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「フランス民話 バスク奇聞集」/バスク人の民話

 2008-03-29-22:52
フランス民話 バスク奇聞集フランス民話 バスク奇聞集
(1988/08)
堀田 郷弘

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社会思想社、教養文庫の本であります。教養文庫なんて言われちゃうと、難しそうなやつ?なんて思っちゃうけど、読んでみたらそんなことはありませんでした。それに、巻末の宣伝も「フランスのエスプリを読む」シリーズがあったり、「ひと味違う遊びの本」なるシリーズがあったり(「秘文字」:異色作家の書き下ろし暗号小説を、暗号化して密封した世界で一冊の奇書。解読法を参考に挑戦、など何だか不思議な本が…)。「教養」と銘打ってはいても、どうも肩ひじの張るものではないみたい。

さて、この「バスク奇聞集」は、扉から引くとこんな本。

 峻峰ピレネーの山なみに守られ、はぐくまれた神秘の民バスク人は、地理的条件もあり、いまだにその特異性を保持している。とりわけ民話や伝説は、彼らの常民文化をいきいきと伝えるものである。
 女性的な魅力と妖怪の恐ろしさを合わせもつ妖精ラミナ、超人的な力を持ちながら無垢な子供にだまされる怪物タルタロ、そして熱心なカトリック信仰と土俗民話が結びついた奇跡物語や魔女たちの民話、バスクに親しい生きものが活躍する動物民話等々、本書は日本で初めてのフランス=バスク民話集である。


目次
妖精ラミナ
1 ウチャレア橋に棲むラミナたち
2 ラミナと老婆
3 ラウシュタニアの城
4 ハシュコと二人の仲間
5 サン・ソブールの燭台
6 赤子よ、主とともにあれ!
7 ラミナ奇聞 六編
怪物タルタロ
1 タルタロと赤ひげの親方と利口な若者
2 タルタロの恩返し
3 三人の子供とタルタロ
主イエスとペテロ聖人の奇跡
1 麦打ち
2 布とロバとこん棒
3 呪文トレンテクチロ
4 森のなかの王妃
5 主イエスのバスク奇聞 七編
悪魔と魔女たち
1 王様になった羊飼い
2 王女さまが笑った!
3 すべての垣根を越えて
4 空飛ぶ聖女シャインディア
5 まぼろしのミサ
6 《からっぽの手》のパン焼き女
ことばを話す動物たち
1 蛇と人間の裁判
2 狐と船長
3 狼の災難
4 ツグミと狐と犬
5 狐の狡い才知
6 美女と蛇
7 不精な女とノミ
だます者、だまされる者
1 三人の学生
2 王様と鍋と笛
3 七人の泥棒
4 おろかな息子
この地方、独特の存在であるという妖精ラミナ、怪物タルタロに関する話も面白かったんだけど、一番笑っちゃったのが、「主イエスとペテロ聖人の奇跡」のお話。黄門さまと八兵衛というか、弥次さん喜多さんというか、それとも三蔵法師と孫悟空というか…。ペテロは相当おっちょこちょいの愛すべきうっかり者になってるし、イエス様もしれっとひどい奴だったりして、何だか妙な味を醸し出しています。

「ことばを話す動物たち」で思い出したのは、以前読んだ「きつねのルナール」のこと。あれもまた、中世フランスの動物叙事詩ということだったので、ちょうどかぶっている部分もあるのかも(「蛇と人間の裁判」は、たぶん「ルナール」の方にもあった気が)。

全体を通して、素朴だけれど、どこか愛嬌のあるお話が多く、楽しんで読むことが出来ました。

きつねのルナール (世界傑作童話シリーズ)きつねのルナール (世界傑作童話シリーズ)
(2002/07)
レオポルド ショヴォー、 他

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「孤島の姫君」/今市子さん短編集

 2008-03-27-23:11
02946911.jpg
孤島の姫君 新版 (ソノラマコミック文庫 い 65-2)
(2007/11)
今 市子

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「百鬼夜行抄」の今市子さん。古本屋で短編集を見つける度に、ほくほくと捕獲しています。

