマロセーヌ・シリーズの三作目だったのですね。よく見たら、一作目も図書館にあったので、まずはそちらから借り出してまいりました。

しっかししっかし、これがめちゃくちゃ小ネタ的というのかなー、これがフランス的というのかなー、ごちゃごちゃとフリルがついた小説なわけです。この一週間、これと舞城王太郎の小説を併読してたのですが、ちょっと辛いものがありました。多分後で書くけど、舞城さんの「ディスコ探偵水曜日」にも、「人喰い鬼」的な要素があったしなー。

さて、マロセーヌ・シリーズというだけあって、主人公は当然マロセーヌ君(バンジャマン・マローセヌ)なわけですが、彼の職業は少々変わったもの。デパートのスピーカーから降る、軽やかで優しげな声が今日も呼ばわる。「マロセーヌさま、お客様ご要望コーナーまでお越しください」。

マロセーヌは、一応デパートの品質管理係ということになっているのだけれど、実際に彼がやる仕事といえば、品質管理などではなく、それは客のクレームに対する生贄の山羊。責め立てられるマロセーヌに同情し、客はそれまでの自分の要望を引っ込めるのだ。まさに見事な悪党どもの連繋プレー。勿論、マロセーヌはそんな仕事に多少嫌気がさしてもいるのだけれど…。

そうはいっても彼には養わなければならない弟妹がいる。漂泊の旅人のような常に家出中のマロセーヌの母は、父親の違う子供を産んでは、「私のおおちびさん」であるマロセーヌに、彼らの世話を任せているような状態なのだ。

さて、マロセーヌが勤めるデパートで爆発事件が相次ぐ。生憎なことに、いつも現場に居合わせるのはマロセーヌ。そろそろ警察の目も厳しくなってくるところ。この事件はいったい何のために起こっているのか??

ここで、「人喰い鬼」というタイトルが効いてくるんですねー。一見、何の関係もなさそうだった、マロセーヌの弟が描く人喰いサンタクロースの絵なんかも効いてくるし。
このバンジャマンを入れて五人の兄弟たちは、それぞれに問題を抱えているんだけど、彼らを棄てた様な形になっている母を含めてさえ、いい家族なんだな。健康的とは言い難い、バンジャマンがちびに聞かせてあげる彼の作り話だって、それは彼らの絆なわけだし。中絶しようとしている妊娠中の妹ルーナ、何でも写真に撮ることでどうにか世界を理解出来る妹クララ、占いと神秘主義に傾倒する妹、テレーズ、実際に爆弾を作って見せちゃう弟、ジェレミー、人喰いサンタを描いて女教師を驚愕させる、ちび。揃いも揃って、個性的。

その他にも、バンジャマンの同僚で、同性愛者のテオ、テオが君臨する売り場を徘徊する小爺(おじい)たち、忘れてはならない、バンジャマンの飼い犬、ジュリユスなどなど。ジュリユスの匂いには勘弁ーですが、脇も色々面白いのです。あと、同僚たちの声にもめげず、バンジャマンを信じるクードリエ警視長とか。

読みづらかったと文句をつけた割には、意外と褒めてますが、これは読んだ後の方が、じわじわ面白かったな~、と思う類の小説みたい。ちらほら見たところでは、続く作品でも、せっかくデパートを辞めたというのに、バンジャマンの生贄の山羊(スケープゴート)的人生は続くみたい。続きも読んでみようかな。
私が読んだのは、全8冊から成る「新しいフランスの小説」のシリーズの内の、単行本ですが、amazonで表紙が出てきたものを載せています。

「フリッツと満月の夜」/ひと夏のミステリー

 2008-09-23-23:19
フリッツと満月の夜 (TEENS’ENTERTAINMENT 1)フリッツと満月の夜 (TEENS’ENTERTAINMENT 1)
(2008/04)
松尾 由美

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夏休みの間、小説家の父さんと共に、海の近くの小さな町で過ごすことになった、カズヤ。こう来ると、フリーライターの父に連れられ、座敷わらしのいる旅館に泊まることになる、同じく夏休み中のユカ(@「雨ふり花さいた」)なんかを思い出しちゃうわけですが、こういうのは、ある意味定番のティーンのお話とも言えるのかな。ティーンの頃のひと夏の冒険、実際に体験したかったかも?

私がこの本に興味を持ったのは、あちこちで評判だけは耳にしていた松尾由美さんの作であることと、この可愛らしい表紙。

えー、実際はお話の作りは、ちょっとやっぱりティーン向け?という感じで、期待していたのとは違ったんだけど、今度は「人くい鬼モーリス」を読んでみたいなぁ、と思うくらいには楽しみました。

気の進まないまま、小さな港町へとやって来たカズヤは、近くの食堂、「メルシー軒」の息子、ミツルと友達になります。最初は無愛想で太ったミツルとは到底友達になれない、と思っていたカズヤだけれど(なんだって、周りの大人ってのは、年が同じならば友達になれると簡単に考えるんだ?)、この町の秘密をきっかけに仲良くなるのです。

ゴルフ場建設に燃える町長、偏屈な老婦人の消えた遺産、耳にピアスをつけたの謎、門扉に描かれたダビデの星の謎…。これがひと夏のミステリー

ラストはもう一つの謎も解かれまして、カズヤとこの町との付き合いも、また夏ごとに続きそう? そうすると、シリーズ化なんかも出来ちゃいそうな感じがしますが、どうなのかなー。でも、方向音痴の泥棒、という設定はちと苦しいかも。安全な方に逃げたつもりが、泥棒と出くわしちゃうなんて、迷惑だわ…。

満月の夜、暗がりに光るきんいろ。それはやっぱり魅力的だもの。他のメンバーも含めて、彼らが活躍する様をもう少し見てみたい気がします。

「清談 佛々堂先生」/粋にいきましょ

 2008-09-22-22:27
清談 佛々堂先生 (講談社文庫)清談 佛々堂先生 (講談社文庫)
(2007/09/14)
服部 真澄

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仏のようだからと言う人もいれば、ブツブツ文句を言うからだ、と話す人もいる佛々堂先生の名の由来。確かなのは、先生の物を見る目と、物事を好い塩梅に持って行くその力。

佛々堂先生は、特に身分を隠しているわけではないんだけれど、その現れ方は少々水戸黄門的とも言えるかも。擦り切れたシャツと作業着のようなズボンという見てくれに、ハンガーに服がぶら下がり、家財道具が詰め込まれているような目立つワゴン車。到底名のある人物には見えないけれど、これが実は関西随一の数寄者なのだとか。

「控えおろう!」なんて叫ぶ、助さん格さんは居ないけれど、京橋の美術商「知恩堂」なんかは近いものがあるんじゃないかな。人を助けるだけではなく、自らの楽しみも忘れない、佛々堂先生の最後のネタ明かしを聞く所なんかも含めてね。
目次
八尾比丘尼
雛辻占
遠あかり
寝釈迦
私が好きだったのは、「遠あかり」と「寝釈迦」。

「遠あかり」は、飛騨高山の料亭、『かみむら』を舞台としたお話。勇壮な起こし太鼓もいいし、段々と洗練されていく『かみむら』の様子もいい。女ものの着物のそんな秘密。全然知りませんでしたよー。しかし、ここでの佛々堂先生の手配は、ちと殺生でもある。芽吹きの遅い男に、”起こし太鼓”の音が聞こえるといいな。

「寝釈迦」の舞台は、山守りをつとめる民宿『わだ』。丹精込められた松の木である肥松、見てみたい気がします。きっと私が見てるようなのは、肌荒れしてるような松なんだろうな。虫は松の油を好いているんだそうな。

服部真澄さんといえば、これまで読んだことはなかったのだけれど、ハードな国際推理小説を書かれる方とのイメージでした。それとは全然タイプが違うこういう本も書かれるんだな、とちとびっくり。

私が読んだのは単行本なんだけど、amazonの表紙画像を貼ろうと思ったら、そちらの情報は出てこずに、文庫本の情報が出てきました。なぜなんだー。続きも出てもいい作りなんだけど、このあと続きはないのかしら?? 飄々とした佛々堂先生、またどこかでお目にかかりたいものです。
四季さんに教えてもらいました。単行本の表紙はこちら↓。こっちも雰囲気あるよね。
清談 仏々堂先生清談 仏々堂先生
(2004/03)
服部 真澄