これまで読んだ感じだと、今市子さんの作品は、大きくは日本を舞台とした民俗学的なもの、異世界の伝統的な社会を舞台としたものに分けられると思うのです。後、細かく言えば、異世界の伝統的な社会を舞台としていると見せかけて、実はSF的要素が入ったもの、かなぁ。

「百鬼夜行抄」も勿論好きなんだけれど、短編でもね、きちんとその世界観が広がっていて、十分にその世界に遊ぶことが出来るのです。
目次
赤い袖
沈黙
真夜中の食卓
遺影がない
孤島の姫君
【文鳥マンガ】美しき獣たち
この中でいえば、異世界の伝統的な社会を舞台としているのが、「沈黙」と「孤島の姫君」。今市子さんの絵は実に端正なんだけれど、時々ちょっとブラックなところもあって、「遺影がない」なんかは、まさにブラックな笑いを見せてくれる。

「沈黙」は、全く違うという「二つの国」の話。一方は「沈黙の国」と、もう一方は「暗闇の国」と呼ばれ、互いに交わることがなかったのだが…。ある日、「沈黙の国」の「暗闇の門」の中から、二十年前に行方不明となった娘が現れた。娘は森の神の存在を説き、村人たちは森の神に供物を備えるようになるのだが…。そうして、また一人、「暗闇の門」を越えて、今度は森の向こうの街から来たという旅人が現れる。「沈黙の国」と「暗闇の国」。二つの国の謎が明かされる様が実に鮮やか。ハスキーボイスのニザートと、その弟分のサリオがいいなぁ。

表題作、「孤島の姫君」は、竜人族の王女と夢使い、兵士の話。夢使いと言えば、めるへんめーかーさんの「夢狩人」を思い出す。

この短編集で、私にとって特筆すべきは、文鳥マンガ、「美しき獣たち」のこと。私もむかーしセキセイインコを飼っていたので、鳥への愛や、その行動は頷けるところもあり、セキセイインコなどよりは余程凶暴だと思われるその性癖に、目を白黒させたり。しかし、紙を使う漫画家さんには、鳥の糞やら、彼らの嘴は相当凶器になると思うんですが、でも、何をされても可愛いんだろうなぁ。
百鬼夜行抄16 [眠れぬ夜の奇妙な話コミックス] (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス) (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)百鬼夜行抄16 [眠れぬ夜の奇妙な話コミックス] (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス) (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)
(2007/11/07)
今 市子

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「グラン・ヴァカンス 廃園の天使1」/永き、休暇

 2008-03-26-22:24
グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
(2006/09)
飛 浩隆

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そこは、夏の長いヴァカンスに相応しい、美しくクラシカルなリゾート地。南欧の小さな港町をイメージしてデザインされた、この<夏の区界>は、古めかしく不便な街で過ごす夏のヴァカンスを完璧に具現する。

デザインされた…。そう、この地は現実に存在するものではない。会員制の仮想空間<数値海岸(コスタ・デル・ルメロ)>に作られた<夏の区界>には、様々な肉付け、味付けをなされたAIたちが住み、現実社会からやって来るゲストたちをもてなしていた。現実社会からこの仮想空間にやって来るゲストたちは高価な対価を支払って、時に誰かの父として娘の誕生日を祝うロールを、誰かの妹のロールを、それぞれの好みに応じて選び、演じていた。

ところが、この仮想空間に大途絶(グランド・ダウン)と呼ばれる現象が起こる。ゲストたちがこの地を訪れなくなってしまったのだ。大量のリソースを使用するはずのこの<夏の区界>は、それでも何の影響も受けず、これまでと変わらず、千年もの長きにわたって、同じ日々を繰り返していたのだが…。

今日も従姉のジュリーとともに、鳴き砂の海岸で、硝視体(グラス・アイ)を探しに行こうと考えていた、少年ジュールの一日は一変する。<夏の区界>が突然の攻撃を受けたのだ。AIたちは、なすすべもなく、「飢え」を纏った蜘蛛たちに喰い尽くされていく…。