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「海の底」/熱き血潮を

 2008-09-21-15:06
海の底海の底
(2005/06)
有川 浩

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陸空ときて、これが「海」ですね。此度、地上を襲うのは、突然海からやって来た、赤い巨大甲殻類。正体はおいおい明かされるけど、つまりは赤くどでかいエビが地上を荒らすのです。

「塩の街」、「空の中」と違うのは、ヒーロー側が二人であることでしょうか。「塩の街」でも、秋庭と入江という二人の男性が出てくるけど、あれってコンビとは言えないしなぁ。

桜祭りで賑わう米軍横須賀基地を、突然襲った赤い巨大甲殻類。逃げ惑う人々は、文字通り甲殻類たちに、「食われて」しまう。その時、米軍横須賀基地内の海自施設近くに、二人の実習幹部を乗せた潜水艦、『きりしお』がいた。

『きりしお』に出された突然の出航命令。出航不可であれば、そのまま艦を捨てて陸へあがれ、との有り得ない指令。何が何だか分からないまま、乗員は陸へと上がるのだが…。

夏木、冬原の二人の実習幹部は、艦長の死という大きな犠牲を払いながら、桜祭りを見に来ていた子供たちと共に、『きりしお』内に立て篭もることになる。子どもたちの中の唯一の女性、高三の森生望、彼女を異常に敵視する、中三の遠藤圭介、圭介の顔色を伺う他の子どもたち、望の喋らない弟、翔。小一から高三まで十三名の子どもたち。彼らが住む町内の歪みが、そのままこの狭い潜水艦の中でも、拡大される。

秩序を作り、生活することで手一杯の潜水艦の中。大人は、夏木、冬原の二人のみ。料理を作ったこともなく、もちろん子供の世話をしたことなどない。加えて、まだまだ若い彼ら二人は、(仕方のない事情とはいえ)、この子供たちのせいで、艦長を亡くしたばかり。色々な感情を飲み込みながら、二人は潜水艦内での子どもたちとの共同生活を軌道に乗せる。

一方、地上では自衛隊の出動が許されないまま、機動隊を中心とした警察主体の応戦が続く。神奈川県警への応援を開始していた警視庁に加え、警察庁と関東管区警察局からも人員が選出され、神奈川県警による対策本部に合流する。その名も、『横須賀甲殻類襲来事件』現地対策本部。指揮を執るのは、エリートである警察警視庁警備部参事官の烏丸。こちらは叩き上げで、問題児でもある県警本部の警備課、明石警部と二人、コンビを組んで、自衛隊へのリレーを落とし所として奮闘する…。
対応できる武器を所持しつつも、出動命令がないと動くことが出来ない自衛隊、何の装備もないまま戦わなくてはならない警察。どちらも苦しいのです。

ここでも勿論「恋愛」が出てくるわけで、それはぶっきら棒な優しさをもつ夏木とのお話。ふつーは、人当たりが良く、外面の良い冬原の方に懐くんじゃ?と思われつつも、森生・姉が心を寄せるのは、冷たい冬原よりも、熱さをもった夏木なんですねー。五年で三尉から二尉になってるっていうのは、順調な昇進コースと言えるのでしょうか? 思わず自衛隊の階級を調べてしまいましたが、良く分からん…。とりあえず、夏木、冬原の二人は大卒なのね、ってことしか分からず。

これにて、有川さんの自衛隊三部作を無事読み終わりました♪ これって、陸海空がそろっただけではなく、男性陣の名前には春夏秋冬も揃っているんですねー。「クジラの彼」には、「海の底」では多少冷血漢にも描かれる冬原が出て来るのだとか。こちらも読まなくては! しかし、「沈む」ではなく「潜る」。それはいいとして、潜水艦乗りは、タクシーにも乗車拒否される程の悪臭を放つってのは、本当なんですかねー。うーむ、恐ろしいぞ。
CONTENTS
一日目、午前。
一日目、午後。
二日目。
三日目。
四日目。
五日目。
最終日。―そして、

「塩の街」/世界は恋人たちのために

 2008-09-18-22:14
塩の街塩の街
(2007/06)
有川 浩

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これも、桜庭一樹さんの「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」などと同じく(おっと、今amazon検索したら、「砂糖菓子」ってばなーんと、コミックスにもなってるんだ! すっごいですねー)、文庫から単行本になったもの。

私が借りてきたのは、単行本なんだけど、文庫本の表紙を先に見てしまったせいか、読んでいる間中、頭の中で高橋しんさんの「最終兵器彼女」とか「花と奥たん」(現在、スピリッツで単発連載中)の絵柄に変換されてしまいました。「最終兵器彼女」はともかく、「花と奥たん」は壊れた世界で、夕餉をの支度をして懸命に旦那さんを待つ「奥たん」の姿が描かれているからか、どうもこの「塩の街」と重ねてしまうのですよ。
CONTENTS
塩の街
Scene-1. 街中に立ち並び風化していく塩の柱は、もはや何の変哲もないただの景色だ。
Scene-2. それでやり直させてやるって言ったんじゃねえのかよ。
Scene-3. この世に生きる喜び、そして悲しみのことを
インターミッション―幕間
Scene-4. その機会に無心でいられる時期はもう過ぎた。
Scene-5. 変わらない明日が来るなんて、もう世界は約束してくれないのを知っていたのに。
Scene-6. 君たちの恋は君たちを救う。

塩の街、その後
塩の街-debriefing- 旅のはじまり
塩の街-briefing-  世界が変わる前と後
塩の街-debriefing- 浅き夢みし
塩の街-debriefing- 旅の終わり
えー、主たる登場人物である、秋庭は空自の二尉なんだけど、「塩の街」のタイトルの所以でもある、「塩害」は陸地を襲ったわけであるからして、これが自衛隊三部作のうちの「陸」にあたるとのこと。途中からの舞台は、陸自の立川駐屯地だし。

主人公というか、フューチャーする人物を変えながら、話が進んでいくんだけど、ベースに流れているのは、秋庭と真奈の恋。年だって十くらい違う、空自の戦闘機乗りと女子高生という、それぞれの立場だって全く違う。平和な世界であれば、二人に接点などなかったはずなのだが…。

東京湾をはじめとし、世界各地に、ある日突然白い隕石が落ちる。それは巨大な塩の塊であり、ソドムとゴモラのロトの妻ももかくや。隕石の落下後、人々は塩の柱と化す。そんな世界の中、描かれるのは、「こんなことにならなければ気付かなかった」恋、「こんなことにならなければ出会えなかった」恋。

そうして、それなりに安定していた世界を引っ掻き回し、事態の収拾に回った、ほぼマッドサイエンティストな入江が、秋庭と真奈の二人暮らしを襲撃する。

「世界なんか救わないで!秋庭さんが無事でいて!もう旧い世界のほうがよかったなんて、言わないからっ!」

この世界が救われるまでだけではなく、「塩の街、その後」では文字通りその後が描かれ、「塩の街」の世界を補完してくれます。どこまでも健気な真奈に胸キュンするも良し、頼りがいのある秋庭に惚れぼれするも良し、ですかねー。

でも、今回、私が気に入ったのは、作者すら把握出来ないという、喰えない入江。一本気で健気、純粋な人々が多いだけに、このわけの分かんない入江という人物の存在が、ぴりりと利いてんじゃないでしょうか。
塩の街―wish on my precious (電撃文庫)塩の街―wish on my precious (電撃文庫)
(2004/02)
有川 浩

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「塩の街」は、有川さんのデビュー作であり、第10回電撃小説大賞<大賞>受賞作でもあります。有川さんは頑として曲げなかったそうだけれど、真奈を中学生にして、秋葉を二十二、三歳に出来ないかとの打診があったとのこと。この表紙…。ま、まさか、その髪の長いのは秋葉??汗

なんつーか、少女マンガの主人公or相手役などにも、年齢制限があるようにも思いますが、二十代後半や三十路が青春したって、恋したっていいじゃないのさーー!!と思ったり。あの「ガラスの仮面」の速水真澄氏もそろそろ三十路なんだっけ。あちらも、マヤとの年齢差は十一歳なんだよねー。どうでもいいけど、”速水真澄”でググったら、他のキーワードに”速水真澄 嫉妬”、”速水真澄 ラブシーン”が…。ま、真澄さん・・・。