目次
第一章 不在の夏
第二章 斃す女、ふみとどまる男、東の入り江の実務家たち
第三章 鉱泉ホテル
第四章 金盞花、罠の機序、反撃
第五章 四人のランゴーニ、知的な会話、無人の廊下を歩く者
第六章 天使
第七章 手の甲、三面鏡、髪のオブジェクト
第八章 年代記、水硝子、くさび石
第九章 ふたりのお墓について
第十章 微在汀線
 ノート
 文庫版のためのノート
 解説/仲俣暁生
最近のちょっと低調だった読書を吹っ飛ばしてくれた、すっごい本です。

「ノート」より作者である飛さんの言葉を引きますと、

ただ、清新であること、残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。飛にとってSFとはそのような文芸だからである。 

そう、この物語は、いっそ陶酔する程に、美しく、残酷。

読者は読み進むうちに、この<夏の区界>には、不必要なほどに性的な仄めかしがあることに気付くでしょう。これもまた、現実社会からやって来る「ゲスト」のための刺激的な味付け。彼らゲストは、この仮想空間に君臨し、AIたちに残酷な行為を強いていたのだ。

千年の長きにわたるゲストの不在や、いつしかこの区界に辿り着いた硝視体(グラス・アイ)の力によって、正しくチューニングされていたAIたちの性格は少しずつ狂いはじめていく。彼らはもう、ただの<AI>などとは呼べないほどに、実に人間らしく、いじらしい。

さて、<夏の区界>に住むジュールたちAIを攻撃してきたのは、一体誰なのか? 通常だったら、現実社会から?、と言いたいところだけれど、これはもっと複雑で、敵はそうではないのでした。こちら側の事情については、次作「ラギッド・ガール」で描かれているみたいです。

このAIたちの戦いは実にスリリングだし、その彼らAIたちの痛みを、安全なこちら側で読んでいるという、甘やかな背徳感すら感じてしまう。これ、解説が秀逸で、なんだかもう、「そうそう、そうなんだよー!」となって、自分の感想が書けなくなってしまう感じなんだけど、解説の仲俣暁生さんがおっしゃる通り、この本の中のゲストとAIたちの関係は、そのまま物語への侵入者である読者と、この物語の登場人物たちの関係だと言うことが出来るのだ。

滅びの様すら美しい、<夏の区界>。この物語を「記憶」することが出来て、良かったー!

次はこちらだ! ← 読みました(2008.4.2)。
「ラギッド・ガール 廃園の天使Ⅱ」/「グラン・ヴァカンス」前日譚など
ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
(2006/10)
飛 浩隆

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SF

「駅神」/駅の、かみさま

 2008-03-25-22:58
駅神駅神
(2007/09/07)
図子 慧

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駅は様々な人々が集まるところ。そこには、当然、悩みを抱えた人たちもいるわけで…。京成金町線の乗客であるらしい、一人の老人、通称「ヨンバンセン」。商売というわけではない、この謎の老人の占いは実に良く当たるという噂。いつしか評判になっていた、「ヨンバンセン」の占いを求めて、人々がやって来る。
目次
第一話 尋ね人
第二話 遊魂
第三話 八卦仙
第四話 相性
 巻末資料①
 巻末資料②
冒頭に、尻拭いの海外出張を命ぜられた、サラリーマンが出てくるけれど、この彼の出番はこれだけ。主たる登場人物は、大学生の章平と、彼が住む古き良きアパートの大家さんや住人たち、また「ヨンバンセン」の占いに興味を持った、占い修行中である「易学学院」のメンバーたち。

普通の大学生(まぁ、かなりお金に苦労してそうだけれど)に見えた章平は、実は大きな苦悩を抱えていた。議員秘書を勤めていた父が、不正献金問題に絡んで、行方不明となっていたのだ。なんとか「ヨンバンセン」に占って貰うことに成功した章平だけれど、老人の言葉の意味が分からない。駅で知り合った易学学院の紅川らの助けを借りて、易を読み解くのだが…。

章平のこのエピソードは第一話で終わり。その後も、誰かのために、章平は「ヨンバンセン」を探し出して、占いを立ててもらい、言葉足らずの老人の言葉を、易学学院のメンバーたちが読み解くという流れ。