「空の中」/空の秘密

 2008-09-17-23:57
空の中空の中
(2004/10/30)
有川 浩

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高度二万メートルの上空で、有り得るはずのない事故が2件続けざまに起こる。そうして、遺族となった二人の子ども。

子どもたちは子どもたちの事情で、大人たちは大人たちの事情で、それぞれこの事態に立ち向かうことになる。

えー、「阪急電車」があんまり可愛かったので、ほくほくと続けざまに自衛隊三部作を借りてきちゃいました。こちら、「空の中」の舞台はまさに高度二万メートルの上空ってことで、これが陸海空の内の空自モノなんですね。それも、空自に所属するのは、ヒーローならぬヒロイン。女だてらに戦闘機乗り。これは所謂ツンデレってやつですかね?(だって、ナチュラルに貴様とか言っちゃうんだよ)
政府と国内航空機メーカーが共同出資する、「日本航空機設計」による悲願の国産輸送輸送機開発プロジェクト、その一号試験機、スワローテイルの試験飛行中に事故が起こる。更に四国沖で消息を絶ったスワローテイルと同じく、二機編隊による上昇飛行中だった、航空自衛隊のF15J戦闘機(イーグル)の内、一機が爆発事故を起こす。

果たしてこの領域には何があるのか? 「日本航空機設計」の春名高巳は、調査のため、自衛隊の岐阜基地へと向かう。生還した一機に乗っていたのは、武田光稀(みき)三尉。事故について話すことなど何もない。高巳は頑なな光稀から、情報を引き出すことが出来るのか?

光稀の上官であり、事故時に編隊を組んでいた斉木三佐は、自衛隊員の宿命である異動のために、四国・高知に一人息子を残していた。彼、斉木瞬は、父のフライトの際、僅かに聞こえることもあるジェット機の爆音を求めて、海岸に出ることが常であった。その日、瞬が見つけたのは、海岸に打ち寄せられていたクラゲのような生き物…。UMA好きな幼馴染、佳江と共に、瞬はその生き物を持ち帰るのだが…。
光稀と高巳たちの大人たちの世界と、瞬たち、高知の子供の世界が交差します。方言ってやっぱり力があるよなー、と思うんだけど、瞬の幼馴染の佳江の力強さがいいです(瞬はあちこちを転々としていたので、標準語設定なのだ)。腹の据わっている宮じいもいいです。あと、どっちに入れるべきか分からないけど、”ディック”もね。このお話は、”ディック”の魅力によるところも大きいです。

有川さんは色々な痛みを書き分けます。そこがまたぐっと来るんだなぁ。傷つけられた痛み、傷つけた痛み、自分より傷ついている人がいるがために、抑えなければならない痛み、全てを引き受けなければならない痛み…。もう一人の子供、スワローテイルの機長の遺族、真帆はその強さ、二者択一の潔癖さが痛ましいです。

色々あるけど、光稀と高巳のやり取りには、緊迫した場面ではあるけれど、ニヤニヤしてしまいます。どんだけ自分が突っ走っても、後ろでぽんぽんといなしてくれる人がいるっていいよね。光稀ほどぶっ飛んでいかなくとも、この後方支援は乙女の理想?
目次
プロローグ 早春
第1章 子供たちは秘密を拾い、
第2章 大人たちは秘密を探し、
第3章 秘密は高度二万に潜む。
第4章 人々はそれを裏切って、
第5章 子供は戻れぬ道を進み、
第6章 誰も彼もが未来を惑う。
第7章 混沌は不意に訪れるも、
第8章 秩序の戻る兆しはそこ、
第9章 最後に救われるのは誰か。
エピローグ 盛夏

「酔郷譚」/酒に酔い郷に酔え

 2008-09-16-23:21
酔郷譚酔郷譚
(2008/07/16)
倉橋 由美子

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目次
桜花変化
広寒宮の一夜
酔郷探訪
回廊の鬼
黒い雨の夜
春水桃花源
玉中交歓
倉橋由美子さんは2005年に亡くなっているわけですが、これはそんな倉橋さんの「新刊」なのです。とはいえ、この世界はお馴染みのものと言えるのかな。「桂子さんシリーズ」の一つである、慧くんを主人公とした連作集。

桂子さんシリーズの困ったところは、版元を割りと軽々と乗り越えているところ。私が持っているシリーズその他の本は、講談社文庫、中公文庫、新潮文庫とか。で、今回のこの本は、河井出書房新社から出版されています。

慧くんは、「ポポイ」の舞のいとこ。でも、こんな最後の新刊にケチつけるのも何なんですが、どうもいまひとつ酔えなくて~。主人公が男性だからなのかなぁ。桂子さんだったら、するりと入っていけるエロチックなお話が、どうにも入ってこなかったのでした。残念…。

バーテンダーの九鬼さん、慧くんと一緒に暮らすことになる真希さんは、どっかに出てきたんだっけなぁ?? と、思ったら、おっとー、「よもつひらさか往還」は、まさに慧くんと九鬼さんの物語だったのね。うーん、私、これ読んでないのかな。倉橋さんの本は、わっかんないな~と思うのも含めて、大体読んだような気がしていたんだけど…。色々と記憶が怪しいなー。

■関連過去記事■
・「ポポイ」/首を飼う
・「夢の通い路」/異世界との交歓

「阪急電車」/らぶ・関西

 2008-09-15-22:43
阪急電車阪急電車
(2008/01)
有川 浩

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目次
宝塚駅
宝塚南口駅
逆瀬川駅
小林駅
仁川駅
甲東園駅
門戸厄神駅
西宮北口駅

そして、折り返し。
西宮北口駅
門戸厄神駅
甲東園駅
仁川駅
小林駅
逆瀬川駅
宝塚南口駅
宝塚駅

あとがき
電車は何を乗せて走る? 有川さん描く所の、阪急電車は今津線が乗せて走るのは、様々な恋模様や人間模様。そうだよねえ、たくさんの人が乗り降りする電車という乗り物。こんな出会いがあっても、不思議ではないのかも。それはほんの一瞬のすれ違い。それでも、そんな他人のひと押しのおかげで、変わることが出来ることもある。

一読して、私の感想は、楽しいじゃないのはあと、可愛いじゃないのはあと、面白いじゃないのはあと、という全く論理的ではないもの。でも、すっごい楽しかったんだよ~!! 勢いで、有川さんの他の著作もがしがしと借りてきてしまうほどに。

男性が読むとまた良く分かりませんが、有川さんの描く男性がまた素敵でねえ。どこかに残ってた、乙女ゴコロをすっかり刺激されてしまいましたよ。

この連作短編というスタイルもすっごくうまいんだけど、またいいなーと思ったのが、「そして、折り返し。」という後半への繋ぎ。そうそう、電車には往路と復路があるものだもの。あの二人の恋、この人のその後、気になるところもきっちり教えてくれるところもいいなー。

うふふん、しかし、この後、私は有川さんの所謂自衛隊三部作を読んだんですが、ご近所づきあいに苦労するオバさん、非モテだった軍オタ君、情けなくも実はすごいんじゃあ、な年上の彼氏、年の差カップル、などなど、初期から出てきたと思われるキャラクターも出てきてるんですねえ。

「あとがき」もさ、惚気と紙一重のような旦那さんとの会話とか、編集さんとの苦労話とか、内輪全開な感じが、懐かしのコバルト文庫を読んでいるようで楽しかったですよ。

ちなみに往路「甲東園」編のえっちゃんの彼氏のお話。アレンジはしましたが私が以前、正に今津線に乗っていたとき聞こえてきた会話そのままに近いです。恐るべし関西人。腹筋攣るかと思いました。周囲の人たちも笑いをこらえるのに苦しんでいたと思います。    (「あとがき」より引用)

あのオチも完璧な(しかも、何度も重ねてオチがある)、えっちゃんの彼氏の話がほぼ実話だなんてー! 恐るべし関西。でも、らぶはあとですわー。
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つな がる

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「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
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2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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