面白くないわけではないけれど、なかなか会えないという「ヨンバンセン」に、章平は随分と出会えていて、また気が向かないと占わないという話なのに、百発百中で占って貰えてるんじゃん、という突っ込みがしたくなる。

章平の父のお話や、章平の住む昔ながらの古き良きアパートのメンバーなどは、いい感じなんだけどなぁ。「占い」というもの。自分もあまり信じてないし、色々な解釈もあるわけで、「占い」だけで全編が繋がっているのが、自分には少々合わなかったな。

結局、最後まで「ヨンバンセン」の正体は分からないままなんだけど、こさささこさんという方による素敵なカバーイラスト(表には、亀や鳥、虎のしっぽ、裏には虎と、この世ならぬものが人間のような格好をして歩いている)のように、実は「ヨンバンセン」はこの世ならぬものだったりして。
現実社会を表、あちらの世界を裏とするならば、背表紙に描かれている「ヨンバンセン」はこの世とあの世を繋ぐ存在なのかしらん。

「千年の時をこえて」/少女期の淡き恋

 2008-03-24-23:28
千年の時をこえて (エンタティーン倶楽部)千年の時をこえて (エンタティーン倶楽部)
(2007/11)
沢村 凛

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なんで、気になったのかは既に忘れてしまったんだけど、「たまにはラノベっぽいのも読んでみよー!」の一環だったと思うのです。表紙もいかにも可愛げだし、頁を開けば「登場人物しょうかい」なる絵つきの人物紹介が載せられている。

もくじ
しきしまの やまとのくには…
われのみや よふねはこぐと…
ひとみなは いまはながしと…
はたものの ふみきもちゆきて…
あめのうみに くものなみたち…
みなとなる あしのうらはは…
 あとがき
小学校高学年になってから、「しーちゃん」こと静枝の周りの友達は「誰誰くんが好き」とかしましい。でも、静枝には「好き」ってどういうことなのか、良く分からない。親友の美和と健太のことは大好きだけれど、それは彼らが彼らであるからだけで…。

ある日、むしゃくしゃした気持ちを抱えた静枝は、近所の神社で、平安時代から来た不思議な男の子、マコマ(眞駒)に出会う。マコマの姿は、静枝にしか見えないようなのだけれど…。

この神社は和歌を祀っているのだという。神主さんに和歌を教えてもらい、「千年の時をこえて」静枝とマコマは友情を結ぶ。しかし、マコマは多分、千年の昔から、一人でどこかの次元に閉じ込められてしまった男の子。マコマのことを考えれば、彼をどこかに送ってあげなくてはならないのだが…。

ここに書かれている和歌だって、実は解説なくては良く分からない体たらくなのだけれど、これは大人の読書に耐えるか、というとちょっと辛いなぁ。主人公の設定も小学校高学年だものね。そういう時期にささっと読んで、(もしかしたら)マコマにときめいちゃったりする、そんな読み方が適しているように思いました。少女期の淡き恋、しかもお相手は異世界の人、というのもある意味、定番ではありますよね。

ブログ引っ越し

 2008-03-23-19:20
ブログを始めたのは、約三年前。

たまたま知ってたアメーバブログで本の感想や日常の事などを書き始め、始めた頃には思いもしなかったほどに、お友達も出来ました。
(ここで書いてました → http://ameblo.jp/tsuna11/)

度重なるリニューアルにも何とか耐えてきたのだけれど、「記事を書く」というシンプルな行為が、最初から比べて、すごくやり難くなってしまいました。

読書「記録」であるからして、アメーバでそのまま続けていくことは断念、こちらにお引っ越ししてきました。

はじめましての方も、そうでない方も、これからもどうぞよろしくお願いします。
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「ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件」/独房の探偵

 2008-03-23-18:28
ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件
(2000/09)
ホルヘ・ルイス ボルヘス、アドルフォ ビオイ=カサーレス 他

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ラテンアメリカ怪談集」を読んで、ラテンアメリカ文学にも心惹かれておりました。

で、ラテンアメリカと言えば、ホルヘ・ルイス・ボルヘス(なんか、名前も回文みたいでいいよね)?と思って、くだんの「ラテンアメリカ怪談集」の中の「円環の廃墟」が良く分らなかったくせに、ボルヘスにいってみました。

とはいえ、これはアドルフォ・ビオイ=カサーレスという、これまたアルゼンチンの作家との共作であり、更に探偵小説なんですね。なので、普通に「ボルヘス!」というにはちょっと語弊があるだろうし、私の腰の引け具合もちょっと分かるかも…。ちなみに、刊行当初、二人の合作者としてのペンネーム、<H・ブストス=ドメック>名で発表されたそうです。

目次
H・ブストス=ドメック
序言

世界を支える十二宮
  Las doce figuras del mundo
ゴリアドキンの夜
  Las noches de Goliadkin
雄牛の王
  El dios de los toros
サンジャコモの計画
  Las previsiones de Sangiácomo
タデオ・リマルドの犠牲
   La Víctima de Tadeo Limardo
タイ・アンの長期にわたる探索
  La prolongada busca de Tai An

訳者解説

探偵役は、身に覚えのない殺人の罪で、二十一年の懲役刑を受け、獄中生活を続けている、元理髪店店主のイシドロ・パロディ。マテ茶をたて、静かに独房の中で暮らしている彼の元には、最初の事件、「世界を支える十二宮」の時にやって来た、おっちょこちょいの新聞記者、アキレス・モリナリを皮切りに、厄介な事件を抱えた人々が引きもきらない。

依頼人たちは、いずれも大仰な物言いが特徴と言えるでしょう。時には話題は詩や文学まで広がっていく。たいていは、殺人事件について助けを求めに来ているはずなのに! 自分のことを重要人物であると信じ切っている人々の演説(だって、ほとんどご立派な演説なのだ)を、じっと見、聞いているのが、イシドロ・パロディ。そうして、彼は依頼人たちの膨大な言葉の中から、独房に坐したままで、手品のように真実をより出して見せるのだ。

依頼人の出番は一回こっきりというわけではなく、新聞記者モリナリの口コミが次の依頼人を呼び寄せたり、「ゴリアドキンの夜」で登場し、”気取ったところはあるが、そそっかしくて人のいい愛すべき舞台俳優”と紹介されるヘルバシオ・モンテネグロに至っては、”皇女と結婚し、趣味としての犯罪捜査に明け暮れ”たり、”アメリカ大陸友好団体の地方局長”を経て”私立探偵”になってしまっています。どいつもこいつも、イシドロ・パロディの推理を自分の手柄にしてしまうのはなぜなんだ! 冤罪なんだから、刑務所から出してあげてよ~。

多くの訳注があるにも関わらず、詩や文学、作家については、面白さを与えようという効果が、私には消化し切れなかったなー。アルゼンチンの多様さ、混沌については、なんとなーく雰囲気が理解出来たようにも思うけど。

「世界を支える十二宮」に出てきた、イスラム教、ドゥルーズ派について、Wikipediaにリンク

ラテンアメリカ文学と言えば、こちらも読みたい!
七悪魔の旅七悪魔の旅
(2005/07/26)
ムヒカ・ライネス

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「爆心」/信ずる人々

 2008-03-18-22:22
爆心爆心
(2006/11)
青来 有一

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目次







目次がちょっと変わった作り。
釘を頂点として、時計回りに、石、虫、蜜、貝、鳥と六作品が円形に並べられている。

主人公となる人物の年齢も性別もバラバラだけれど、共通しているのは、長崎を舞台としていること。長崎と言えば、被爆地であるとともに、キリスト教とも縁の深い土地でもある。多くの殉教者を生みながらも、先祖代代、愚直なまでに神を信じてきた、彼らに与えられた運命とは? のみはちょっと違うけれど、苦しみがまだ足りないとばかりに、なぜ彼等に苛酷な運命が襲うのか。

描かれていることは、結構辛いことが多いのだけれど、穏やかな人々が操る方言のせいか、どこかやさしくもある。どんな辛い出来事が人々を襲おうとも、そこで人生が分断されるわけではなく(分断されるに等しい出来事もあるけれど)、それでも彼らの生活は続いていくし、一歩一歩、家族や支えてくれる人々と共に、生きていくしかないのだよなぁ。

「桜庭一樹読書日記」/読めよ、生きよ!

 2008-03-16-21:41
桜庭一樹読書日記―少年になり、本を買うのだ。桜庭一樹読書日記―少年になり、本を買うのだ。
(2007/08)
桜庭 一樹

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現在も、東京創元社のこちら で連載されている、Webの読書日記の2006年2月~2007年1月分の書籍化です。

この本のいいところは、本文は上段にあるんだけど、下段に書影と、桜庭さんご自身や、編集のK島氏による簡単な本の紹介が載せられているところ! 何せこの「読書日記」には本がざばざばと贅沢に出てくるので、本の洪水に溺れないためにも、この構成は実にいいねえ。

桜庭さんにとっては、呼吸すること=本を読むことなんじゃないかというくらいに、とにかく、日々、本を読んでおられる。面白い本を読んでは、面白いっ!と叫ぶこの感性、この密度の読書の中で保っておられるのが凄いよなぁ。

桜庭さんが本を読んでないのは、直木賞受賞作でもある「私の男」を書くために音楽漬けになっている時くらい。意識的に本を読まず、自分を追い詰めているこの時期には、桜庭さんはどんどん痩せていってしまうのです(ま、これは「読んでない」せいだけではないとは思うけど)。

以下、本読みとしての心意気に、こちらも感動だった箇所。そうだよねえ、「やさしい」本ばっかり読んでると、自分がどんどん偏っていく気がするのだ。

わたしは普段、本や映画を選ぶときに、人が薦めるものをなるべく入れるようにしている。自分の選択だけだとどうしてもかたよって、その場所がせばまっていってしまう。せばまり続けるとちいさくなって完結して、そうなったら、死ぬ。(二〇〇六年八月のp144より引用)


帰宅して、なにを読もうかなぁと積み本を眺めていたら、なにか急に、怖くなる。東京に戻ってきたので新刊がいくらでも手に入るのだが、いや、自分の本も出たときは新刊なのだが、新たに出る注目の本ばかり追いかけると、まるで流行りのJ-POPを消費する若者のような心持ちで読んでしまう気がして、手が止まる。
 こういうことを繰り返したら、作家も読書も聞き分けがよくに通った、のっぺりした顔になってしまうんじゃないか。みんなで、笑顔でうなずきあいながら、ゆっくりと滅びてしまうんじゃないか。駄目だッ。散らばれッ!もっと孤独になれッ!頑固で狭心で偏屈な横顔を保て!それこそが本を読む人の顔面というものではないか?
(中略)
みんな、足並みなんか、そろえちゃ、だーめーだー……。古い本を!古い本を!むかしの小説を!読まないと死ぬゾ。
二〇〇六年十一月のp211-212より引用)

死ぬ死ぬ出てきちゃいますが(笑)、この切迫感も桜庭さん独特なのかなぁ。ご自身の小説は、私は「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」しか読んだことがないんだけど(そして、あまりの救いのなさに大ダメージを受けた)、桜庭さんの尖りや切迫感が少し理解出来たように思いました。
そして、本読みとしての目は実に確か! 自分が読んだ本については、うんうんとうなずきながら読んじゃうし、凄い本を凄いスピードで読んでるところには驚愕してしまうなぁ。普通、こんな濃い密度で読めないよ~。凄い本を探すのに、この本はオススメです。

■とりあえず、ざっくり気になったところのメモ■
愛についてのデッサン―佐古啓介の旅 (大人の本棚)
キャロル・オコンネル
淑やかな悪夢―英米女流怪談集

目次
二〇〇六年二月 読書にまつわるすごいこと(たぶん)を発見する。
二〇〇六年三月 町中に”なぞの女”がいる、気がする。
二〇〇六年四月 ジョン・ランプリエールが辞書になる!
二〇〇六年五月 夏木マリと、カー談義する。
二〇〇六年六月 直毛なのに、アフロである。
二〇〇六年七月 バナナの皮で、世界が滅亡する。
二〇〇六年八月 傑作の前を、歌って通りすぎている。
二〇〇六年九月 百匹の蠅が死に、百人の老人がやってくる。夏が、終わったのだ!
二〇〇六年十月 片手に二十世紀梨、片手に豆腐竹輪の夜である。
二〇〇六年十一月 「ビバビバ都会!野戦病院!」である。
二〇〇六年十二月 少年になり、花を買うのだ。
二〇〇七年一月 書店はタイムマッシーンである。
あとがき

「世界の道 アメリカ・ヨーロッパ」/道から見える世界

 2008-03-12-23:39
社団法人・日本道路協会、サンケイ新聞国際編集室編
世界の道―アメリカ・ヨーロッパ (1982年)
サンケイ出版

1982年に出版された本書。サンケイ新聞国際編集室と日本道路協会との共著ということなんだけれど、サンケイ新聞国際編集室長の巻頭の言葉によれば、この本はこんな意図で編まれたものらしい。

 
道には長い歴史が刻み込まれていて、アメリカの高速道路網も、西部開拓時代に切り開かれた駅馬車の道がその原型である。ヨーロッパには、紀元前のシーザーの戦いのあとがそのまま道になっているところも多い。日本も同様で、国道一号線はかつての東海道である。同じようなルーツとルートをたどって現代の道が出来上がったのに、なぜに東西の道に開きが出来てしまったのだろうか?

 日本には車輪の文化がなく、狭い土地に山と川があり、道が作りにくかったこと、また狩猟と農耕という民族性の違いも考えられる。けれど、「くるま社会」を迎えた今、過去の歴史によらず、日本においても車の走る事が出来る道路を作らなければならない。ここにアメリカ、ヨーロッパの道を示すことで、日本の道路との違いをくみ取り、日本のこれからの道づくりに役立ててほしい…。


と、まぁ、こんな意図で編まれたらしいのだけれど、それから既に二十年以上の時が過ぎていて、日本の道路も、アメリカ、ヨーロッパの道路も、この本が編まれたときとは、変わってしまっているはずではある。それでも、「車が走る」という目的は同じなのに、国によって違う顔を見せる道路が面白い。アメリカ、ヨーロッパだけと言わず、他の国も見てみたいなぁ。

アメリカのひたすら何もない道、東に向かって広がっていくというアメリカの町(出勤は西に向かい、家路への夕方は東へ車を走らせることが出来るから、いつも太陽を背にして眩しくない)、広い駐車場のある鉄道駅(パーク&ライド。空港ではこれが、パーク&フライトとなる)、廃道と化しても撤去されないままのハイウェーの残骸…。

ローマの石畳の道、車が入れない路地、二千年前に作られ、完全に原形を残し、一部が道路として使用されている、南フランスの水道橋、山の上に張り巡らされたスイスの道路(国民皆兵のスイスでは、山合いの地方道であってすら、戦車や装甲車の走行に耐えるよう頑丈に作られている)…。

車が走る道路だけでなく、自転車道、遊歩道、鉄道についても少し。その他にも、ドライブインや、料金所、防音壁、建設と補修などについても、各国の写真が載せられています。

どんな道を作るべきか、今参考にするとしたら、どこの国なのかなぁ。ひたすら道を追うだけでも、色々な貌が見えて面白かったです。

目次
まえがき
アメリカ編
ヨーロッパ編
 イタリア
 フランス
 西ドイツ
 オランダ 
 ベルギー
 イギリス
 スイス
アメリカに学ぶ 今野源八郎
ヨーロッパの道路 武田文夫
         坂手道明
あとがき

プロフィール

つな がる

Author:つな がる
つなです。
「日常」logとも称していますが、そう多くはない手持ちの本、興味が赴くままに借りてきた図書館本の感想が主になります。
興味を持った記事があったり、あなたが読み終えた本について語っていたら、是非あなたの感想を教えて下さい。お待ちしています。

2008年3月23日に、fc2ブログに引っ越してきました。それ以前のamebaブログでの更新も、引っ越しツールによって移行しています(以前の記事は、表示が少々見辛いかもしれません。ご容赦を)。

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